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手厚く迎えられる場と、それを支える人たち。2021年、知らなかった世界との出会い。

10月、ある育児サークルに参加し始めた。

それまで参加していたサークルとは違う感じの活動をしているサークルにも参加して、息子にもっと新しい経験をさせられたらいいな、と。
そして、仲良くなれる人がいたらいいな、という淡い期待もあった。それまで参加していたサークルでは完全に乗り遅れて、気付けば周りのお母さんたちはお互い仲良さそうにしていた。新しいサークルは毎週活動がある。毎週顔を合わせていたら、少しは打ち解けられる人がいるかもしれない。

問い合わせをしたのは9月だが、緊急事態宣言で活動はお休み中。10月に再開の連絡を受け、見学に行ってみた。
すると一人のお母さんが、私のお世話係としてつきっきりであれこれと教えてくれた。事前に分担して、手配してくださっていたのだ。想像を超えたフォローの手厚さに驚いて、このふかふかとした場所を去ることが考えられなくなって、その場で入会を決めた。

その手厚さは、今まで知らなかった世界の現れだった。

家に帰ってからサークルのLINEグループを開けてみると、ノートのところに団体規約だけでなく、出欠席の連絡方法など細かいところまで説明されていた。新入りも迷うことが少なくて済むように、そしてみんなが毎回気を使わなくて済むように、やり方の検討を重ねた上でルールをまとめ、文章にして残しているのだ。よくよく考えられて、丁寧に手がかけられている。

サークルの毎回の活動は、その月を担当するチームのお母さんたちが企画し、お世話するというのも驚きだった。よく考えれば当たり前だが、自分が今すぐやれと言われても、アイデアもノウハウも持ち合わせていない。
私が入れてもらったのは、10月を担当するチームで、入ったときにはすでに準備の分担が決まっていた。せめて当日くらいはと、セッティングを手伝おうとして驚いた。工作をする日だったが、必要なパーツはすでに画用紙を切って作られており、それが一人分ずつサランラップに包まれていた。パーツはどれも小さく、複雑な形だ。
これを準備したお母さんは、どれほど手間がかかっただろう。ボランティアでそこまでできることに、私は目の前がひっくり返る思いだった。

その後も毎回、入念に企画が準備されていて、まだ乗っかるばかりの私は感動と恐縮で一杯だった。こうやって他の人にやってもらって、子どもの喜ぶ顔を見るから、自分もやろうという気持ちになるのだろうか。

なぜ、皆さんはここまでできるのか。
LINEグループのノートをさらに遡ると、過去の日程調整のノートがあった。開いてみると、それぞれが1週間の予定を入力して、空いている曜日を伝えている。
その予定に驚いた。ある2歳の子の1週間は「月・体操教室、火・プレ、水・プレ、木・なし、金・サークル」。幼稚園に入る前から、週4日も予定が埋まっているのか。もう習い事をしているのか。そんな調子の予定が半数はある。

そしてある日、ショッピングモールの屋上で息子を遊ばせていると、私の下の名前で呼び止められた。「サークルで一緒の……」と言われてはっと気付く。マスクもあって私はまだサークルの人の顔も覚え切れていないのに、名前まで覚えてくださっていたとは。しかも、息子でなく私の名前を。

今まで私は仕事をしながら生きてきた。子どもが生まれて育休を取ったけれど、その一方で、個人で書いたり編集したりする仕事も始めた。この先も、仕事をしながら生きていくことしか考えていなかった。
親しい友人や、育休中にオンラインで出会った人にも、仕事を続けている人、大切にしている人が多い。子育てを優先しながら少し仕事もしている、という友人もいるが、生き生きとしている姿が素敵だなと思いながらも、どこか自分から遠い選択肢のように感じていた。

でもサークルの皆さんと出会って、専業の主婦というのは、確かに一つの魅力ある生き方の選択肢だと思うようになった。子どもがいれば、子どもに手がかけられて、習い事などにも連れていける。そしてそんな皆さんは、自分のことだけでなく、サークルに集う子どもたちやお母さんたち、そしてそれだけでなく周りの人たちのことを気にかけ、フォローする人間性を持っている。みんなが楽しめるように、サークル活動の準備に手をかけたりもしている。

すごいなあ、と思う。育児も、家事も、サークル活動も、ちゃんとできているとは言い難い自分。今専業主婦の選択肢をとったら、自分の何に自信を持てばいいのかわからない。仕事も素晴らしい結果を残しているというわけではないが、それがなかったら言い訳も逃げ道もなくしてしまうようで怖い。
専業主婦とは、お金を得る仕事をしなくても、自分のことを認められる人なのではないか。そう思うと、専業主婦の方々がいっそう輝いて見える。もちろん、いろいろな事情で専業主婦をしている人もあるとは思うが。

ただ、自分にも本当は、専業主婦を選択する道もあるはずだ。いろいろな言い訳や思い込みから、これまでそれを考えていなかったことに気付く。
今の自分は、書いたり編集したりとやりたい仕事があって、何とかそれを実現しようとしている。でも、たとえそれが何かの事情で叶わなかったとしても、生きる道は他にもたくさんあるのだ。
いろいろな生き方があると知っているつもりでも、実際には、想像している範囲は狭かった。その範囲の外側にはもっともっと多様な生き方がある。途中で生き方を変えることもできるのだ。
サークルの皆さんとの出会いから、そのことに気付かされた。この先行き詰まったら、思い出したい。怖がらずにその選択肢を取れるくらい、仕事をしていない自分も認められるようになれたなら。

目を拓く最初のきっかけは息子だった。この先も息子の力を借りながら、さらに自分を広げていけるだろうか。

私の名前を覚えてくださるくらいいい人たちなのに、私の方がまだ顔も覚えられていない。打ち解けられる人ができるにはまだ時間がかかりそうだ。

このnoteは「書くとともに生きる」ひとたちのためのコミュニティ『sentence』 のアドベントカレンダー「2021年の出会い by sentence Advent Calendar 2021」の10日目の記事です。


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