シェア
宮田大樹
2022年7月17日 21:29
―恋はするものじゃなくて、落ちるものだ―という書き出しで始まる恋愛小説を読んだことがある。とすれば、私は今、恋に落ちているのだろうか。 彼は、私が働くコーヒーショップの常連客だった。平日の昼間にラフな服装でやってきて、季節に関係なく、ホットのコーヒーを注文する。そして、テーブルにパソコンを広げ、1~2時間ほど画面に向かい、一仕事終えると、席を立ち、コーヒーをお代わりしに、カウンターへやってくる
これは、ある灯台守の男とその娘の話である。 ある岬には古い灯台があった。 その昔、灯台といえば、海を渡るものたち、漁を生業とするものたちの“みちしるべ”として、なくてはならない存在であった。 だがそれも過去のこと。衛星通信による位置測定の技術が発達し、また、それ自体の老朽化も進み、役目を終えるものがひとつ増え、ふたつ増え、もはや風前の灯、この灯台を残すのみとなっていた。 男の一家