キミが存在しないラブコメ 第26話

《機関》とは、いったい、どういうものだろうか?

火花萌瑠が《機関》の人間であることが僕に、どのような影響を与えるのだろうか?

「《機関》っていうのは、この伝播町……いや、S市を管理するために秘匿的に存在する秘密結社ということなのです」

「その《機関》に所属する萌瑠ちゃんは、そのことを僕に言ってもいいのか?」

「ええ、あたしは末端なので。それゆえに、あなたの情報を知りたいと思っているのです」

「それだったら、恋人になる必要なくない?」

「あ、確かに。でも、反応がかわいらしいので付き合ってあげてもいいですよ。どうでしたか? あたしの乳は、いわゆるロリコンの方に好評だと思うのですが!」

「僕はロリコンじゃない!」

結局、火花萌瑠という人間は僕に好意を持っているわけではないのか……はあ。

「――その話、真海奈が聞いても大丈夫なのか?」

「大丈夫です! 真海奈さんは聞いていないので」

「聞いていない?」

隣の真海奈を見る。

なるほど。意識が《こっち》にないってことか。

「これは《機関》の人間が宿す能力みたいなものです。今、この瞬間の会話を共有できている人たちは神憑先輩と
、あたししかいない」

「僕と萌瑠以外の時が止まったということか」

「まあ、そういうことです。今回、この会話をセッティングするためにデートという名目で活動させてもらいました」

「そうか。僕は僕の知るすべてをキミに話さなくてはいけないってことね」

「そうです。すべてを話さなければ、永遠に時は止まったままですよ」

「わかった」

僕は綿里さんと、ある病院にいた椎菜さんの集まりについて話していく。

僕の知る、すべての情報を暴露していった。

「――なるほど。よくわかりました」

「これで満足か?」

「ああ……まあ、その情報は操作されているとしか思えませんね。もっと深い、奥底の話はできませんか?」

「悪いけど、僕が知るのは、そんなことくらいだよ。さあ、早く時間を進めてくれ」

「《機関》によって《オーバーライト上書き》された、ということですか……」

「オーバーライト? なに、それ?」

「いえ、こっちの話です」

「満足した?」

「半分くらいですね」

「僕は凡人だよ。時間を進めて」

「わかりました」

時が動いた。

「お待たせしました! リブステーキとごはんとサラダのドリンクバーのセットに、ドリアとサラダとドリンクバーのセットふたつですね! ごゆっくりどうぞ!」

「今日は、あたしのおごりです! じゃんじゃん食べてください!」

「萌瑠ちゃん、ありがとう!」

「じゃあ……食べていくか」

心のなかで「せーの」という感じで。

『いただきます!』

ドリアは熱かった。少しやけどした。

時は着実に進んでいく。

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