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ジム利用者の栄養・サプリに対する「真実と誤解」|最新研究から読み解く栄養指導のあり方

パーソナルトレーナーにとって当たり前の運動である筋トレは、筋力向上やボディメイクだけでなく、健康増進の手段として近年では多くの人が習慣として取り入れるようになりました。

24時間ジムに通いトレーニングに励む人も、男性はもちろん女性にも増えていると思います。一方、筋トレが一般化していくに従い増えてきているのが、「どのような栄養をとればいいのか」「サプリメントはどんな効果があるのか」といった疑問です。

今回は、「筋トレに関する誤解と真実」に着目した最新の研究を取り上げ、特に栄養・サプリメントに関するポイントを整理したいと思います。

研究概要:ジム利用者が抱える「誤解と真実」

本研究はオーストリアのフィットネスセンターに通う一般のトレーニング愛好家を対象に行われたものです。研究では、トレーニーたちが実際に信じている「栄養・サプリ」にまつわる知識と、科学的根拠(エビデンス)との間にどのようなギャップがあるのかを調べています。

研究では筋トレにまつわる14の主張を「真実」あるいは「誤解」として回答してもらい、その回答結果が科学的エビデンスと合致するかどうかを分析しました。

対象となった主張の内容は「タンパク質は筋肥大に必要か」「クレアチンは筋力を向上させるか」といった栄養面に関するものから、「筋トレは柔軟性を下げるのか」「部分可動域と全可動域はどちらが効果的か」といったトレーニング法まで幅広く含まれていました。

調査の結果、ジム利用者の多くが「タンパク質は筋肥大や筋力向上に効果的」という点は正しく理解していました。一方で、「タンパク質摂取のタイミングが筋肥大効果に大きく影響する」「マグネシウムをとれば筋けいれんを予防できる」など、実際の研究知見と比べて誤解が多い項目も存在したのです。

このような誤解は、インターネットやSNSで飛び交う情報の断片を鵜呑みにしてしまうことや、科学的エビデンスの更新スピードに実践現場が追いつかないことなど、さまざまな要因が背景として考えられます。

実際に、栄養に関するトピックと実際の効果についてまとめました。

1. タンパク質:筋肥大には必要だが、タイミング神話に注意

本研究では「タンパク質は筋力や筋肥大を増進させる」という点は“真実”として確認されています。実際、多くの研究でも、トレーニングと組み合わせた適切なタンパク質摂取が筋肉の合成を高めることが示唆されています。

一方で、「トレーニング直後に必ずタンパク質を摂らないと筋肉が成長しない」といった極端な“タイミング神話”は慎重に検討すべきです。日本でも「筋トレ実施30分以内」などのゴールデンタイムが盛んに言われていますが、研究のメタ分析結果などでは、1日の総タンパク質摂取量が十分であれば、タイミングの違いによる筋肥大効果の差はさほど大きくない、という報告があります。

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