親切な暗殺|毎週ショートショートnote
深更、城の奥深くの主の寝室
「誰じゃ?」
「暗殺者でございます」
「暗殺者とな?」
「あなた様を暗殺するために忍んで参りました」
「そんなことを儂に伝えて良いのか」
「もうすぐお亡くなりになるのですから」
「親切な暗殺者じゃのう」
「痛み入ります」
「何ぞ褒美を取らそうか」
「それは過分な申されよう。それにお命を頂戴するのですからこれ以上の褒美はありますまい」
「なら一つ聞いて良いか」
「何なりと」
「誰の差し金か」
「この世にお心を残されても困りますので、それは申さずにおきましょう」
「そなたの言でおおよその見当はついたがな」
「惑わすための虚言かもしれませぬぞ」
「何やら殺されるという気がせぬな」
「緊迫感が足りませぬか」
「そうよ、それ」
「それでは剣先を首筋に当てましょうぞ」
「痛ッ」
「カァ~ット」
「監督すみません」
「アキちゃんここワンカメの長回しだから頼むよ」
「はい」
「それじゃ、もう一回行こうか」
「シーン82 テイク4」
「よーい スタート」
(410文字)
今週も参加させていただきます。
たらはかに様 よろしくお願いいたします。
暗殺から想起される暗い話にはしたくなかったんです。
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