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映画『ミッドナイトスワン』を観た。

タイトルの通りですが、とうとう観ました。Amazon Prime Video様々です。

映画館には都合が悪くてどうしても観に行くことができず、レンタルが始まったらすぐにでも!と心に決めていたので、先行レンタル開始の知らせを見てから、もう楽しみで楽しみで。


以下、ネタバレを含みます。






映画館に行けなかったかわりに、先にノベライズを読んでいて、すべてを把握してからの視聴だったので、映画の中のストーリーに驚きは特にありませんでした。ただ、やっぱり、映像で観るのは本当に大事ですね。あんなに静かな映画なのに、展開は既にわかっているのに、終始ドキドキが止まりませんでした。わかっているからこそ、だったのかな...。


草彅さんの演技力については、今更こんなところで書き出す必要もないと思います。私はSMAPが好きだったのもあって、草彅さんのドラマはよく観ていましたが、あの方は静の演技が本当に素晴らしいと思う。もともとお顔が柔和で、穏やかなイメージがありますが、重たいものを抱えて生きている凪沙の、気高さと、暗雲漂う雰囲気がすごくよかった。前半のツンツンしていて常に世間と闘っている感じ、中盤からは一果への見方が変わり、後半にかけて母性に目覚めていく感じ。その移り変わりを、表情や細かな仕草で、観ているこちら側に自然に理解させてくれていました。

ショーパブで酔った客と揉めるシーンで、バレエを踊る一果の姿を初めて見たときの、あの夢でも見ているみたいな表情もとてもよかった。あ、これが人が希望を見つけたときの表情なんだろうな、と感じました。あのあたりから凪沙は変わっていったのだと思います。

一果のバレエの先生が凪沙と会話する中で、凪沙のことをつい「お母さん」と言ってしまい、それに対して凪沙が「やだ、先生ったら...」と吹き出すシーン。これは、いろいろな批評などでも絶賛されていました。私もすごく楽しみにしていたシーンで、実際に観たら本当に、本当に!よかった!嬉しいような、可笑しいような、照れくさいような。いろいろな感情が混ざり合ったあの表情は、さすが草彅さん。私も観ていて愛おしくなり、「あ〜〜〜、凪沙ちゃん...」と呟いていました。

それと、一果のバレエにかかる費用を稼ぐため、昼間の仕事を見つけて、長かった髪をバッサリ切ったシーン。戸惑って反発する一果にも動じず、穏やかに微笑みかける凪沙...。あの女神のような微笑みは、いったい何なのだろう?どうやったらあんな表情できるのだろう??と、不思議でした。だって、思いっきり短髪になって、まさに草彅さんなんですよ。普段の草彅さんになったんです。なのに、「草彅さんに戻ったな〜」ではなく、「凪沙が短髪になったんだな〜」としか思えなかったんです。あの慈愛に満ちた表情、一果を抱きしめた後ろ姿、手つき、もうすべてが女性、というか凪沙なんですよね。

減量など(たぶんしたと思うのですが未確認です)、風貌の役作りもそれなりにされたと思います。ご本人は、あまり作り込まず自然に臨んだ、のようなことをインタビューで仰っていました。凪沙を演じた、というより、生きた、ということなのでしょう。草彅さんがこの役を引き受けてくださって本当によかった。草彅さんでなかったら誰がよかったかな?となんとなく考えてみたのですが、思い浮かばなかった。やっぱりこの役は、この映画は、草彅さんでなければ成り立たなかったと思います。


ていうか、書きたいことがたくさんありすぎて大変です...。一果はバレエに目覚めたあたりからどんどんかわいくなっていくし、一果とは対照的な、りんのあの鬱々とした感じもよかった。思春期特有の不安定な関係性も、あるなぁ、と。内容は全然違うけれど、私も身に覚えがあるなぁ...と、ちょっと懐かしくなりました。


渋谷慶一郎さんの繊細でドラマチックなピアノが、また泣けて泣けて。凪沙や一果の心情をこれ以上ないほど表現していて、この映画に欠かせないものになっていました。草彅さんの演技を見てシンプルに作った、とご本人は仰っていましたが、やっぱり、シンプルって大事だ。音楽に限らずたいていのことはそうだと個人的に信じているのですが、余計なものを削ぎ落としていくことで、本質に辿りつきやすくなるのかなぁと思います。あのピアノの音が静かに始まるだけで、心はもうあの映画の世界に引き戻されてしまいます。音楽の効果ってすごいですね。


ノベライズを読んだからこそ思うこととしては、これは是非映画とノベライズ、セットで楽しむのがいいなぁ、と。映画は時間が限られているからどうしてもぎゅっと凝縮されてしまうけれど、ノベライズでは、メインキャストの心の中やその後のことがもっと細かく描かれています。特に、凪沙のショーパブでの同僚・瑞貴はあのままでは終わらないし、一果の母・早織の心の中はもっと複雑で臆病な部分もあるから、このあたりも知ってほしい。凪沙の過去の恋愛のお話や、新しい職場での出来事なんかも出てきます。


ずっと求めていた「女になる」という目標を叶えてからが残酷な展開になってしまったけれど、凪沙はきっと幸せだったのだろうと信じたいな。暗い人生だった一果が希望を見出すきっかけを作ってあげられたのだから、それだけでもよかった、と思っていてほしい。あ〜、凪沙と話ができたらいいのにな...。





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