瑠璃という名の少女 第15話


翌朝、目が覚めると隣では瑠璃が眠っていた。
いつもの部屋だった。
――あれは夢だったのか……?
そう思いながら起き上がろうとしたところで違和感を感じたので見てみると、何故か全裸になっていたので驚いたもののすぐに昨夜の出来事を思い出した俺は顔から火が出るほど恥ずかしかったのだが、それと同時に喜びを感じていたのも事実だった。なぜなら、今までで一番幸せな気分だったからである。そして、これからは何があっても彼女と離れたくないという気持ちが強くなっていったのだ。とはいえ、いつまでもここにいるわけにもいかないので身支度を整えてから会社に向かうことにした。その道中で俺はあることを考えていた。それは、これからどうやって瑠璃のことを幸せにしていくべきかということだったが、答えは見つからなかったのでひとまず保留することにした。そうこうしているうちに会社の近くまでやってきたので気持ちを切り替えた俺は気合を入れ直してから中に入っていったのだった――。

仕事で楽しいと思ったことはない。
だけど、この生活を維持するためには、やっぱり働かなくてはいけないのだ。
それに、まだ瑠璃に恩返しできていないのだから……。

ある日のこと、いつものように会社から帰宅すると瑠璃が出迎えてくれた。
「おかえりなさい!」
「ただいま」
「お仕事お疲れ様です♪」
労ってくれる彼女に癒されながら一緒にリビングへ向かうとテーブルの上にはたくさんの料理が並んでいるのが見えた。それを見て驚いていると、彼女は照れ臭そうに笑いながら言った。
「玻璃さんのために頑張ったんですよ!」
「そうなのか? ありがとな」
お礼を言いながら頭を撫でると嬉しそうに目を細める瑠璃が可愛くて仕方なかったのでしばらく続けていると、ふと気になったことがあったので尋ねてみた。
「今日も料理が豪華だけど、どうして?」
その質問に彼女は笑顔のまま答えた。
「それはですね、もうすぐ結婚記念日
なので気合いを入れてみました♪」
「……え?」
突然のことに呆然としてしまった俺だったが、それを気にすることなく彼女は続けた。
「もしかして、あれから、もう一年が経ったのか? ……って感じですかね?」
その一言を聞いてようやく我に返った俺は慌てて聞き返した。
「ちょ、ちょっと待って! 今、なんて言った!?」
すると、瑠璃は少し不思議そうな顔をしながら首を傾げながら言ってきた。
「あれ? 覚えてないんですか? ほら、去年の今頃に婚姻届を提出したじゃないですか♪」
それを聞いて思い出した。そういえばそうだった……あのときは本当に大変だったなぁと思い出しながら遠い目をしていると、突然手を握られた。驚いて顔を上げると、そこには満面の笑みを浮かべた瑠璃の姿があった。そんな彼女の様子を見て嫌な予感を覚えながらも恐る恐る尋ねた。
「えっと……どうしたのかな?」
それに対して彼女は満面の笑みを浮かべたまま言った。
「これからも末永くよろしくお願いしますね♪」
その言葉に何も言えずにいると、そのまま寝室へと連れていかれた挙げ句、押し倒されてしまった。それから服を脱がされて一糸纏わぬ姿になったあと、互いに見つめ合ったあとでキスをした後、今度は首筋を舐められたのでビクッと体を震わせていると、それに気づいたらしい彼女はクスリと笑った後で再びキスしてきた。その後、お互いに舌を絡め合いながら唾液を交換し合っているうちに頭がボーッとしてきて何も考えられなくなった頃になってようやく解放されたことで息を整えている俺を他所に彼女は自分の服を脱ぎ始めた。その光景をぼんやりと眺めていた俺は無意識のうちに生唾を飲み込んでいた。そんな俺の視線に気付いたらしい彼女は妖艶な笑みを浮かべながら手招きしてきた。それを見た瞬間に理性が崩れ去った俺は彼女の元へと歩み寄っていき、そのまま抱き着くようにして押し倒したのだった。

翌朝、目を覚ました直後に感じたのは全身の痛みだった。特に腰の辺りが酷いことになっているようで立ち上がることすらままならなかったのだが、その原因については考えるまでもなかった。というのも、隣で眠っている瑠璃の姿が目に入ってきたからだ。彼女は幸せそうな表情を浮かべており、それを見ているだけで嬉しくなった俺はそっと頭を撫でてやった。
「ん……んん……」
すると、微かに声を漏らした後で寝返りを打ったので慌てて手を離すと何事もなかったかのように寝息を立て始めるのを見てホッとした俺は起こさないように気をつけながらベッドから降りたところで床に散らばっている衣服が目に入った。それを見て昨夜のことを思い出した俺は赤面しつつ頭を抱えたくなったのだが、何とか堪えて服を着ると瑠璃の体を揺すりながら声をかけた。
「おーい! もう朝だぞー!」
「……んー?」
眠そうに瞼を擦りながら起き上がった彼女は寝ぼけ眼で俺のことを見ると微笑んできた。その様子を見ていたら愛おしさが込み上げてきたので思わず抱きしめそうになったがなんとか我慢した俺は誤魔化すように言った。
「おはよう」
それを聞いた瑠璃は笑顔で返してきた。
「おはようございます♪」
彼女の笑顔に俺は見惚れてしまっていたのだが、すぐに我に返ると言った。
「とりあえず、シャワー浴びてきなよ。その間に朝食の準備をしておくからさ」
「わかりました」
素直に頷いて浴室へと向かう彼女を見送ると着替えを済ませてからキッチンへ向かった。そして、冷蔵庫の中から食材を取り出して調理を始めた。といっても、簡単なものしか作れないので大したものは作れなかったが、それでも瑠璃は喜んでくれたのだった。

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