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【連載】レコードがある生活を始めてみる①

4月になりました。本当であれば咲き誇る桜の下、盛大にサッポロビールと日本酒でも飲みたいところですが、世はコロナウイルス蔓延の危機。今日、東京にも緊急事態宣言が発表されました。僕の職場も、いっとき感染拡大を防ぐために、臨時休業となりました。

テレワークが推奨されるこの状況で、もちろん飲食店勤務の僕はそれなりに自宅で仕事もするわけですが、必然的に自宅で過ごす時間が増えてしまいます。さて、どうやって時間を使っていこうか。ひとまずニンテンドースイッチが家にあった我が家は、ニンテンドーアカウントの登録を済ませ、テレワークが同じく推奨されてしまったバディ(=同居人)と二人で過去のスーパーファミコンのソフトを延々とテレビと向き合って取り組みました。「星のカービィ スーパーデラックス」は本当に名作でしたよね。

そんな我々にある悲劇が襲いかかりました。収納スペースを整理していたバディが、ゴルフバッグやギターを整理していた時に、ちょいとテレビ台の上に設置された43インチのテレビに触れてしまったのです。テレビは見事に画面から前のめりに倒れていきました。その先にあったのはガラス張りのテーブル。43インチのテレビは、見事にその画面をテーブルの角にぶつけ、液晶を割る事態と相成りました。

「ウワァーー、アッ…ウワアアアーーーー、うわぁ…」あの夕方、この部屋に響いた悲鳴は、春の息吹を告げる(おそらく)代々木公園や新宿御苑で鳴いているウグイスも顔負けのものだったと思います。完全に崩壊して、赤・緑・黄色。様々な縦線を表示する不思議な機械へと先程まで「テレビ」であった機械は変貌を遂げていました。何を思ったのか知りませんが、バディはその「テレビ」であった機械にアンテナ線を接続し、電源を繋ぎ、スイッチをONにしたところ、ちょうど「ちびまる子ちゃん」のオープニングが放送されました。もとい、それは「放送」と呼べる代物ではありませんでした。グチャグチャの画面に「ちびまる子ちゃんのオープニング」っぽい配色が表示され、なんとか生き残った液晶下部に寂しげに「ピーヒャラピーヒャラ」と表示されていたのです。

私達は忘れないでしょう。完全な絶望感の中、ピーヒャラピーヒャラと言われた、あの瞬間の曜日と時刻を。日曜日の18:02。事件は起こった訳です。

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完全な絶望感の中に鳴り響く、「ピーヒャラピーヒャラ、オヘソがチラリ。」ピーヒャラ言ってられない状況でしたが、それでも残酷にテレビはピーヒャラと歌い続けます。挙句の果てにはタッタタラリラと合いの手まで入れてくる始末。フジテレビはとても残酷です。

我々はすぐに携帯電話及びパソコンを開き、次のテレビをメルカリにて探しました。18,000以下で、今あるテレビ台に合った、40インチ〜43インチのテレビを、少しでも早く。

ある程度目処が立ったあたりで、ふとバディは僕に問いかけました。「テレビってそんなに見てた?」と。僕は思考を巡らせます。失われた物を取り戻すために。Amazon firestickが接続されていた43インチのテレビで、僕が最も使用していたものを良く思い返してみます。答えは簡単でした。

spotifyアプリを起動して、音楽を再生する。

映画は見ても月に1本。Youtubeのライブ映像を主に垂れ流す。たまにAbemaTVでコロナウイルス関連のニュースをチェック。それくらいでした。そもそもアンテナ線に基本的には接続していないテレビだったので、テレビ番組の視聴はほぼ皆無でした。(アンテナ線が床を這うのが邪魔くさいという理由だけ)

つまり、僕は結局あまりテレビを観ていなかったわけです。

そんなに観ていないテレビを、焦って買う必要性があるのか、元々、宮崎市で一人暮らししていたときも結局テレビは観ないからベランダで雨ざらしにしていたじゃないか。そう思ったとき、我々の生活にテレビは要らない、という結論に至りました。

そして何を変わりに手に入れたか。レコードプレーヤーです。

相場はよく分かりませんが、僕なりの男子大学生の理想像は「パスタを上手に作れる(特にシンプルなペペロンチーノ)」、「カレーにこだわりがある(各種スパイスが台所にある)」そして「レコードで音楽を聴く」でした。だいぶ偏っているかもしれません、ただ、僕の場合はそうだったし、そういう男になりたかったのです。

前者2つに関しては、大学生時代には実現できなかったこともありましたが、最近は解決していました。ペペロンチーノを美味しく作るためには、オリーブオイルとニンニク、それから塩に関しては投資を惜しまないことです。上質なオリーブオイルと国産の有機栽培のニンニク(大体は青森県産)、すばらしい塩(いろいろ試しましたがヒマラヤの岩塩がバランスが取れる)といった具合だし、カレーの件に関してはカレー屋さんで3年間働いていましたので、美味しいカレーは作ることができます。玉ねぎと人参は具材とソースにハーフ/ハーフで分けて使う、これが肝になります。

しかしながら、第3のレコードの件に関しては結局卒業まで手を付けることができませんでした。なによりもその不便性。spotifyだったら好き勝手聞ける。iPhoneとBluetoothスピーカーがあればいいやん。そうやって過ごしてきました。

それでもテレビを失った僕たちは、何かに取り憑かれたかのようにその場で即座にレコードプレーヤーを購入し、その後間髪入れずにレコードをインターネットで探す旅に出ることになりました。

テレビを失った空間に、新しい風を吹き起こす事ができるのは、Spotifyでも、Apple Musicでも、Amazon Musicでもなく、レコードである。

がらんとテレビを失った空間で僕たちが行き着いた結論は、なにがどうなってそうなったのか分かりませんけれども、「レコード」という答えでした。結果、我々は共同出資でレコードプレーヤーを購入することになりました。

製品情報:Archive LP:ION AUDIOionaudio.jp

ここから、僕たちのレコード生活は始まることとなります。さようなら、TV、ハロー、レコードプレーヤー。

【明日へ続く】

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