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1980年代とは異なってイスラエルの国際法違反に沈黙するヨーロッパ諸国 ―同様な道を歩む日本

 イスラエルのガザ・レバノン攻撃、またイスラエルに武器・弾薬を供給する米国に、G7のヨーロッパ諸国、日本は静かで、批判の声を上げない。それがイスラエルの人道に反する戦争行為を増長させているように見える。石破政権はまだ始まったばかりだが、岸田政権時代に、岸田首相も上川外相も市民を大量に殺りくを行うイスラエルに対して厳しい批判の声を上げることなどなかった。

 イギリスのサッチャー首相(在任1979~1990年)は、イギリスのユダヤ人に対する共感やソ連のユダヤ人に対する支持を表明したものの、中東の不安定が、ソ連をはじめとする共産主義の影響がこの地域に及ぶ原因になることを懸念した。そのため、彼女はパレスチナ問題の進展を目指し、イスラエルによる占領の終結とパレスチナ自治政府の樹立、また和平交渉でPLOが代表することを求めた1980年のヴェニス宣言を他のヨーロッパ8カ国とともに発表した。

アマゾンより


 ヴェニス宣言は、パレスチナ問題の公正な解決を訴え、パレスチナの民族自決権が全面的に行使されること、またエルサレムに関する一方的な変更を認めず、聖地へのアクセスを妨害してはならないこと、さらにイスラエルの占領の終結、イスラエルが築く入植地が国際法違反であり、和平の障害になっていることを主張した。

https://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/bluebook/1981/s56-shiryou-504.htm

 
 ソ連軍がイスラム国アフガニスタンに侵攻する中で、親西側のスタンスをとるアラブ諸国の支持を得るためにもヴェニス宣言は必要だった。しかし、このヴェニス宣言はイスラエルのタカ派のベギン政権によって直ちに拒絶された。サッチャー首相には、イギリスの委任統治時代にイギリス当局にテロを行っていたベギン首相(当時)に強い嫌悪感があった。サッチャーは、ヨルダンと連邦を組むパレスチナの民族自決権を考えていた。1988年のジュネーブ演説でヤーセル・アラファトがイスラエル国家の存在を認め、暴力的手段の放棄を宣言すると、サッチャーは米国のレーガン政権にPLOとの対話を促した。サッチャー政権のイギリスは、アラブ諸国に武器を移転する一方で、イスラエルへの武器輸出を制限し、またイスラエルへの北海油田石油の売却を拒んだ。

 現在のイギリスはイスラエルに武器移転を行い、昨年10月7日にハマスの奇襲攻撃があると、スナーク首相はイスラエルへの支持を直ちに表明した。イギリスの政治家たちはイスラエルを批判することで「反セム主義」と非難されることに極端に憶病になっている。労働党のスターマー首相のイスラエル支持の立場はよく知られ、ガザ停戦は正しいとは思わないとも語ったことがある。

 イギリスがサッチャー政権時代であった1980年代、日本もパレスチナ問題については公平な立場を明らかにしていた。1980年10月31日に伊東正義外相は、「安全保障及び沖縄・北方問題に関する特別委員会」で「米国を訪問した際に中東和平の基本はパレスチナ問題であり、それはパレスチナ人の国家までつくる権利も認め、そしてイスラエルがPLO(パレスチナ解放機構)も認めることだと主張しました。」と語っている。http://kokkai.ndl.go.jp/SENTAKU/sangiin/093/1745/09310311745003c.html

 

アラファト議長、初来日 1981年10月 木村俊夫議員、山口淑子議員とアラファト議長 昔の日本の議員には気骨があった https://0a2b3c.sakura.ne.jp/plo-t24.pdf


 山口淑子氏は、宇都宮徳馬氏や木村俊夫氏などリベラルな保守政治家たちとともに、日本パレスチナ友好議員連盟の設立に尽力し、1981年10月、連盟の主催で、PLOのアラファト議長の訪日を実現させたことはアラファトをテロリストとしていた米国の手前、画期的なことだった。日米同盟の観点からイスラエルに接近するのが最善と考える、現在の岸田前首相や上川前外相とは異なる姿勢や気骨が日本パレスチナ友好議員連盟の議員たちにはあった。

アラファト議長、初来日 乾杯の音頭をとる宇都宮徳馬氏 こういう迫力ある目つきをした議員がいま少なくなった https://0a2b3c.sakura.ne.jp/plo-t24.pdf



 サッチャーは、ソ連の影響力が中東に浸透することを懸念して中東和平の公正な進展を望んだが、公平なパレスチナ問題の進展に消極的な現在のヨーロッパや日本の政治家たちは、イスラエルのレバノンなどに対する侵略行為を止めなければ、中東諸国はロシアや中国を接近していくことに気づいていないようだ。また、欧米や日本のイスラエルとロシアに対する二重基準はグローバルサウスの離反を招くことになり、すでにG7の二重基準、偽善をグローバルサウスの国々は批判するようになった。特にラテンアメリカには、ブラジルをはじめイスラエルの人道に反するジェノサイドを強く批判する国が多い。ラテンアメリカには米国やイスラエルの武器製造業者が必要とする稀少資源も少なからずあり、資源をテコに米国やイスラエルに圧力をかけることも可能で、グローバルサウスの動静がイスラエルと米国の「暴走」に歯止めをかけることになればと思う。

表紙の画像は下よりhttps://www.youtube.com/watch?app=desktop&v=VnH0INGVs-g  より



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