義肢のヒルコ 第25話
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「どういうこともなにも、そのままの意味よ。三百年前に広輪京ができ、楔御柱が設置されるより前のころ、善神と悪神の二分化がおこなわれたの。善神は、この日本に残り、広輪京を中心に国を栄えさせた。対に悪神は海の向こう側へと葦舟に乗せて流された。そのときに顕現し、最初に誕生した悪神がヒルコと呼ばれたの。かつて存在した日本国の歴史書――古代事成立記には、たった一行しか書かれていない存在だったけどね」
青花は、すっとした顔で。
「でも、不思議ね。こうして巡り巡って三百年後のあたしたちに姿を見せるなんて……なんて愚かな存在なのかしら――」
「――青花お姉ちゃん……!?」
青花の手には緑色の光を放つ珠が握られていた。
「――轟けっ! 青龍魂っ!!」
青花の目は覚醒するように緑色に染まった。
「では、お二人……覚悟っ!」
手に握られた珠には稲光が見える。青花は能力を使う。
「はじけろっ! 青龍之雷嵐っ!!」
「吸収しろっ! 千変万化っ!」
俺たちの間には雷の嵐が轟いたが、すぐに俺が全部を吸収した。
「これ以上、続けても無駄だ。俺が全部を吸収するからな」
「無駄かどうかは、あなたが決めることではないのですよ?」
「なに?」
「来なさい、青花隊っ!」
巫女装束を着た少女たちが俺たちの前に現れた。木の棒の先に青龍魂珠を装着した武器を持って。
「唱えよ、青花隊」
『青龍之雷嵐』
複数の雷の嵐が巻き起こった。動きが乱れているため、すべてを吸収するには、それ相応の集中力が必要だ。
「ちっ!」
俺は逃げる選択をする。青葉ちゃんを連れて。
「青葉ちゃん、ちょっとごめんよ!」
「えっ、きゃあっ!」
俺は改変式自転車に青葉ちゃんを乗せて、ひたすら逃げた――。
「――これで済むと思うなよ、皆神蛭子」
彼女の眼光は鋭かった。
その眼光から逃れるために俺たちは彼女から、ひたすら離れていった。
ただ、この問題を解決するためには、葛原青花をなんとかしなければならない。
この展開を終わらせるために俺は、ある場所を目標に移動するのであった――。