キミが存在しないラブコメ 第75話(終)
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正しい歴史の布佐良月子にあたる人物は、僕が中退した伝播高校に入学、卒業したあとは同じ高校に通っていた生徒と結婚したらしい。
正しい歴史の筬屋真海奈にあたる人物は、僕が中退した伝播高校を卒業後、専門学校に通い、彼氏をつくったらしい。
正しい歴史の火花萌瑠にあたる人物は、僕が再入学した宝玉学院高校の特進クラスに在籍していた。I県で一番有名な大学へ進学して、ある男の追っかけをしているらしい。
正しい歴史の綿里未雪にあたる人物は、N県の商業高校を卒業して美容師の専門学校へ通い、彼氏をつくり、おそらく、その彼氏と結婚した。
正しい歴史の椎菜爽芽にあたる人物は、僕が入院中のときに出会った。今はネコちゃんと仲良く暮らしている。
正しい歴史の矢林御琴にあたる人物は、宝玉学院高校の特進クラスに在籍していた。T都近辺の大学に進学して、同じ高校の同級生と恋愛関係になる。
そして、正しい歴史の神憑桜舞にあたる人物は、僕の近くにいる人物だ。
彼女たちは存在しないけど、モデルはいるのだ。
唯一、心残りなのは僕は僕を正直に生きれなかったことだ。
他人に流され、自分の軸がないがゆえに、どうしても自分というものがわからない。
だから、僕は、どこにいるか、わからないヒロインである《キミ》を求めている。
その妄想は現実の世界では具現化することはないが、いずれ出会う《キミ》を探している。
《キミ》は、どこかに存在しているはずだ。
だけど、同じ時代かはわからない。
運命というものが存在するのなら、どこかで出会っているはずだ。
《キミ》は、どこにいるんだい?
もしかして、もしかしなくても神憑桜舞のことを《キミ》だと思うかもしれないけど、神憑桜舞は《MY》だ。
だから僕のヒロインであるとするならば、それは――。
「《YOU》だ」
神憑葉羽。
それが僕の妄想のなかでつくられたヒロインだ。
どこかで出会う葉羽さんを求めて、僕は探し続ける。
この時代では出会わなくても、きっと生まれ変わった世界のどこかにいるはずだ。
そんな思いが、あったとしても……その願いは叶わないかもしれない。
けど、僕にできることは生き続けることだ。
生きていたら、どこかで会えるかもしれない。
だったら、僕にできることは矛盾した、この物語を書き続けるのみだ。
書いて書いて書き続けるなかで、どこかで出会うかもしれない《YOU》――《キミ》を僕は求め続ける。
《MY》――《僕の》……だけじゃ少し重いから。
どこかの現実にいる葉羽さんを僕は探している。
そして未来の神話に残るのだ。
ミラ・ウィースとヨウエル・ウィースが、どこかの時代に存在していたって。
そんな妄想を僕は今、書き終えた。
僕には、たったひとりの妹が確かに僕の妄想の世界では存在していたんだ。
《彼女》との《存在しない物語》は僕の妄想の世界では存在していたってこと。
じゃあ、また、どこかで会えることを楽しみにしているよ。
《葉羽》が存在しないラブコメは、まだ始まったばかりだからさ――。