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長岡花火

花火が嫌いになっていた。
ずっとずっと大好きだった花火が。

「医療者を応援しよう」

と各地で上がる花火。そして一向に収束に向かわないコロナ。

「応援はいい。そんなことよりも集まるのを自粛してくれ。」

これが本音だった。
捻くれていたかもしれない。コロナによって、感染者が増えるにつれてシビアになる医療現場。本来入院するはずの人たちが入院できない現状。面会できないことでフラストレーションの溜まる患者やその家族。撤退するボランティアや制限のかかる清掃業者。世界中で不足する防護具や薬、ワクチン。そして疲弊する医療従事者。

花火が上がるたびにそんな状況が思い起こされ、自然と見ないようにしていたと思う。

段々と感染状況は落ち着き、日常を取り戻してきた頃、各地の花火大会は徐々に再開し出した。

2023年の長岡花火。
何年ぶりだろう。できる限り予定をつけて毎年行っていた長岡花火。
なぜか少し緊張や不安を抱えて会場に入った。

ヒュー・・・ドンッ!!

なぜか感動して涙が溢れた。
こんなに素直に花火を美しいと思えたのは何年ぶりだっただろう。

「あ、私花火が嫌いになってたんだ。」

そこで過去の自分の感情にはっきりと気づいた。
コロナ前には気づかなかったが、花火を見て素直に美しいと思えるのは心が健康だからなんだと初めて思った。

辛かった3年間。しかし同志達と第一線をともに戦い抜いた輝かしい3年間。
あんなに元気な人たちが一瞬にして命を奪われる現状を目の前にした。正体不明の恐ろしい相手と戦ってきた。患者本人も、その家族も悔しかったと思う。私も悔しかった。

そして、数々の患者の基礎体力や身体の状態が大きく予後を左右した。
基礎的な身体を大切にメンテナンスしていくことで勝率は上がる。
若い頃からの身体のメンテナンスに重きをおきたいと思えるきっかけをくれた。

月日が経ち、コロナの記憶は皆の中から薄れているだろう。
世界中の人々が同じ内容で似た状況を体験することなど中々ない。
同じ経験の中から各国は何を学んで進化していったのだろう。私たちはコロナによってどのように変化してそれを活かしていけるのだろう。
私はコロナをきっかけに、心身の健康が自身のためにも、家族のためにも、社会のためにも必要であると強く感じた。

今、改めて自身の心身と向き合ってほしい。
自分に優しく。他人に優しく。綺麗なものを素直に綺麗と思える心を大切に。

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