【詩】 生するまえの死
あなたが残したものは たったふたつだった
ここにいるというシルシ
まんまるにかたどられたスガタ
小指の爪ほどもない
ジリジリとした熱風の中
静かに時を待っていた
確かにそこにいた
たしかに
ほんの少しの邂逅
けれどそれは血潮になって渦の中に這い出てきて
拾い上げたものは後悔だけだった
同じかもしれなくて
だけどただの自分の一部かもしれなくて
もえるごみばこに ただ弔うように納めた
認めたくなかっただけかもしれなくても
告げられた言葉はただ 現実でもなくて
そう思いたかった 秋が来る
同じ夏は二度とこない
あなたをのみこんでしまえたら よかったのに