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営業目標達成率を高める、Salesforce開発の舞台裏

この記事はBizOpsアドカレ 9日目の記事です。 前回は株式会社SmartHRのnakamuさんによる「社内AI推進初期に直面するリアルな課題と学びを、挑戦中のBizOps視点で共有します!」でした。

こんにちは!みやの / 宮野 功晟 です。
音声認識技術をベースにしたAI議事録「Rimo Voice」を展開するRimoでプロダクトマネージャーをしています。

これまで数十社の大企業のDX推進プロジェクトに関わらせていただく中で培った知見を、自社での「Salesforce」を軸とした内製ツール開発・営業生産性の向上にも活かしてきました。
今回は、その中で得られたBizOps関連の学びを共有したいと思います。

試しに「Salesforce BizOps」などのキーワードで調べてみると、Salesforceと親和性の高い、有料のAppexchangeアプリやSaaSツールの活用方法が多く紹介されています。それらはもちろん有効な選択肢になり得る一方で、スタートアップのようなコスト制約のある組織や、高いスケーラビリティが求められる大企業では、必ずしもワークするとは限らないです。
なので、本記事では、無料もしくは低コスト(API利用料程度)で実現可能かつ、長期的に競合優位性を築きうる内製化アプローチに注目してみたいと思います。

本記事を通じて、ビジネスオペレーション改善に取り組む方々が、外部ツール頼みに留まらない、自社独自の強みを生かしたDX戦略を描く一助になれば嬉しいです。

ポイントとなるのは、名刺管理や予実管理のプロセスをSalesforceを軸に一元化させて、営業プロセスのスピードアップと目標達成率の向上を図ることです。それでは、本題として3つの学びをご紹介します。


名刺スキャンと即時商談化でリード対応スピードを向上

弊社では、マーケティング施策として、東京ビッグサイトや幕張メッセで開催される「AIエキスポ」などの展示会に積極的に出展しています。

そうした展示会で獲得したリードを活かすには、「スピード」が何より重要です。当初は、展示会で集めた名刺情報を翌日以降にまとめてSalesforceへ取り込んでいたため、後追いの連絡やフォローアップメールが遅れてしまっていました。当然、その間にお客様の熱量は下がり、せっかくの商機をフルに活かせてない状態です。

そこで、内製したOCR機能とAccount Engagement(旧Pardot)のフォームを組み合わせた名刺スキャンツールを開発しました。
以下が、その実際のフォーム画面なのですが、PCもしくはスマートフォンで名刺をスキャンすれば、その場でSalesforceに取り込みが可能になります。
さらに、オンラインの日程調整ツールも同一画面に統合し、ブース内でお客様との商談日程を即時に確定できるようにしました。

名刺スキャンツール


以前は「名刺→翌日入力→後日フォローアップ」という流れでしたが、今では「名刺→即時データ化→即日フォローアップ・商談確定」が可能になり、1日に100件を超える商談でも、その場でセットアップすることが現実的になりました。


また、Salesforceのレポートで当日の結果を即座に可視化できるため、展示会期間中でも日々改善が回せるようになるのも大きいです。

なぜここまですぐの対応が重要なのか?
以下のグラフが示すように、2021年の調査結果では、インバウンドリードへの対応がわずか5分遅れるだけで、コンバージョン率が8分の1に激減するとされています。

リード応答時間と平均商談化率

展示会も同様で、熱が冷める前に次のステップに進むことが、商談数拡大には欠かせないです。
展示会で得たリードの旬を逃さず捉えて、その日のうちに商談化を進めることで、営業生産性は大幅に向上し、営業目標達成への近道になると実感しています。

営業進捗を即座に把握できるダッシュボード

もう一つの取り組みが、営業実績の「見える化」です。
展示会で大量の商談を獲得し、営業メンバーを増やしていく中で、当初の課題として浮上したのが「どこで誰がつまづいているのか」が把握しづらい点でした。
商談数が増えると、どうしても歩留まり率が悪化するメンバーも現れますが、どのフェーズで改善が必要なのかが明確でなければ、営業マネージャーも的確なフォローができず、改善が後手に回ってしまいます

