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科学技術の進歩とアスリートの本質について感じること

厚底シューズ問題

少し前までなにかと世間を騒がせていた厚底シューズ問題。

一般ニュースにも取り上げられていたので、多くの方が「厚底シューズ騒動」をご存知なんじゃないかなと思うのですが、それ以前にマラソンや駅伝でトップを走る選手が一様に蛍光カラーのシューズを履いているのを見た知人(非ランナー)から「マラソンって履くシューズ決められてるの?」と聞かれたことがあります。まぁ、普通にみたらそんなふうに思われるでしょうね。。。

カーボンプレートを特殊な発泡素材ので挟むという発想は、従来のシューズの機能を違うレイヤーで卓越してきました。もちろん合う/合わないという相性の問題があるので、誰もが履いたら速くなる!みたいな魔法のシューズではありません。ただ、そう思わせるくらいインパクトがあったのは間違い無いでしょう。

とりあえずひと段落したような空気が流れてますが、くすぶり続けそうな要素はあるなと思うのは個人的な心情です。

▶︎靴底の厚さは最大40ミリ
(現行のヴェイパーフライは36ミリ)

▶︎底に埋め込むカーボンファイバー製のプレートは1枚まで※即時適応

(こちらも現行ヴェイパーフライは使用可能)

▶︎新規則として、4月30日以降の大会で使用できるシューズは大会前の4カ月間に市販されていたものに限定

(ナイキの技術に対抗するために開発された他メーカーの試作品は使用できない)


大阪室内陸上での「事件」

その一方で週末に行われた大阪の室内陸上では男子80mHでこんな「事件」が起こりました。

なんと、出場8選手中4人がフライングによる失格。もちろん前代未聞です。オリンピックの選手選考はポイントも加味されるため、オリンピックまでのスケジュールに大きな影響を与えることになってくるでしょう。

フライングの判定はスターティングブロックに設置された圧力計によって判断されます。0.1秒以下のリアクションタイムは人間の反応速度を超えるという科学的根拠の下でルールが設定されてます。人間の目でフライングを判断するのには限界があるので、これは非常に良いことだと思っていますが、「0.1秒」じゃなくて「0秒」にしてもいいんじゃないかなと思ってしまうのは個人的な意見です。

だって、人間のリアクションタイムを超えているとはいえ、ピストルがなる前に出てるわけじゃないですよね。トレーニングを積み、レースを何度もくり返してきた選手は”野生のカン”だったり、”スターターが放つピストルのタイミング”が肌に染み込んでくると思います。極限状態になれば0.1秒という科学的根拠ももしかしたら崩れるかもしれない。

オリンピックイヤーの大事なレースで集中力が高まっていた選手であればあるほど、常識(科学的根拠)を超えてくることもあるんじゃないかな。

火事場の馬鹿力を僕は信じてます。


科学技術の進歩とアスリートの本質

厚底シューズは確かに選手の能力を引き上げてくれるかもしれません。ただ、ただ、走るのは選手本人であって、シューズが走るわけじゃない。なのでどんなにシューズが高機能だったとしても、シューズを履く選手の努力なしには記録なんて出ません。

アスリートの本質は自己の限界に挑戦することです。そのためにたゆまぬ努力をし、たくさん我慢し、不安やプレッシャーと戦いながら目標のレースに向かってます。それに水を差すようにシューズばかりが注目されると、選手の努力がかすんじゃいそうで怖いです。

「あの噂の厚底シューズを履いたから速く走れたんでしょ」なんて言われかねない。世間の目がそんな風に選手に向かないでほしいなと思ってます。

圧力計によるフライング判断もレースの公平性を保つ上では素晴らしい技術です。でもそれによって極限まで感覚を研ぎ澄ました人間の野生的な勘を認めないことになりかねないんじゃないかな。

タイミングがズバッと合った「絶妙のスタート」は見ていて本当に気持ちがいいもんです。人が生身の体で競うスポーツとしての魅力が損なわれないように祈るばかりです。






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宮川 浩太@RUNNING CLINIC院長
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