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小人の旅だより(6) ボルツァーノのパークホテル ラウリン
ボルツァーノ高山地帯へのイタリアからの登り口にある、人口11万人の町です。
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この地方は1919年までオーストリア・ハンガリー帝国の領土で、パークホテル ラウリンが建てられた1910年当時は、まだオーストリア・ハンガリー帝国領だったわけで、ドイツ語圏だったのです。(今でも、50%以上がドイツ語母語話だとのことです。)このホテルが建てられてすぐに、オーストリア皇室家族やドイツの王侯貴族宿泊客としてやって来たそうです。1937年にはイタリア国王ヴィットーリオ・エマヌエーレも逗留したという記録も残っています。現在では、ダライラマ、アンゲラ・メルケル前ドイツ首相が宿泊したと、ホテルのサイトには書いてあります。
ホテルは大聖堂と駅の間にあり、非常に便利なのにも関わらず、煩くなく、素晴らしい立地です。
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エントランスホールは天井が高く、多くの宿泊客が移動する朝の時間でも快適です。フロントのスタッフは、皆とても感じがよく、何を聞いても説明の手際がよく、本当に良くトレーニングされていると感じました。歴史的に格調高いホテルなのに、お高くとまったところがなく、気持ちのいい対応をしてくれます。
1階は、入って左がバーで、右がレストランになっています。バーの上の方には、ラウリン王の伝説にまつわるフレスコ画が描かれています。
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レストランは目を見張るようなクラシックな空間ですが、明るい壁の色や白い籐椅子で軽やかさを演出しています。夏の夜は広大な庭にあるレストランで食事をすることになっているので、館内のレストランは朝食の時に堪能できル様になっています。朝食バイキングには、イタリアのコルネットやビスケット、ドイツ語圏の朝食でお馴染みのハムや卵、とりどりのジュース、スイスのミューズリや、果物もあり、その豊富さたるや選ぶのに困るほどです。
さぁ、部屋に行ってみよう、と思ってエレベーターを探すと、スゴイのが。艶のある明るい色の木、緑の皮張りの長椅子。このエレベーターは、スタイルに拘りのあるウェス・アンダーソンの映画「ブダペストホテル」の撮影に使われたことがあるというのも納得です。
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それぞれの部屋には、趣味のいい家具がしつらえてあります。このホテル専属の家具職人のヘルベルト・シュロットさんとその息子さんが、デザイナーによる家具の絵を形に起こして家具を新調したり、古い家具や外の木製鎧戸を丁寧に修復したりしているのだそうです。家具も、古い鎧戸も、どれも手入れが行き届いていて、古いがゆえの煤けた侘しさなどは微塵もありません。ホテルができた当時は無かったに違いない空調も、目立たないように上手く設置してあり、快適な温度になっていました。
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浴室を開けて、あっ!と驚きました。これまでイタリアを随分旅行して来ましたが、大理石模様の迫力をここまで前面に出した浴室って初めてお目にかかりました。
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庭には、ホテルの名前になっているラウリン王の伝説に因んで薔薇園が広がっています。ラウリン王は叙事詩「ニーベルンゲンの歌」に出てくる小人の王なのですが、よその王家の娘を誘拐したときに、兵士たちに追撃されて、投獄されてしまいます。自分が見つかってしまったのは、自分の薔薇園があまりに美しかったからだ、と八つ当たりして、昼は峻厳な山にし、呪いをかけそびれた朝夕の一瞬だけは山頂が薔薇色になる、という伝説があります。伝説の山々がローゼンガルテン(薔薇の園という意味 イタリア語ではカティナッチョ山群という)という連山で、ボルツァーノから足を伸ばしてハイキングに行ける距離にあり、多くのハイカーたちを惹きつけているのです。
このホテルが非常に快適なのは、伝統ある格調高さが重苦しいものになっていなくて、フロントのフレンドリーな対応にしても、部屋のモダンにしても、軽さが心地よいバランスで取り入れられているからなのでしょう。そして、画一的なホテルチェーンではあり得ない、地元の伝説を取り入れ、庭や内装に反映させるといった粋な計らいが随所に見られ、一つ一つ見つけて行くのがとても楽しいのです。
旅行中に一度は良いホテルに泊まりたい、という希望は予想を上回り、大満足でした。何度も行きたくなります。