『絶対的な味方』への渇望
坂根真美さんの「解毒」をひょんなことから手に取り、一気に読んでしまった。
坂根さんはカルト宗教に入会している家族の中で生まれ育った方だ。そして、そこから壮絶な過程を経て脱会するまでの半生を執筆された。
タイトルからしても、自分とは違う世界の人の話だろうと思って読んでいたのに……「あれ、この人の感じている感覚は私も覚えがあるぞ」ということに気付いて胸がどきりとなった。
真美さんが辿った苦しさは、ほぼ私も通ってきたものに酷似していた。
彼女がずっと抱いてきた違和感や窮屈さは、当然一般家庭ではあり得ない世界にいたという影響は多かったとは思う。ただ、親からの愛が不足している独特の「飢餓感」は、昭和40年代ごろに生まれた人たちの多くに共通するものなんんじゃないかと感じた。
その親は戦後の世代。(だいたい昭和20年前後の生まれ)
これは単なる感覚でしかないのだけれど、戦後、高度成長期に経済的に豊かになったかに見えた日本では、人知れず『信じられるものの不安定さ』が蔓延していたんじゃないだろうか?(養老孟司先生は信じられるのは「虫」だけだったとおっしゃっていた。死体は嘘をつかないから解剖学に進んだ……と)
その不安定な中で子供を産み育てるのだから、「愛」を伝えたり「存在価値」を持たせることができる余裕のある親は多くはなかったのかもしれない。そうなると、自然……子どもは自己肯定感の低い人間に成長する。
今、メンタル問題や生きづらさ問題を抱えている人がとても多い。アダルトチルドレンだったり適応障害だったりパニック障害だったり。とにかく社会や人間と繋がることに困難さを抱えた人が多い。
かくいう私も自分は幸せに普通に愛されて育ったと思ってきたのに、長年治らないメンタルの問題を抱えている。
それでも最近ではそんなに悲観しなくても「心地いい時間を多く持つようにしよう」という心がけで随分無駄に悩まなくはなった。
まだ親に対しては「どうしてあの時」という気持ちが頭をもたげてくることは多いけれど、私自身が幸せになることでその想いは浄化していくんじゃないかと思っている。
子どもは「信頼できて安心できる人と」「否定されず」「安全に暮らす」ことができていれば、それほど心配な育ち方はしないと感じる。
必要なのは「どんな時でも、どんな状態でも、私はお前の味方だよ」っていうメッセージなんだと思う。