幼少期に有効な「ラダー運動」とは?楽しいステップで運動能力アップを目指そう!
今回は、幼少期に有効な「ラダー運動プログラム」についてお話しします。
「子どもロコモ」って知ってる?
2020年に行われた東京オリンピックでは、ベテラン選手に交じって若手選手の素晴らしい活躍がありましたね。しかし彼らはスポーツ界の超エリートであり、一般の多くの子どもたちや若者たちの体力・運動能力は、低下の一途をたどっています。
皆さんは「子どもロコモ」という言葉を聞いたことはありますか?
これは、運動器の障がいによって「立つ、歩く、走る」といった機能が低下している状態(ロコモーティブシンドローム)のことです。そんな子どもたちが、最近多くなってきているのです。特に、2020年から続いたコロナ禍により、外出や運動の機会が制限され、子どもたちの体力・運動能力の低下はさらに拍車がかかってしまいました…
「子どもロコモ」を防ぐためには、心身の成長が著しい児童期に、さまざまな運動を体験し、いろんな動作に対応する幅広い能力を獲得することが大切です。
子どもたちにいろんな運動に取り組んでもらうためには、親や先生など周りの大人が、子どもたちのやる気を引き出してあげることも必要でしょう。
優れた体育教材「ラダー運動」
では、どのようにして子どもたちの運動能力アップを目指したら良いでしょうか?
「ゴールデンエイジ」と呼ばれる幼少期には、神経系の機能と密接な関係がある「調整力(巧緻性、敏捷性、平衡性、協応性)」が著しく発達します。
この時期に、昔の子どもたちがよく遊んでいた「ケンケンパ」や「石蹴り」の延長として「ラダー運動」を導入することで、子どもたちの「調整力」を発達させることが期待できるのです。
スモールステップで構成されたこの「ラダー運動」は、次々と異なるステップを体感しながら成功体験を積み重ねることができ、運動することの楽しさを実感できます。
運動が苦手な子でも、少し頑張れば「やったー!出来た!」といった達成感を体験しやすいということも特徴です。
また、子どもたちが自分自身で次の目標を設定しやすい運動でもあります。
「ラダー運動」の効果とは?
ある保育園でラダー運動を導入してみたところ、運動能力に大きな変化が見られました!
特に、「20m走」「反復横とび」「シグザク走」の能力がアップしていることがわかったのです。
また、ラダー運動を導入してない保育園と比べて、かけっこが飛躍的に速くなったという結果も見られました!
さらには、ラダー運動が得意な子は、とっさに身をかわす能力が高いということがわかりました。つまり、ラダー運動は「危険回避能力」にも関係しているのです!
「ラダー運動」の上手な取り入れ方とは?
「ラダー運動」を体育教材として備えている小学校が最近増えてきていまが、十分に活用されていないのが現状です。
これは、ラダーの使い方や効果が十分に理解されていないためだと思われます。
そこで私は、有効な「ラダー運動プログラム」を提供するために、ラダー運動における各課題の成就率と体力・運動能力との関係性を検証する研究を行いました。
これはある小学校で実際に導入した「9つのラダー課題」の足の運びを示しています。
簡単な「歩行」から「かけあし」「グーパー」「ジグザグ」「スキップ」「横ダッシュ」「ツイスト(ひねりジャンプ)」「シャッフル」「サンバ」まであります。
各課題に対する子どもたちの成就率(折れ線グラフ)の結果から、9つのラダー課題は段階的に難易度が高くなっていることがわかりました。
これにより、子どもたちの運動能力のレベルに応じた課題を取り入れることが可能だといえます。
「ラダー運動」が上達するとほかの運動も上達!?
次に、ラダー動作の習熟度によって、子どもたちの体力・運動能力に違いはあるのか調査しました。
その結果、それぞれのステップについて、得意な子と苦手な子では、ラダー動作以外の運動能力においても大きな違いがあることがわかりました。
例えば、「ツイスト」が得意な子と苦手な子では、「反復横とび」「20mシャトルラン」「50m走」の結果でも大きな差があったのです。
この研究結果から、ラダー運動の各ステップの能力とその他の運動能力は深く関わっているといえるでしょう。
小学校の体育でぜひ「ラダー運動」を!
これまで、敏捷性トレーニングとして導入されることが多かった「ラダー運動」ですが、敏捷性以外の身体能力とも深く関わっていることがわかりました。
体育授業の一環として「ラダー運動」を取り入れることで、体力や運動能力全般を高めることが期待できるのです!
そこで、小学校の教育現場において先生方が効果的に「ラダー運動」を指導できるよう、指導の際の注意点を組み込んだ教材動画を作成してみました!ぜひご活用ください。
★今回の内容を動画で見たい方はこちら★
** 本研究は「笹川スポーツ研究助成」を受けて実施し、
「2019年度 優秀研究賞」を受賞することができました。
ご協力いただいたすべての皆様に深く感謝いたします **
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