深山静
2020年再始動の深山の短歌、川柳、エッセイ、小説です。
ことば書きの練習。 現代川柳・現代短歌を書き連ねています。(短歌多め)
えりちゃんを覚えてますかとおばさんが虚ろに迫るわたしもえりよ 制服のスカーフだけは捨てきれずわたしの首を今でも絞める 呼吸するように「キモい」と笑われて前髪の下わたしも笑う 教室でわたしを刺したコンパスが半径いじめメートルを描く 学校と家を往復するだけで赤外線と化したわたしよ 消しゴムの角を消すのとおんなじで躊躇うと負け、わたしの負けだ 世の中が逆さまになり飛行機はわたしを轢いてどこかに消えた わたしから視線は移り選ばれたあの子が被るミルククラウン 舌打ちが響
汽水域境目ばかり探すから名を呼ばれると立ち眩みする あんな人でも死ぬんやなすみません期待に沿えず生きてしまって 優劣で生死の決まる法則が伝染病に掻き乱される 方法を検索ばかりするうちは弱虫のまま見送るだけで 「負け犬」と言われなくても絶対に線を重ねて花を咲かすよ エスケープキーを押すならデリートを 世の中のためわたしのために 輝いて輝いてなお輝いて影が消えない影が消えない あのときの寿命をほんの少しでもシェアできたなら #あなたは生きて 虹色のディスクの中で二
この手から零れる愛は何でしょう1円単位で割り勘されて 一瞬の間が広がったカウンターあなたは覗くわたしは返す お帰りはあちらですよと午前二時扉の音はやっぱり残酷 胸焼けに寄り添う影を追いかけて繰り返し見るローマの休日 親知らず抜いても消えぬ痛みには見透かされてる躊躇した過去 半歩からさらに半歩も開いたらいつかあなたは去って行くのね あの曲の夜光虫になりたくてもらい泣きした空虚のわたし 愚かさとともに流れたコンタクトデイリーだから明日を見送る * 今が割と前向き
コレ睫毛入っているな違和感と引き際を知りサヨナラを聞く 容量が分からず作った夕飯をタッパに詰める時差ぼけみたい 元日に向けて早まる閉店に大みそかすら追い出されるとは 冷めていくカップの肌に懇願すあなたにだけは捨てられたくない 閉店が迫りソファーは意地悪で女ひとりが泣き寝入りする 冷めきったカップの底にひとりきりわたしの顔が染みついていた ベイサイドモールを無言で歩く夜に強くなれたねヒール音 * 大晦日にフラれたわけではない。そもそもそういう話ではない。 だって
左手の薬指だけ見る癖が今もわたしの真ん中に在る マニキュアがはみ出ず濡れた夜だからあなたの指に色を添えたい パノラマをもっと伸ばしてふたりきり 好きと言えれば楽なのに、ねえ この足が止まることのないようにため息を吐く白線を踏む くちびるの薄皮を食む独り寝にシュリンクされたあなたの記憶 十年が長いねなんて言わないで貪欲だって自負はあるから * どんな関係かと問われれば、一日を共に過ごしてくれる関係だとしか言いようがない。 それが他の人にどう伝わるかまではわたしの範
2018年川柳まとめ 中道に舗装の有無を問いかける 書き換けの言葉飲み込む事務文書 日報に隠したはずのない正義 肉まんに包み込めたか春の夢 噛み締めた嘘に混じった歯の欠片 恥なんてないから春は嘘なんだ 米露中夜の唸りを誰が聞く ひとときの長さをさしで測りたい 梅東風に託す異動と腹の音 ひと匙の幸せ舐める女です ミュージックボックスの中うずくまる モザイクに潜むわたしの頑なよ ステップを踏むほど重くなるこの世 膝カックンできぬ硝子の膝ふたつ 掛け違
2018年短歌まとめ・5 カウンター決めたあの子は絹ごしにおぼろのようなハートを隠す 強かに机の間すり抜けて窓の向こうにばらまく本音 しょーもないこともない気もするけれど玉ねぎの芯を目指した勇気 飲み込んだ棘の色はさよならの響きに似てた雨後の木漏れ日 パンプスは硝子製ではないけれどわたしへ続く標にしたい ヒーローになりたい君の真ん中でキラリと見えた承認欲求 真夜中に呼べば答える人の群れハートの意味はただ無関心 わたくしの仮面剥がせばわたくしの大人ニキビに眉は半
2018年短歌まとめ・4 加工した視界と言葉わたくしを現世に留める「いいね!」の通知 偽物の桜の花が落ちていて本物はもう雨の向こうへ 価値観の違いで離婚するのだし異動くらいはすんなりさせて お誘いをはいと言えずにクリックの音でごまかす異動前日 決裁に名乗るものでもないですとここにいたこと全て消したい よい人であるかどうかを仕事には持ち込まないで時計盤見る 距離感は安定剤の代替で他の言葉も一緒に飲める ロッカーの名札を剥がす儀式後に名札を貼れるロッカー探す *
