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現代宮城風土記#39:卦体神信仰


卦体神信仰

 生まれ年の干支に対応する守護仏を一般に『守り本尊』というが、仙台では「卦体神(けたいがみ/けでがみ)」と呼んで信仰してきた。卦体神信仰における干支と守護仏の対応自体は全国的な守り本尊信仰と同様だが、神仏習合の名残で辰巳は「愛宕神社」、戌亥は「大崎八幡宮」が該当する。

子(千手観音)

善入院観音堂
 仙台市宮城野区原町にある観音堂。1655年に「仙台三十三観音」の十番札所として創建。言い伝えでは仙台城下の人が夢のお告げで三尊を大沢の山中から発見し創建されたという。元は『清光院』が別当を務めていたが、廃仏毀釈で廃寺。1933年に弘前の善入院と合併して現名称となった。本尊の千手観音と、脇侍の大勢至と聖観音の三尊が安置されている。境内には複数の境内社や石碑、大銀杏がある。建物は三間四方で、屋根は宝形造、本瓦葺。正面に一間の向拝が付く。江戸時代中期頃の建築とされ、仙台市の登録有形文化財。

善入院観音堂

丑寅(虚空蔵菩薩)

大満寺虚空蔵堂
 「大満寺(太白区)」にある虚空蔵堂。1659年に大満寺が現在地に移転する際に造営された。三間四方の宝形造で、屋根は桟瓦葺。仙台市指定の有形文化財。内部には堂よりも古い時期のものとされる厨子があり、虚空蔵菩薩とその脇侍の日光・月光菩薩が安置されている。
大満寺(太白区)
 仙台市太白区向山にある曹洞宗の寺院。仙台城築城前には青葉山に鎮座しており、仙台城築城後は経ヶ峰を経て現在の愛宕山の地に遷座した。元は新寺にある「龍泉院」の別院で、仙台城の旧名「千躰城」の由来とされる虚空蔵堂・千躰仏堂がある。虚空蔵堂は仙台市指定の文化財。

大満寺虚空蔵堂

卯(文殊菩薩)

鷲巣山文殊堂
 仙台市青葉区八幡にある仏堂。相馬出身の修験者で伊達政宗の家臣・嶺八兵衞が周辺を拝領し、1603年に創建された。文殊菩薩は卯年の守り本尊(卦体神)として信仰された。境内各所にウサギの像や絵馬等が設置されており、堂宇の屋根には波に見立てた瓦を渡る『波ウサギ』がある。

辰巳(普賢菩薩)

愛宕神社
 仙台市太白区向山にある神社。広瀬川に沿った『愛宕山』に鎮座している。元は米沢に鎮座していたが、岩出山、元寺小路を経て1650年に現在地に遷座した。本殿と拝殿は仙台市指定の有形文化財。「愛宕上杉通」「愛宕橋」など『愛宕』の名称が周辺の施設でよく利用されている。

愛宕神社

午(勢至菩薩)

賢聖院・二十三夜堂
 仙台市青葉区北目町にある天台宗の寺院。縁日が23日であることが「二十三夜堂」の由来。1069年創建、1600年現在地に遷座。大正時代には本堂と回廊があったが戦災で焼失し、原町にあった堂を移して再建。老朽化のため2022年に納骨堂を併設した耐震構造の本堂に建て替えられた。

二十三夜堂

未申(大日如来)

柳町大日堂
 仙台市青葉区にある大日堂。御譜代町の「柳町」の守護神。仙台城下の町割に使用した縄をこの地に埋めた場所の上に大日如来を安置したとも伝えられ、藩政時代には修験道の寺院・教楽院が別当を務めていた。大火や戦災で幾度か焼失しており、現在の堂は1953年に再建されたもの。

柳町大日堂

田町文殊院大日堂
 仙台市青葉区五橋にある大日堂。平安時代初期に弘法大師が開山した『眞隆寺』が始まりとされる。後に荒廃するが、江戸時代初期に他の寺院の別当として再興され、いくつかの名称の変遷後に『文殊院』となった。明治初期に廃寺となったが、1903年ごろに町内有志が再建した。

田町文殊院大日堂

寛行院大日如来堂
 仙台市青葉区八幡にある天台寺門宗の寺院。天台寺門宗に属する仙台市内唯一の寺院である。「大崎八幡宮」の大石段の手前左側に立地する。1679年に僧侶・浄心が天然石に刻まれた大日如来像を発見し、これを本尊として堂を建て開山した。堂の右手に石仏が並んでいる。

寛行院大日如来堂

酉(不動明王)

三瀧山不動院
 仙台市の中央通にある寺院。商売繁盛・家内安全を祈願する加持祈祷専門の寺院。沿革は定かではないが慶応元年に当時の住職が眼病平癒を祈り、お不動さまに供える水を汲みに出たとき、不動明王像を拾い上げたことによるとされる。仙台市内の商売繁盛の神様「仙台四郎」も祀っている。

三瀧山不動院

中山鳥滝神社
 仙台市青葉区中山にある神社。参道の正面に神社の拝殿があり、左手に『中山鳥滝不動尊』の堂宇がある。4代藩主・綱村が中山での鷹狩り中に滝で鳥を発見し、よく見たら1本の幣束と石仏だったため『鳥滝不動』として祀ったと伝わる。酉年の守り本尊(卦体神)として信仰される。

三居沢大聖不動尊
 仙台市青葉区荒巻にある不動尊。創建年代は不明だが、境内最古の石碑の建立年が1634年であることから、その頃には信仰されていたと考えられる。現在の堂宇は1986年に建て替えられたもので、背後に「御滝(不動滝)」がある。また境内には水子地蔵尊と稲荷社、多数の石碑がある。

三居沢大聖不動尊

・三居沢の御滝(不動滝)
 「三居沢大聖不動尊」の境内最奥にある滝。源流は青葉山で、3段の滝になっている。滝の下や横には不動明王の石像が複数設置されている。現在は立ち入りできないが、かつては修験者が滝に打たれる修行を行っていた。冬季には凍り付いて大きな氷柱を形成することがある。

三居沢の御滝(不動滝)

・三居沢大聖不動尊の石碑
 「三居沢大聖不動尊」の境内には複数の石碑がある。最古のものは1634年に建立された南無阿弥陀佛敬白碑で、境内に入ってすぐの右手に安置されている。2番目に古いものは1650年に建立された線刻の不動明王立像碑で「御滝(不動滝)」の滝壺の手前に設置されている。

三居沢大聖不動尊の石碑

戌亥(阿弥陀如来)

大崎八幡宮
 仙台市青葉区八幡にある神社。起源は坂上田村麻呂が創建した鎮守府八幡宮に遡るとされる。従来伊達家が祀ってきた成島八幡宮と合祀して現在地に遷座した。1607年に造立された権現造の社殿は日光東照宮と同じ建築様式で、本殿などが国宝に指定。安土桃山時代の文化を今に伝える。

おわりに

 未申と酉だけ複数ある理由はわからなかったので、何か知っている人がいればお伝えください。

更新履歴

2024年10月6日:記事を作成。

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