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エッセイ

暗闇の女
                 作:夏目かや

「バカヤロー。そこにお前が住んでるのは知っているぞー」
高層ビルのマンションに向かって叫んでいる女性。
すれ違った男が
「酔っ払い」
と、呟いて行く。
「ふん、男なんか。好きだよ。旦那とわかれなよって。
君のことを1番に考えているのは僕だよって。
耳元で囁いたのは誰よ…。」
旦那と別れて自由になったのに、まだ家にも入れて貰えないどころか、部屋番号も知らない。本当にそこにすんでいるの?
平日は仕事が忙しいと会えない。それでも最初は日曜日はあってくれたのに。、今はもう。
仕事の朝はは早いからって、あさよじに目覚ましで起きて4時半に彼にモーニングコール
「おはよう」の一言
交わす言葉が嬉しくて、でも今は既読スルー。
わかっているのよ終わりだって。
でも、まだ新しい男のところへは行けない。行った方が幸せになるってわかっているのに。
まだ、ここがかのことを思うとここがキュンとするの。
ふっ。
小娘じゃあるまいしね。
もう少しあがらわせてよ。
幸せだったんだから。
暗い夜道を、ボソボソと言いながら女性は消えていく。

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