とりあえず転移ゼロ!
「転移、ありませんでしたよ!」
ギャグ好きの腫瘍内科医が、嬉しそうな笑顔で言った。待ちに待ったPETの予約が取れて、検査に行き、その数日後、結果を聞きに行った時のことだ。
待ちに待ったPET検査
PETというのは、Positron Emission Tomography、陽電子放出断層撮影、のことだそうで、がんの治療を始める前に全身に転移があるかないかをみるための検査だ。ブドウ糖を付加した検査薬を身体の中に入れて全身を撮影する。すると、がんは糖分が大好き、ブドウ糖が特に大好きだから、がんがもし身体のどこかにいたら、ブドウ糖が入ってきた時にその場所がわーいわーい! ブドウ糖だー!! と喜んで光るようにできていて、それでがん細胞の有無がわかるんだとか。
がんは砂糖が好き!!
そういえば乳がんだとわかってすぐに、がん細胞は糖分を餌に増殖すると聞いたので、家にある砂糖、蜂蜜、お菓子類は全部捨てた。家の地下にあるカンティーナ(食糧庫)には、夏に仕込んだジャムやら果物のシロップ漬けなんかがたくさん並んでいたけど、そんなのもみんな、人にあげたり、ゴミ箱行きにしたっけ。その後、抗がん剤の副作用で気持ちが悪くて食べられなかった時期に、とりあえずなんでも食べたいものを食べよう!とお菓子類も復活させてしまった。がんでなくても砂糖は身体にいろいろ悪いというから、本当は復活させない方がよかったけど、でも病気以前よりは随分少なくなっているのでよしとします。笑 がんとわかる前は、本当に朝から晩まで、お菓子を食べていた。
さて診察室で。転移があるかどうか、そんなに気に病んでいるつもりはなかったのに、なかったと言われたらやっぱり、とてもホッとした。やったね!と小さく歓声を上げながら隣に座っている娘を見ると、目の周りが赤くなっていた。心配かけたんだね、ごめんね。
転移がないって、なんかすごいじゃん!
Noteで出会う乳がん体験者の人たちも、FBで見つけた乳がん体験者のグループでも、そしてネットで見かける乳がん闘病ブログなんかでも、ほとんどの人が脇下のリンパ腺に転移があると書いている。最近乳がん治療中と公表した梅宮あんなさんも、脇下リンパ節に転移があると言っている。
そんな中、私のがんは「顔つきが悪い」と言われて、悪性度が高いヤツだと言われたのに、身体の中に遠隔転移もないし、胸のすぐ隣の、脇の下のリンパ節にも転移がないなんて、なんかすごいじゃん、と嬉しくなった。リンパ節に転移があると、がん細胞がリンパ液にのって身体全体に巡っていってしまい、それで遠隔転移が起きる。私の乳がんは2センチ大のグリグリと、小さな粒々がいくつかあるらしいけど、おっぱいの中だけで完結しているのだ。よかったよかった。
もちろん、専門医の目にも、PETなどの検査にも引っかからないミクロながん細胞がどこかに隠れている可能性はあって、だからこれから抗がん剤も手術もして万全の治療をするわけだし、それでも絶対再発しないとは限らない。だけど、まずは朗報。その日から、気分がグッと軽くなった。重くなっていたつもりはなかったのに。
さて、いよいよ悪名高き抗がん剤治療というものが始まります。