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アドリアやらボットゥーラやらが学食ランチを作るというすごい大学で、さて吉兆は何を作ったか、という話。

京都吉兆が学食ランチを作ったという、このニュースに関する正式な記事は後日、某媒体に書くことになっているんだけど、とりあえず速報(ってもう10日も前の話だけど)ってことで、何を作ったのか?気になる人も多いと思うので、ここに書いておきます。世界のトップシェフたちがやってきては、学食ランチを作ってくれるという、イタリア、ピエモンテ州の食科学大学での話です。

日本の、京都の、懐石の最高峰、ということでどんな美しいお料理が!? と期待は最高潮、だったけど、学食なので、しかもイタリアだから、白い洋皿に盛り付けたワンプレートランチ。とはいえ、さすがは吉兆。美味しそうな一品が仕上がりました。

季節のキノコを炊き込んだご飯の上に、「ファッソーネ」という最高品質のピエモンテ牛の50日熟成サーロイン。これを表面をさっとグリルしたあと低温調理で中をミディアムレアに仕上げたステーキと、軽く焦げ目をつけたズッキーニ、パプリカ、ナス、プチトマト、ししとうのグリル、マッシュポテトをのせて、ステーキの上にはトロミをつけた醤油と味醂のタレを、その上に低温でカリッとさせたニンニクチップスと、浅葱、はイタリアにはないのでチャイブのみじん切りを。同じくピエモンテ名物牛の生肉を、マグロの漬けのように仕立てたものも添えた、豪華で彩りも美しい、ボリューミーな一皿。

季節のキノコと言ったって、イタリアの普通の市場やスーパーなら、秋の季節に限ってはフンギ・ポルチーニがジャーン!とあって、あとはマッシュルームとか、よくてナメコに似たキオディーニ(釘、という意味)というキノコがあるぐらい。ところが吉兆様のオーダーとあっては、イタリア人の八百屋さんもめちゃくちゃ頑張った。ポルチーニ、キオディーニ、フィアンミッフェリ(マッチ棒、という意味)など、秋の今にしかお目にかかれないキノコ類に加えて、エリンギ、これ実は日本には普通にあるけど、イタリアではほとんど見かけないという、不思議な存在、がずらり勢揃いしたのだった。


まっちマッチ棒、という意味の「フィアンミッフェリ」
到着したポルチーニの品定めをしながら、学食厨房のシェフと握手する忙しい徳岡総料理長。

料理に添えたスープは、「鶏うしお」と言って、室町時代から日本で作られてきた潮汁(うしお汁)の技術を鶏肉で応用した旨味たっぷりのブイヨンに、出汁をとった後の鶏肉をほぐしたものと、溶き卵でしめたスープ。本当なら漆塗りのお椀にもりつけて、卵がゆらゆらと泳いでさぞかし綺麗だろう、と思うところだが、学食なのでティーカップに。

デザートは、今回のイベントの一つの目的でもあった、日本の本物の日本酒と味醂を紹介するということで、牛乳と味醂だけで作ったジェラート。味醂はかつて、高貴な人々が甘いアルコール飲料として楽しんでいた、ところが時代を経て、一般に広めるために、高価な手作り品でなくアルコールを含まない工業製品が増えた。でも今回は昔ながらの、本物の、アルコール13度の甘くてとろりとした味醂を使ってジェラートに。

これ3品で25ユーロ。普段の学食メニュー8〜10ユーロに比べたら破格の値段らしいけど、この大学に通ってこそ体験できる貴重なチャンス、とあって学生たちは嬉しそうにトレーを持って、列に並んで順番を待ったのだった。


ニコニコ顔、味を分析する顔、なんだろうこの味は?的な顔、の学生たち。


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