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スタートアップが初めてミッション・ビジョン・バリューをつくるときのtips

先日、元同僚から「Mission/Vision/Value(以下MVV)のつくり方について相談にのってほしい」と連絡があった。その人は転職したスタートアップでMVV策定のプロジェクトにアサインされ、何から手をつけていいのか困っていた。小一時間ほどオンラインMTGでアドバイスしたところ、思っていた以上に感謝され、もしやこの内容が参考になる人は他にもいるかもしれないと、このnoteを書き始めた。

私は新卒入社した会社で組織人事コンサルティングの営業をしていた頃、理念策定サービスを複数社で受注し、策定プロセスにも携わったことがある。また、そのあとも複数社のベンチャーやスタートアップで人事責任者として自社のMVV策定や改定を経験してきた。それらの経験を踏まえ、スタートアップが初めてMVVをつくるときのtipsを紹介していきたい。

タイミングはPMF後で良い

スタートアップが初めてMVVをつくるタイミングは、PMF(Product Market Fit)後で問題ない。この理由は多くの人がTwitterなどで語っている。

個人的にもPMF後に採用が加速するタイミングや、組織が【取締役-メンバー】だけの2段階構造の文鎮型組織から【取締役-マネージャー-メンバー】の3段階構造のピラミッド型組織に移行していく20〜50名規模のタイミングで明文化するのが良いと考えている。

理由としては、採用が加速するタイミングでは採用候補者に対してミッション・ビジョンを複数人の面接官が共通認識をもって伝えていくことが魅力付けの観点でも重要になるし、カルチャーフィットなどの採用基準として見極めの観点でもバリューが役に立つ。

また、組織が拡大してマネージャーなどの中間管理職を配置するようになると、経営陣からメンバーに1on1で直接コミュニケーションをとる機会も少なくなるため、MVVの明文化により全社の目指す方向性をすり合わせるという意味でも重要度が増す。

プロジェクト体制はピザ2枚ルール

大前提として、理念のつくり方やプロジェクト体制に正解はない。CEOが一人で山に籠って1週間くらい必死に考え抜いてもいいし、全社員で合宿してワークショップ形式でつくっても構わない。実際に全社員のおよそ4分の1である延べ1,022名が9ヶ月にわたってワークショップに参加し、理念をつくったという協和発酵キリン株式会社の事例もある。

とはいえ、人数が多すぎると手間やコストが膨大になるし、人数が少なすぎると策定後の組織への浸透が難しくなる。

CEOを含めた取締役や執行役員3〜6名+人事や経営企画などのプロジェクト推進担当1〜2名の合計4〜8名でプロジェクト体制を組むのが個人的にはおすすめ。CEOだけでなく他の経営幹部が加わることで策定後の組織への浸透も進めやすく、Max8名程度であれば議論の発散ばかりで収束できないというリスクも最小化できる。Amazon創業者のジェフ・ベゾスが提唱するピザ2枚ルール(チーム編成はピザ2枚を配りきれる程度の人数)が参考になる。

聖書を定める

プロジェクトの体制が決まったら、次にやるべきことは聖書を定めること。聖書といっても宗教的なことではなく、策定を進めるにあたり何を軸にするか、羅針盤にするかだ。MVVの策定プロジェクトでよく陥りがちな罠は、プロジェクトメンバーがそれぞれの考える定義で好きなことを言って抽象的な空中戦の議論が続き、一向に着地できないという状況である。

ここでいう聖書というのは経営理念について解説された本を指す。この聖書が定まると、そもそも論である「理念を策定する目的とは?」「理念の枠組みをどう定義するか?」などの目線がプロジェクトメンバー間で揃いやすい。言うまでもなく理念は中身が大切だが、そもそも論ですり合っていないと、この議論ばかりに時間を使うことになる。

経営理念について書かれた本は、このnoteのTOP画像にもある通りたくさん存在するため、その中からCEOやプロジェクト推進担当が最もしっくりくるものを選べば良い。個人的には「ビジョナリー・カンパニー1」がおすすめ。

「ビジョナリー・カンパニー1」を薦める理由は、理念の存在や浸透度合が事業成長と相関していることを調査し、エビデンスとして定量的に示している点である。本が手元にある方はP.425〜P.427にある「基本理念の調査結果」を見てほしい。理念の意義を定性的に綴っている本は山ほど存在するが、調査結果を定量的に示しているものは少ない(というかほぼ無い)。

