【感覚統合】視覚機能とパフォーマンス
視覚とは、光のエネルギーが網膜上の感覚細胞に対する刺激となって生じる感覚のことである。「視覚」という言葉は、形態覚、運動覚、色覚、明暗覚などの総称として用いられている。
視覚によって、外界にある物体の色、形、運動、テクスチャ、奥行きなどについての情報、物体のカテゴリーについての情報、物体の位置関係のような外界の空間的な情報などが得られる。また、自己の運動に関する情報も視覚から得られ、時に視覚誘導性自己運動感覚などを引き起こす原因ともなる。
(1)視覚情報と感覚統合
目に入ってきた物体の位置や自分との距離感が、実際は異なっているということは、日常生活でもよく起こりうる。スポーツにおいても、例えば野球のバッティングでは、仮に150km/hの球速でボールが投げられた場合、キャッチャーミットに収まるまでに約0.44秒の猶予しかない。これを目で追おうとすると、当然バットのスイングが間に合わなくなる。
一瞬で投げられたボールに対して、(球種を読むといった視覚情報以外の要素もあるが)回転や角度などから、ここにボールが投げられると瞬時に判断してバットを振る。実際に野球選手は、ボールを一点に見つめているわけではなく、空や地面、自分の腕やバットの長さなど、間接的に入ってくる情報からボールのコースを推測し、スイングしているのだ。
野球未経験者であるほど、ボールがここにくるという予測を誤ってしまう。仮に予測したコースが当たっていたとしても、そこへ自分のイメージ通り、一寸の狂いなくバットを振ることができない。経験者であったとしても、この予測やバットスイングの軌道に誤差が生まれる。
俗に野球や他のスポーツにおいて「目がいい」と評価される選手は、単に視力が高いのではなく、こうした予測能力に長けている=優れた感覚統合能力を持っていると考えることができる。
(2)視覚の感覚統合能力を鍛える2つのトレーニング
視覚の感覚統合能力を鍛えるうえで、2つの有効なトレーニングがある。
1)パスート(滑動性追従運動)
対象物が動いているとき、眼球がその動きを追従してゆっくり動きながら注視しつづけることを指す。回転寿司で、自分の目当ての皿が目の前に運ばれてくるまで、眼で追いかける動作のこと。パスートのトレーニングはシンプルで、ペンなどがあればすぐできる。
①クライアントの前でペンなど対象物を差し出し、それを注視してもらう。
②ペンを上下左右に動かす。クライアントはそのペンを、頭を動かさずに眼だけで追いかける。
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