見出し画像

妊娠期特有の病気リスクをビタミンDで軽減できる? 食事指導のポイント

妊娠中はさまざまな体調不良や病気になるリスクがあります。そのうち、妊娠中に高血圧を発症するのが「妊娠高血圧症候群」です(妊娠前は血圧に問題がなかった人を指します)。

原因不明の妊娠高血圧症候群ですが、この病気のなかで心配されるのが妊娠高血圧腎症(にんしんこうけつあつじんしょう)、旧称「子癇前症」です。今回は、最悪の場合は死亡にいたるケースもあるこの病気と、ビタミンDとの関連性を調べた研究について解説します。

妊娠高血圧腎症とは?

妊娠高血圧腎症とは、妊娠20週以降に発症する高血圧と蛋白尿、もしくはそれに準じた症状(浮腫、腎機能障害など)を特徴とする重篤な妊娠合併症です。

世界的な統計によると、全妊娠の約2~10%に発症するとされ、母体だけでなく胎児の健康にも大きな影響を及ぼします。日本国内でも、妊産婦死亡の要因のひとつとして挙げられるほど注意が必要な疾患です。

妊娠高血圧腎症の初期症状には、高血圧、頭痛、吐き気、胸や胃のあたりがムカムカする、全倦怠感、上腹部痛、視界異常(チカチカする、視界の一部が見えなくなるなど)などがあります。

さらに重症化が進むと、血圧が急上昇したり、腎機能障害や肝機能障害が顕著になったりして、母体に大きな負担がかかります。さらに脳血管障害を誘発して脳出血やけいれんに至るケースもあるのです。

母体側の血管トラブルは胎盤にも影響を及ぼし、胎児の発育不全や早産のリスクを高める要因となります。発育不全が生じると出生時の体重が低くなるだけでなく、将来的に生活習慣病を発症しやすくなる可能性が指摘されています。

ビタミンDと妊娠高血圧腎症リスクの関係

ビタミンDは一般的に、骨や歯を丈夫にする栄養素として知られていますが、ほかにも免疫調節や血圧の調整など幅広い機能を持ちます。妊娠期の女性にとっては、胎児の骨格形成や母体の免疫バランス維持など、通常よりも多くのビタミンDを必要とする場面が多いです。

加えて、妊娠中は血液量が増えて身体のさまざまな器官がフル稼働するため、微量栄養素の欠乏が起こりやすい状態にあります。ビタミンD不足は骨粗鬆症だけでなく、妊娠高血圧腎症や妊娠糖尿病など、妊娠期特有の合併症リスクの上昇に関与するといわれており、特に注意したい栄養素のひとつです。

ビタミンDは食品からの摂取だけでは十分でない場合が多く、日光(紫外線)に当たることで体内合成されるのが一般的です。しかし、現代人は室内生活が長く、妊婦さんの場合はさらに出歩く機会が減ります。

また、最近の日本の食文化ではビタミンDを多く含む魚類やキノコ類を常に大量に食べているひとは少ないです。特に妊娠中は食べられる食事内容に個人差が生まれやすく、栄養価の高い食品を十分に食べられないケースもあります。このように、日照不足と食事パターン、妊娠期の需要増大が重なり、ビタミンD欠乏に陥りがちです。

ここから先は

1,959字
このマガジンは月に3~4記事、女性の体の特徴を把握したトレーニング方法などについて発信します。

Woman Special Magazine

¥1,980 / 月 初月無料

女性特有の身体の特徴や妊娠出産に関する情報、ホルモンバランスと自律神経などのお話とトレーニングなどの観点を絡めて解説します。 男性と女性は…

この記事が気に入ったらチップで応援してみませんか?