魔法使いの目玉焼き(短編小説)
*
魔法使いは目のように輝く目玉焼きを作り、食卓に運んだ。
そして、その目玉焼きをかじりはじめた。
「おいしい」と魔法使いはつぶやいた。「食べてみなよ」
「ボクが?」
「うん」
魔法使いはうなずき、そしてボクはそれを食べた。
その目のような目玉焼きは、ボクが今まで食べたどんなものよりもおいしかった。
魔法使いの作る料理はすべてこんなにもおいしいのかと思った。
「…………」
でも、魔法使いはなにも言わなかった。
ただ黙って食事を続けながら、ボクのことを見ていた。
だからボクもなにも言わずに食事をした。
やがて食事が終わった。
そんな夢から覚めたあと、いつの間にかボクは、ボクの目がなくなっていることに気がついたのだった。