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ひとつひとつのエピソードが細かくて丁寧さを感じる『海のはじまり』

今季ドラマで好きな作品の一つ、『海のはじまり』(月曜夜9時 フジテレビ)

キャストの方々の演技が光っているのはもちろん、脚本もよく練られているし考えられている気がします。

(偉そうに上から目線で語っているみたいですみません!)

そして、女性脚本家だからこそ書けるような内容だったり言い回しだったりが随所に感じ取れます。
女性特有の婦人科系の検診や病気のこと、妊娠と中絶・出産など、性の多様化は進んでいるとはいえ、やはり体の仕組みはどちらかに分かれているわけで、それに起因する特有の病気や現象があるのが実情。

そういう意味では女性だから分かりえること、女性にしか共感できない部分もあり、だからこそ、それをなかなか知る機会が少ない、気づきにくい男性にも考えてもらうということへの効果も見込んでいるのかもしれないなと。

第5話で、弥生(有村架純さん)を練習台にして三つ編みを頑張って覚える夏 (目黒蓮さん)も微笑ましかった。

頑張って覚えたのに、第6話で海(泉谷星奈さん)から編み込みをリクエストされて夏は「アミコミ?何それ」と困惑していて、素直に面白いシーンだったのですが、そういう、スムーズにいかないところの話の作り方が緻密だなと感心。

その他にも細かいシーンがたくさんあって、丁寧に作られているように思えました。

第6話で中絶するつもりだった水季が海を産むきっかけになった、産婦人科に置いてある誰でもかきこめるノート。
水季が読み始めたときは、赤ちゃんを産む喜び(プラスコメント)が多い中複雑な思いで読み進める。
すると中絶を経験したであろう書き込みもあり⋯。

それは、テレビ画面にノートの内容が視聴者にも分かるように映し出される演出だったので、見ている私たちは自然と「一般の女性の書き込み」だと思い込む。

⋯が、その書き込みを読む声が流れ出し、途中から弥生の声に変わり、徐々に視聴者が気づき「えっ?」と一斉にザワつく⋯。

こういう演出、うまくないですか?

アイデアと言いますか、このようなちょっとしたシーンも、どう描くかで違ってくるような気がします。

8月12日の第7話。少しずつ、夏の知らない水季 (古川琴音さん)と海の生活ぶりが、時間を巻き戻すことで明かになりつつあり、そこで津野 (池松壮亮さん)との関係性・距離感が明らかになり・・・。

この距離感の出し方や、決して夏視点だけではない、それぞれの人たちの物語の描き方が素晴らしい。

それぞれの登場人物の立場と、夏と海に対する感情、それぞれが「家族」との関わりについて考え、向き合う話をうまくクロスさせながら丁寧に描いているのではないかなと、専門的なところはよく分からないけど、これまでの脚本家さんにない手法や着眼点で作られているように思いました(またもや上から目線⋯?)。

ここに書いたエピソードだけでなく、いろんなシーンに細やかな気配りと仕掛け・工夫がなされていて、それらに気づく面白さもあるから視聴者は惹き付けられるのではないでしょうか。

SNSやネットニュースでも、自分が気づかなかった場面や解釈、感想など書かれているのを見て、「なるほど⋯」(虎に翼の航一さん風)と新発見するのもまた楽しい。

そして、泉谷星奈さんの子供らしい自然な演技に脱帽。
本当に可愛い。彼女の存在もまたこのドラマにとっては大きいので起用は大成功ですね。

物語もこれから終盤に向けて静かに盛り上がっていくことでしょう。
楽しみです🎶




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