日本を滅ぼす研究腐敗――不正が不正でなくなるとき(8)1章 「奨学金問題対策全国会議」入会拒否事件 2
取材を進めると別の事件に行き当たった。難病で貧困状況にあるにもかかわらず容赦ない取り立てを受けた都内の女性B(26歳)さんのケースだ。日本学生支援機構から530万円の一括払いを求める裁判を起こされていた。訴訟記録によれば、概要は次のとおりである。
Bさんは2006年4月に大学に入り、10年3月に卒業した。学生時代の4年間、毎月10万円、計480万円を日本学生支援機構から借りた。年利1・089%の第二種で、返還は月々2万2373円の240回払い、つまり20年かかって返す予定だった。ところが卒業後すぐに支払いが滞る。そして返還開始からわずか1年後の2011年9月に期限の利益を喪失し、一括請求される。この時点での分割金の延滞額は9か月分の約19万円にすぎない。それを、いきなり480万円を払えと請求したことになる。請求書によれば支払期限は月末の27日。まさに鬼のような取り立てである。
常識的に考えれば、月額2万円の分割金が払えないのだから480万円が払えるはずもない。それを見越していたかのように、支払期限が過ぎてしばらくすると日本学生支援機構は裁判所に支払督促(訴訟)を起こす。元金478万円に利息7万2414円、延滞金8256円、手続き費用1万7200円。さらに一括請求の支払期限である2011年9月末からから完済まで元本に対する年10%の延滞金――総額530万円以上を耳をそろえて返せと裁判所に訴えを起こした。
日本学生支援機構が一括請求をした根拠を確かめると、BさんのケースもやはりAさんと同様に施行令5条4項だった。「支払能力があるにもかかわらず」著しく延滞した場合は一括請求できるという規定なのだが、例によって訴状には「支払能力」については書いていない。
いったいBさんの支払能力はどうだったのか。訴訟記録を見ると、深刻な経済苦にあることを支援機構ははっきりと認識してた様子がうかがえる。
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