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宮田大樹
2024年6月30日 22:23
「会議を開きます!」 ある日の夕食のあと。高らかに宣言した彼を、私はダルそうに見つめる。目で「また始まった」という感想を伝えようとするが、嬉しそうにノートパソコンを立ち上げている。 食器を洗い終え、軽く拭いただけのまだ濡れた手のまま操作を始める。感電したら懲りるのだろうか。「なにしてるの?」「議事録、会議だから」「あ?」 思わず、声を荒げてしまった。「言った言わないにな
2023年12月11日 13:05
―チリンチリン。 入口のドアが開く。「いらっしゃいませ。」 私はコーヒーを淹れる手を止め、来訪者へ笑顔で声をかける。「お好きな席へどうぞ。」 入ってきた男は一目散に窓際の席へと足を運び、腰をおろした。 時刻は午後3時。雨天のくせに忙しかったランチタイムを終え、店は閑散として、広い席はたくさん空いているのに、わざわざこの店で一番狭い、窓向き横並びの二人席を選んだ。待ち合わせ、
2023年5月21日 23:45
「飛べるよ、君にも」その日、彼女は屋上から飛んだ。文字通り、“飛んだ”のだ。 長い金髪に不健康そうなメイク、マキシ丈まであるロングスカートのセーラー服、昭和のヤンキーを思わせるその姿は、公立の進学校では目立つ存在で、一度も話したことのない僕でも知っている。 しかし、だ。 彼女は決して、不良なわけではない。 レイラ・フィリップス。それが彼女の名前である。 その金髪も、父親