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『劇場版 おうちでキャノンボール2020』舞台挨拶レポ@シネマスコーレ

公開中の『劇場版 おうちでキャノンボール 2020』。シネマスコーレへの来館は約2年ぶりとなるカンパニー松尾監督の舞台挨拶レポをお届けします。

2020年春、緊急事態宣言下で撮影された「キャノンボール」シリーズの最新作。これまでとはルールも意識も大きく変化したナンパレース・ドキュメンタリーです。
(2022/06/25・聞き手:坪井篤史副支配人)

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― シネマスコーレにはお久しぶりですね。配信の舞台挨拶ではバクシーシ山下さんと一緒に出てもらったことがありましたが。

松尾:あ、そうでしたね。岩淵(弘樹)さんの『らいか ろりん すとん』の時ですね。山下さんがWi-Fiの問題なのか、途中からノートPCを持って家の近所を彷徨ってましたよね。あの時からWi-Fiが弱いという。

ー それが去年の冬で、それ以来ですね。

今回は2020年5月の東京が舞台です。緊急事態宣言が出て、街には人がいなくて、AVの仕事もストップしました。僕も「どうしようかな、まあでも休めてラッキーかな」と思っていたら、この状況の中で映画を撮りませんかという企画書が届いたんです。それを見て僕の中で急にスイッチが入りました。キャノンボールのシステムを使えばできるかも。この状況で何をどう撮るかという話ですが、真正面から撮るのはAV監督カンパニー松尾としては無い。自分なりに撮るならキャノンボールシステムを使おうと。本来、2020年はオリンピックの年でした。『テレクラキャノンボール2013』の後、オリンピックを舞台に撮りたいと公言してましたが、結局オリンピックも流れて。

― じゃあ本当に直前に考えた企画なんですね。結果的にこういうものが撮れたのは、驚きでしたか?

うーん、ちょっと幼稚だなと我ながら思ったけど、でもあの時コロナの影響は誰にも等しく振りかかっていて、誰もが見えない檻に覆われたような感じだったと思うんです。現象だけじゃなく気持ち的にも押さえつけられた感じでした。その中でたまたま2日間、最低限のルールを守ってやったことが「あ、どうにかなった。面白い会議だった」と感じたんです。その感触は、平常時ならもう少し評価は低いかもしれない。でもあの時は「いけるかもしれない」と思いました。
ただ、すぐに公開はしませんでした。状況が少しだけ落ち着いてきて、光が見えてから公開しないと悪い意味での「やってやった感」が出てしまう。「俺たち、緊急事態宣言の中でこんな無茶したぜ、イェーイ!」みたいな。それは無いんです。あくまで最低限のルールを守った上で、インターネットとかいろんなものを使いながら、動いている世界をそのまま撮りたいというだけ。手ごたえはありました。

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ー 今回のやり方は誰もが新しい挑戦だったと思いますが、そういう中で違うキャラクターが見えてきますね。特にバクシーシ山下さん(笑)。

そうですね。山下さんは、実は一番コロナを恐れてたんです。これをやっていた間は本当に誰とも会ってませんが、機材の受け渡しでどうしても一度だけ会う必要があり、それも行きたくないと言ったのは山下さんだけでした。「電車に乗りたくない、人に会いたくない」と言って、本当に恐れてた。

ー 初参加した黒田さんも素敵でした。

黒田さんはもともと監督業もやっている男優で、数年前からうちも関わりながら男優作品をやってたりして、もし2020年にキャノンボールをやるなら黒田かなというのは少し考えてたんです。なので今回は迷わず来てもらいました。昔から変な人ウオッチャーで地頭も良いんです。一生懸命なんだよね。

― 嵐山みちるさんは撮り方も含めて上手いですよね。

嵐山みちるは忙しいAV監督で、『テレキャノ2013』以降、AV監督としてレベルの高い仕事をずっとやってきてます。僕と梁井さんは自分勝手なハメ撮り監督なんで、同じAV業界にいながら我々とみちるの仕事のしかたは全然違う。彼の仕事は評価も高いんです。撮り方もプレゼンも上手いですね。『テレキャノ2013』以降の7年間で完全に大人になってる。松尾は何をしてたのか(笑)。俺は楽天的だから自分がどうのというより、監督として皆が頑張ってくれたので助けられたなって総合的には思います。

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ー また次回キャノンボールはやりますか?

そうですね、202X年。次はフルでやりたいですが、今度AV新法というものができたんです。やりますと言ってくれてから1ヵ月後にしか撮影できないので、逆にいうとその間をどう過ごすか。スピード感はゼロになりますね。キャノンボール感はゼロ。

ー 違う形になって、まだ分からないってところでしょうか。

ええ、基本的にはできないですね。AV新法はここ1ヵ月での急な話だったので、うーん、AVじゃなきゃいいのかもしれないけど、AVじゃないキャノンボールはさんざんやったしね。まあ僕が現役でいる以上、何かしらAVというフィールドの中で面白いことはやっていきたいんでまた見てやってください。よろしくお願いします!

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*****

未知のウイルス蔓延により最初の緊急事態宣言が発令された2020年春。
あの時、どんなふうに日々を過ごしてましたか? 確かに全く先が見えず、誰もが不安を抱えていた時期でした。
私自身のことを思い返すと、宣言の直前、noteに書いた「ミニシアター、今どうなってますか?」というシネマスコーレのインタビュー記事が拡散され、いろんな方から反応をいただいたことがありました。松尾監督からもメッセージが届き、そこには記事の感想と共に「自分も生き延びて、自分にできることをしたい」というようなことが書かれてました。この映画はそんな答えのうちの一つなのかもしれないなと思います。

舞台挨拶では、AVの新しい法律の話題が出ました。業界の方にとっては相当な危機的内容を含む制度のようで、松尾監督も今後はキャノンボールなんて無理だと発言されてました。
勝手な思いですが、これまでのいろんな規制や不自由や不安を逆手に取ったり、全く別の角度から捉えたり、あるいは眼中にもなかったりする松尾監督のことなので、たとえどんなことが起きても思いもつかない面白い世界をきっと見せてもらえるに違いないと確信しています。
そしてそう思うのは、私だけではないはずだとも思っています。

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劇場版 おうちでキャノンボール 2020 上映情報
シネマスコーレにて公開中
6/25-7/1 19:35-21:25
7/2 19:00-20:50 *カンパニー松尾監督舞台挨拶あり
7/3 20:25-22:15
7/4-7/8 20:00-21:50
沖縄・広島・仙台・新潟 他順次

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miyabi yamaguchi
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