そこで、Salesforce上のデータをGoogleスプレッドシートと同期し、内製データベースで加工して、直感的に操作できるダッシュボードを構築しました。

ダッシュボード(サンプル)


このダッシュボードにより、チーム・個人別の受注率やフェーズごとの歩留まり率が一目で分かります。
さらに、特定のKPIをクリックすると該当するSalesforceレポートへ一瞬でアクセスできるようにすることで、データの一次ソースに即座に戻り、具体的な案件内容を確認したり、改善策を検討したりするプロセスが格段にスムーズになりました。

チーム全体や各営業メンバーのKPIが一覧で並び、
ワンクリックで詳細なSalesforce情報に飛べる設計に


結果として「このメンバーは商談フェーズ初期で詰まりがちだから、ヒアリングの質を高めるトレーニングをしよう」「この担当者は意思決定者と合意する段階で止まりやすいから、クロージング手法を共有しよう」といった、的を射た打ち手が素早く打てるようになります

こうした取り組みを行わないと、目標を高く設定した際、ただ営業人数を増やし、商談数を増やしていくしか手がなくなり、1人あたりの生産性低下を招いてしまいます。しかし、一人ひとりの生産性を底上げできれば、結果的にキャッシュフローは改善し、企業価値の最大化につながる。
経営視点で見ても、こうしたデータドリブンな改善は非常に有意義だと考えています。

AIエージェント時代のデータ統合戦略

ここまで取り上げた、Salesforceを軸とした内製化の開発は、実は将来のAIエージェント活用を見据えた「基盤づくり」でもあります。

従来のように、営業データや顧客情報が複数のSaaS上に分散していると、運用が複雑になるうえ、高度なAI技術を本格導入しようとした際、データ品質や統制面がネックとなり、十分な成果を得にくくなってきています。

一方、SalesforceやGoogle Workspace、Microsoft 365といった中核となる基盤にデータを集約すれば、クリーンで一貫性のあるデータセットが確保できます。これにより、法務・セキュリティ要件が厳しい大企業でも、審査をスムーズに通過しやすくなり、今後の生成AI・AIエージェント活用において大きな強みとなります。

実際、Salesforceは直近の発表でも、AIエージェントの大規模テストや継続的な品質改善を支援する「Agentforce Testing Center」を発表しています。
これは、自律型AIエージェントをテスト・監視・管理するための初のライフサイクル管理ツールで、安全なSandbox環境でプロトタイプを試し、合成データを用いて大規模テストできる仕組みです。

AIエージェントライフサイクル管理ツール「Agentforce Testing Center」

こうした新しいツールは、AIエージェントが「ただ使える」だけでなく、データの信頼性・安全性・品質を確保しながら継続的に改善していく段階になったのだと思います。

その上で、差別化の鍵を握るのは自社固有のデータと、それを活かし続ける運用体制です。
今のうちにSalesforceへのデータ集約や内製化を進め、まだ整備されていない自社内データを生成AIで構造化・最新化できる仕組みを整えることが、スピーディな営業対応や高度なデータ活用、そして将来のAIエージェント活用まで見据えた競争優位性の構築につながると考えています。

実際、弊社の営業では、自社サービス「Rimo Voice」を用いて全商談を自動要約し、それをSalesforceへ連携することで、わずか10秒ほどで「決定事項」や「ネクストアクション」といった構造化された情報を確認できるようになりました。また、要約の共同編集や全話者の特定など、細部までクオリティを追求した結果、そこで生まれる独自データは、他社にない差別化要素となっています。


ここまで読んでいただきありがとうございました!

これらの取り組みを通じて、Rimoでは営業組織の生産性向上と、将来を見据えた新しい営業スタイルの両立を目指しています。
そういった戦略策定や実行に携わってくれる仲間を募集しているので、この記事を読んで興味を持ってくださった方は、一度お話しましょう〜
話すだけでも大歓迎です!


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