「総合的学習」の歴史的経緯

 「子供による自主的・主体的な取り組みを重視する」2018年版の学習指導要領は、1998年版の学習指導要領に登場する「総合的な学習の時間」とアクティブ・ラーニングのつながりがある。

 1977年版の学習指導要領で「おちこぼれ」を生む知育偏重の教育が批判された。覚えるだけでなく「考える社会科」にして問題解決能力を育てる必要があると強調されたのがその象徴だった。また新たに「ゆとりの時間」が設けられた。

 1989年版の学習指導要領で、「新しい学習観」が提起される。知識偏重・理解中心の学力だけではなく、子どもの「関心・意欲・態度」を重視する方向に舵を切った。

 さらに1998年版の学習指導要領では、とりわけ「総合的な学習の時間」の創設が最も大きかった。

 その総合的学習の特徴は、内容についての規定がなく、それぞれの学校が自由に内容をデザインすることになっている点にある。点数による評点もない。「空っぽの器」が総合的な学習の時間だ。

 導入のねらいについて説明した指導要領の「総合的な学習の時間の取扱い」という文書は分量にすると1ページ分ほどのごく短いものだ。

 ねらいの第一が「自ら課題を見つけ、自ら考え、主体的に判断し、より良く問題を解決する資質や能力を育てること」というよく知られた文言である。そして第二が、「学び方やものの考え方を身につけ、問題の解決や探究活動に主体的、創造的に取り組む態度を育て、自己の生き方を考えることができるようにすること」である。

 これらを見ると、総合的な学習コンセプトとして、プロジェクト学習のエッセンスが盛り込まれていることがわかる。

 プロジェクト型学習とは、学習者自身が課題を設定し、リサーチワーク(調べ活動)を行い、その成果を報告書や作品にまとめ上げるタイプの学習がそれで、生徒の主体的な活動や体験的な活動を組み込んだ一連の学習活動とそのプロセスを表す言葉だ。

 この「取扱い」の狙いは、アクティブ・ラーニングの先駆けともいえるものであり、さらに言えば「深い学び」を推奨するものでもある。

 ただ、何をやったらいいのかわからないという現場からの声もあって、1998年版指導要領では「国際理解、情報、環境、福祉・健康」の四項目を総合学習の課題として例示している。

 総合学習の実践としてよく知られるのは、小・中学生は川や街並みなどの地域調べ、羊やウサギなど動物の飼育、職業体験などの活動、中学・高校でいえば修学旅行先の情報をパンフにまとめる活動など。

 ただ、アクティブ・ラーニングの提唱は、学校教育の本丸である教科学習の改革までも含む、一歩も二歩も踏み込んだものである。これに比べると「空っぽの器」を用意し、それに盛る体験重視の活動を列挙した総合学習の提唱は、現場が見るとまだ限定的だ。

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