もしビジョナリーカンパニー1を聖書として定めるのであれば、先ほど紹介したP.425〜P.427に加え、P.111〜P.128を印刷してプロジェクトメンバー全員に配って読んでもらうといい。もちろん「本1冊まるごと読んでこい」というのもありだが、上記の約20ページだけで十分にベースとなる考え方はすり合うはず。

枠組みは「生み出す」のではなく「選ぶ」

経営理念の枠組み(フレーム)はだいたい以下の4パターンである。このnoteではMVVと言っているが、VMV(Vision/Mission/Value)としている企業もあるし、MV(Mission/Value)VV(Vision/Value)の企業もある。

MVVの図

また、Mission/Vision/Valueそれぞれの定義についても各社様々であるが、大枠としては以下の通りだ。

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何度も言うが、理念の枠組みや定義としてどれが正解とかはない。あくまで理念の中身が大切なので、車輪の再発明のように枠組みや定義を生み出すために長い時間を費やしても仕方がない。プロジェクトメンバーが最もしっくりくるものを選んだら、さっさと次に進もう。

最初から綺麗なコピーを書く必要はない

MVVの中身を検討する際、最初から綺麗なコピーを書く必要はない。まずはMVVそれぞれの考え方の概念や要約をつくるイメージで問題ない。そのような考え方に至った背景などを含めて議事録に残しておき、最終段階でコピーに落とし込めばいい。

社内でコピーライティングできる人材がいなければ、外部のプロのコピーライターに依頼するのがおすすめ。コピーライターのスキルや実働時間によるが、大枠の概念や要約が定まっていれば数万円〜数十万円で受けてもらえる。もし優秀なコピーライターに頼みたいなら、実績十分な私の知り合いも紹介できるのでFacebookTwitterでDMいただければと。

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MVVはストーリーとして連動させる

MVVをつくる際に陥る罠として、ミッション-ビジョン-バリューの繋がりを考えず、個別に独立したものとしてつくってしまうことがある。

例えば、ミッションを社会的な役割、ビジョンを自社のあるべき姿、バリューを行動基準と定義した場合、社会的な役割(ミッション)を果たすために会社としてあるべき姿(ビジョン)を目指すのであり、それらの実現のためには社員のみんながこの行動(バリュー)をとることが必要不可欠だから、と伝えられるかどうか。

MVVが連動していない、もしくはストーリーが繋がっていないように見えてしまうと、社員からすれば「なんのためにこのバリューの発揮を求められているのかよくわからん」となってしまう。また、採用候補者に対してはMVVを連動したストーリーとして伝えられると、一本筋の通った会社として好印象を持ってもらいやすいはずだ。

バリューを評価制度と紐付けるなら価値観ベースではなく行動ベースで考える

ミッション・ビジョンの浸透については、その内容を社員が理解し、共感することによって日々の業務の動機付けや目線を上げるきっかけになっていれば成功だと言える。一方、バリューについてはそうはいかない。理解→共感のプロセスをたどったあと、バリューに沿って行動したり、判断したりするようになってはじめて浸透していると言える。

そう考えるとバリュー浸透はただ説明して終わりではなく、策定後の運用の方がむしろ大切である。バリュー浸透方法については以下のnoteに詳しく書いたが、社員が能動的にバリューを使うため評価制度と紐付ける場合、バリューを価値観やマインドベースではなく、行動ベースで明文化した方が運用にのりやすい。価値観やマインドは何を持って体現したというのが測りづらく、評価項目としては使いづらいからだ。もし評価制度と紐付ける前提であれば、表出したことがわかりやすい行動ベースのバリューをつくることをおすすめする。

MVVの浸透を見据えて策定プロセスに全社員を巻き込む

このnoteの前半で「MVV策定プロジェクトに大人数を巻き込むと手間やコストが膨大になる」と書いたが、策定後の浸透フェーズを見据えると、どこかのタイミングで全社員を巻き込んでおくのは悪いことではない。最終的にはMVVに血が通い、組織に深く染み渡っている状態が理想だからだ。

方法としては、例えばワークショップやアンケートを通じてMVVのキーワードのアイデアを出してもらったり、コピーライターが制作したMVV候補案に投票してもらうなどが考えられる。

社員から見れば完成品を上から降ろされるよりも、完成させていくプロセスに関われた方が愛着がわくため、策定フェーズ→浸透フェーズと明確に切り分けるよりも、策定フェーズから徐々に巻き込んでいく方が自然に受け入れられやすい。

最後に

スタートアップの皆さんが初めてMVVを策定する際にこのnoteが役に立てば、それほど嬉しいことはない。この記事を少しでも気に入っていただけた方は、SNS拡散やスキボタンを押してもらえると泣いて喜びます。


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みやもとかずのり
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