えりちゃん
えりちゃんを覚えてますかとおばさんが虚ろに迫るわたしもえりよ
制服のスカーフだけは捨てきれずわたしの首を今でも絞める
呼吸するように「キモい」と笑われて前髪の下わたしも笑う
教室でわたしを刺したコンパスが半径いじめメートルを描く
学校と家を往復するだけで赤外線と化したわたしよ
消しゴムの角を消すのとおんなじで躊躇うと負け、わたしの負けだ
世の中が逆さまになり飛行機はわたしを轢いてどこかに消えた
わたしから視線は移り選ばれたあの子が被るミルククラウン
舌打ちが響く気配にわたしまで飛び降りそうで今日は青天
火葬場で頭を下げるおばさんの胸に抱かれたあれがえりちゃん
犯人は脱皮し続け教室を支配している 今も変わらず
*
あの子が嫌いだった。
両肩を縮めて背中を丸めて黙ってやり過ごそうとして、それが余計に見ていて彼女たちをイラつかせるのだと、どうして気付かないのだろう。
笑えばいいのに。
申し訳なさそうな目を向けて笑えば少しはマシになるのに。
わたしならそうする。わたしならそうした。
でもそれをあの子に伝える気はなかった。
あの子を視界に捉えながら目を合わせないようにする。
わたしはあの子の友達でも何でもない。
友達でもない子に何の言葉をかけると言うの。
あの子が嫌い。
わたしがあの子だったとき、あの子もわたしと同じことを思ったはずだ。
もっと要領よく生きればいいのに。
ばかみたい。
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