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セーラの叔父さま 29話

ラム・ダスはストーカー?

パン屋のエピソードを体験していた頃、セーラの屋根裏部屋では変わったことが起きていた。

二人の男性がこっそり天窓から屋根裏部屋に入ってきたのだ。
ひとりはラム・ダス。もうひとりはインドの紳士の秘書だった。

もちろんこれは後に起こる魔法のような素敵なエピソードの下準備なのだ。
しかし、この時の会話を聞くとラム・ダスはストーカーじゃないのかっていうような行動をしてるのよね。

天窓から何度もセーラの行動を見ているのだ。
スズメやネズミに餌をやったり、ベッキーやロッティ、アーメンガードとの語らいも見ている。
ミンチン先生の酷さも知っていて、悪魔のような女だと思っている。
秘書によく知っているね、と言われると
「毎日のこと全部知っています」
って答えるのよね。
それって、どう考えてもストーカーだよね。
でもまあ、あの魔法のようなエピソードを最初に思いついたのがラム・ダスだから彼に感謝しなければいけない。

セーラが帰ってくるとちょうどミンチン先生がいた。
コックを叱りつけていたのだ。
そしてセーラを見つけると
「たかが買い物ぐらいで何時間もかかって、一体どこで道草をしていたのですか!」
と、叱りつけてきた。

この人は誰かを叱りつけることで自分が優位に立っていることを示そうとしているのだろう。
もし、この時叔父さまがいたらミンチン先生はここまで酷く叱りつけようとはしない。叔父さま(フランソワーズ)がセーラの叔父に言いつけるかもしれないと考えているからだ。
人を見て怒ったり怒らなかったり態度を変えるのは最低の人間だと思う。
しかし、とりあえずセーラ(私)は、大人しくしている。
料理番はミンチン先生に叱られた鬱憤を晴らすためにセーラを虐めようと考える。
お昼も食べていないセーラに古くて干からびて堅くなったパンをしぶしぶ与える。
こういうことで気晴らしをするなんてどうしようもない人間だなあ・・・と思いつつセーラは干からびたパンを手に屋根裏部屋に戻っていく。

叔父さまがパンをいっぱい買ってくれなかったらこんなことされて児童虐待だと訴えてやるところだわ。
いや・・・この時代、こういう風に虐げられた子供は数え切れないぐらいいたのよね。私は食事を満足に与えられないし、寒い部屋で暖炉もつけて貰えないけれど一応屋根のある部屋を与えられているのは、まだマシな部類なのかもしれないわね。

部屋に戻ると叔父さまは私とベッキーにさっきのパン屋さんで買ってきたパンをいっぱい分けてくれた。
これだけあれば例え明日食事抜きにされても大丈夫だろう。

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