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「触れる」から安心感が生まれる。子ども・大人の心身の安定につながる触覚の話
触れられることで安心を得られるという感覚は、多くの人が共通して持っていると思います。これは体性感覚のうちの「触覚刺激」によってもたらされるわけですが、なぜ触覚が安心を生み出すのか、発育発達やメンタルケア、パフォーマンスアップと交えて解説したいと思います。
触れられることで得られる安心感の正体
私たちが誰かに触れられたり、自分が何かに触れたりするとき、「安心する」「落ち着く」といった感覚を抱くことがありますが、そこには体性感覚が深く関わっています。
おさらいですが、体性感覚とは皮膚で感じる触覚のほか、筋肉や関節の動きを感じ取る固有覚、身体の位置を把握する位置覚などを含む総合的な感覚です。
触れられた刺激は、皮膚のメカノレセプター(触覚受容器)で感知され、脊髄→視床→一次体性感覚野(S1)という経路をたどって脳に伝わります。
S1で基本的な触感が処理された後、より複雑な統合は二次体性感覚野(S2)や島皮質(insula)などでも行われますが、ここで「気持ちいい」「安心できる」といった情動の要素も絡んでくるのです。
また、安心感が得られる場面では、脳は副交感神経を優位にしやすく、心拍数や血圧が下がることで身体全体がリラックスモードに移行しやすくなります。
さらに、こうした“心地よいタッチ”は脳内でオキシトシン(愛情ホルモン)の分泌を促すことがわかっています。オキシトシンはストレス軽減や信頼感の向上に寄与するとされており、人との触れ合いが生み出す「ホッとする感じ」を神経化学的にも裏付けていると言えるでしょう。
私たちが「人肌が恋しい」「誰かと一緒に寝るとよく眠れる」と感じるのも、こうした神経科学的な背景が大きく関係しているのです。
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Brain Special Magazine
運動指導者の方へ向けて「脳」について理解し、パフォーマンスを高め機能改善などを行えるように学べるコンテンツです。
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