ドラマ『3000万』の終わり方(結末)
今年の後半は闇バイトに関する事件やニュースが多かったですね。
ほんとにどうなっちゃっているのでしょう。
NHK土曜ドラマ『3000万』、終わりましたね。
祐子(安達祐実さん)も義光(青木崇高さん)も犯罪に加担してしまったから、ドラマとはいえ当然そのまま逃げきったり、罪を償わなくてよかったりなんてことはないはず···とは誰もが思っていたでしょうけど、そういう終わり方でしたか···という、ある意味納得のラストシーンでした。
最終話だけでも「まだ展開があるのか?!」と思うほど話が二転三転していき、最後まで目が離せないし、祐子の、恐怖や焦りでいっぱいの極限の状態でも冷静に判断したり機転をきかせたりする賢さと度胸に感服したというか。
ラストは、視聴者によってさまざまな解釈ができるような描き方でした。
最後で車を運転している祐子が行く先を変えUターンしていくシーン。
あれは、祐子が家に帰っている途中で気持ちが変わり自首をしに行こうとしたのかなと思ったのですが、別の見方をすると、逆に自首をしに行くはずだったけど、気持ちが変わり「逃げきる」ことを選んでUターンしたのかな、とも思えたわけで。
他の人の考察は読んでいませんが、本当は祐子はあの時どうするつもりだったのでしょうか。
とにかくドラマ中では、祐子は何度も「(息子の)純一を守りたいだけ」「純一を守れればそれでいい」と息子ファースト発言をしていたから、息子のことを第一に考えた行動になっていたとは思います。
息子が1人になってしまわないように、息子を父親である義光に託して、祐子だけが罪を被る覚悟で警察に向かったのかな、とも思ったりして。
それにしても、ストーリーはスピード展開なんだけど、無駄も矛盾もほとんどなく、しかも演出は丁寧さを感じる、精巧につくられたドラマだったように思います。
そのせいもあってか、全8話なのに20話分ぐらいあったような気がする···。
それほど密度が高かった、ということかな。
また、犯罪組織の黒幕が黒幕っぽくない普通の上品そうなオバサン(清水美砂さん)で、彼女は「私にもできるんじゃないかしら」と独自に詐欺のやり方を勉強していた形跡があったという衝撃の事実。
「犯罪組織の黒幕」=ヤクザ(反社)というこれまでの先入観を簡単に破壊し、「一般人」に属している人物が頂点だったという、むしろ今どきの気味悪さを強調するのに効果的だったように思います。
そういう仕組みさえ理解して手順をふめば(マニュアル化)、ヤクザのような舎弟関係の絆がなくても意外と簡単に模倣できるという現代の危うさがリアルに描かれていたのではないでしょうか。
昔のヤクザは親分が子分を力ずく(もしくは絆)で動かして犯罪~利益を上げていたのでしょうけど。今は犯罪もシステム的でインテリジェンスというか···。
話がそれましたが、ラストのあとどうなったかは想像するしかありません。
義光はどうなったのか、その後やはり逮捕されてしまったのか、息子の純一はどうなったのか。
そして祐子はどうなったのか。
今もどこかで、外からは見えない犯罪組織がうごめいているかもしれないし、普通に生活しているような人も何かをきっかけに簡単に巻き込まれるかもしれない、当事者になるかもしれない。
エンタメ性が高いドラマでしたが、どこか不気味さが余韻に残る作品でした。
『燕は戻ってこない』のドラマも同じように余韻がすごかったです。
他のキャストの皆さんも素晴らしかったですが、特に安達祐実さんの演技力は見応えありました。
今回の「脚本開発チーム」によるプロジェクト、視聴者からすると「大成功」だったのではないでしょうか。
今後も期待します。