健康と長寿と栄養②タンパク質
ブルーゾーン(Blue Zones)という言葉をご存知でしょうか?日本語では「長寿地域」と言い換えることができ、健康で長生きの人々が多い地域を指します。JIMという医療メディアのシンポジウムにて、ブルーゾーンの人々とそうではない人々になんの違いがあるのかがまとめられた文献が発表されました。文献では、疫学的な観点から考えた健康・長寿を獲得するための食事についてまとめられています。
この文献では、慢性疾患と長寿に影響する食事要因に関する最近の知見を、コホート研究という疫学において用いられる手法で調べられています。調査では被験者を30年以上追跡調査して、食事とライフスタイル要因に関する詳細なデータが2~4年ごとに収集されています。
前回はこの論文から「カロリー制限と脂質」について抜粋して紹介しました。今回は「タンパク質」を抜粋して紹介したいとおもいます。
タンパク質の種類と食物源
複数の論文では、総カロリー摂取量とは無関係にタンパク質の制限や特定のアミノ酸の制限が寿命を延ばし、健康長寿を促進するという研究結果が報告されています。タンパク質制限の根本的な利点のメカニズムとして提案されているのが、IGF-1(インスリン様成長因子)への影響です。
IGF-1は成長促進作用、インスリン様作用、細胞の増殖、分化の促進など多様な作用があります。低タンパク質食はIGF-1の産生を抑制すると考えられています。これは一見悪いことに思えますが、IGF-1産生が低下することで、ガンのリスク低下や老化の遅れにつながるとされています。
年齢によるタンパク質摂取の影響
この説に対して、ある研究は米国全国健康・栄養調査(National Health and Nutrition Examination Survey、NHANES)のデータを分析。それにより、タンパク質の摂取量と死亡率との関連は、年齢層やタンパク質の種類によって異なることを発見しました。
具体的には、50~65歳での高タンパク質摂取は死亡の増加、ガンおよび糖尿病による死亡リスクが(そうではないグループと比較して)4倍増加したそうです。ただし、この結果は動物性タンパク質によるもので、植物性タンパク質でそういった結果は得られませんでした。また、65歳以上の高齢者ではタンパク質の摂取量が多いほど、死亡率が低いことが判明しています。
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