2018年短歌まとめ・3 沈黙を守れぬ花火残像が扇ヶ浜のイルカに注ぐ 蝉時雨くぐり抜ければまた命稲穂の海を泳ぐトラクタ 濁流の中の煌めきその意味を指環の痕に聞けばいいのに ねえちゃんと胸に手を当て聞いてみてあなたに捧ぐラ・カンパネッラ 待ってれば必ず星は落ちてくる願いが叶う保証はないが ほつれ髪女々しさを剃る美容室ベリーショートで強がり増して 太陽に向かい何をば語るやら燃え尽きること知らぬ向日葵 憧れの人の手のひら湿ってたフェスの熱量恋の熱量 風神と雷神とき
2018年短歌まとめ・2 人の死ももはや因数分解で求められずに受け入れられずに 他人事自分事への移ろいを加速できずに並ぶお通夜よ 容赦ない偽善の群れに追われ行く九月一日日はまだ長い 宿題とともに詰め込む溜め息にランドセルすら我を裏切る 花すらも置かれず君は旅立った座席表から消された名前 正解を求め戦う人の手に捩じ込む誇りそして埃と 高速の路肩に黒い靴下が迷いくたびれ死んでいく春 * 神様はお客様ですと思えればギャンギャン喚くありがたき言 東から太陽のぼる常
2018年短歌まとめ・1 嘘つきが子どもみたいに笑うから何度も角を曲がる一日 飛び出したその瞬間に分かるやろ世界を作るカラーコードが 病から食細くなり死に到る死に到るため食細くなる 刃こぼれのない言葉だけ通過する泣く術忘れて見る砂嵐 真夜中の合わせ鏡は饒舌に悪口ばかり我に向ける 悔しさを舐めとる舌の柔らかき蛇口の栓をまた弛めけり ジグザグに歩き続けたはずなのにカラーコーンはまだ倒れない * わたしにとって川柳、短歌は怒りを発露する手段だった。 2017年、わ
手抜きでも愛してくれる悪い猫 性格の悪さで曇る眼鏡かな 色のない嘘を吐くから貴方だな 細胞のひとつひとつに男居り 枝分かれする髪の先舌の先 残酷にカップルシート座高告げ 水ナスとともに噛みたるわだかまり 肉じゃがとカレー並べて迫る夜 数珠ひとつ気圧の谷に横たわる 化けて出る母が母なら恋しかろ 銀の匙安いやさしさすぐ分かる 人生のハズレくじだけ集めてる 足の裏無限に伸びる弱音かな 横幅の広さ神経蜘蛛の糸 ---------------8< 切り取り
撃たず塗るものと気付いたBBよ 騒ぐほど余地はなかったAカップ マニキュアを乾くの待てず爪を噛む 爪の先滲む涙は鳳仙花 指きりを映えるようにと爪を塗る 鎖骨からその先誘うほくろかな 髪を巻く時間が惜しいイブの朝 遠雷や彼の心も響かせよ 真夜中の薄型テレビ軽いノリ ダニの跡辿って見えたオリオン座 LINEよりわりかし近い天の川 インスタの人の幸せ咀嚼する ---------------8< 切り取り線 >8------------- 一時期昼休憩に人様
今年も九月一日は過ぎていった。 一週間前くらいから九月一日を心配する大人たちの言葉がSNSから流れてきて、「おっと、お前は違うんじゃないの?」って思う人も中にはいたり。 何かを呼びかける、そんなアクションで心の保険を取っていたのだろう。 恐らくわたしもその内呼びかけるかもしれない。 自己満足、偽善と言われようと、死んで欲しくない人には死んで欲しくない。 顔を思い浮かべれる人たちだけでも命をなくすようなことはして欲しくない。 もうすぐ冬が来る。 去年のあの日を思い
許し合う距離になれないやじろべえ 額縁はわたしの心切り取れず 台本に見当たらないか今生は 幕引きの合図代わりの始業ベル 柔らかな声に馴染んだ別れです 青い鳥つついたハート炎上す ちぐはぐのちぐの辺りに迷い込む 星間に漂うわたしデブリかな 都合いい女になるわスイングバイ 月光は子宮奥には届かない 沈黙を美徳とするな世の案山子 花の名を知らぬ朝日が野に注ぐ 踊り子のステップ示す崖の下 ものさしの目盛り飛ばして人を見る オンラインしたまま消えた人生よ
義務感で生きるわたしはまだ生きる 正義とはあんパン強いる横暴や 愚痴だけで膨らんだのよこのお腹 根性を有糸分裂させてくれ 無精子の吐息聞こえるひとり寝よ 今月も始まりません乙女の日 子宮には漂流ゴミが溜まってく 唇の皮剥くたびにキスそびれ クズ芋がわたしに似てて美味くない 金曜の夜再起動し続ける スキップをうまくできないフラミンゴ シマウマを踏み躙り皆渡りきる 遮断機の向こうに消えた青い鳥 強くなれ蜥蜴の尻尾切る言葉 大丈夫靴紐結び泥沼へ 踏まれ