瑠璃という名の少女 第13話


その後、二人で市役所に行き、無事に婚姻届を提出した俺たちはそのまま家へと帰ってきた。その際、受付の人に微笑ましいものを見るような目で見られたせいで恥ずかしさのあまり死にたくなったがなんとか耐えることに成功した俺は偉いと思う。というか、よく耐えたと自分を褒めてやりたい気分だ。そんなことを考えていると、不意に瑠璃が声をかけてきた。
「あの……これからよろしくお願いしますね♪」
そう言って微笑む彼女の姿を見て改めて実感したことがあった。
やはり自分は彼女のことが好きなのだと。
これから先の人生でどんなことが起こるのか予想はできないけれど、それでも彼女がそばにいてくれるだけで幸せになれる気がした。だからこそ、これからもずっと一緒にいたいと思った俺は自然と口にしていた。
「……こちらこそよろしくな」
そうして互いに見つめ合った後で笑い合った。

あれからしばらく経ったある日のこと、やっと就職できた仕事先で上司に怒鳴られながらも一生懸命働いていたらすっかり遅くなってしまった。今日は残業になったため、いつもより遅くなったせいか帰り道を歩いている人も少なくて静かだった。そのせいで余計に寂しく感じたものの、だからと言ってどうしようもないので歩くしかなかった。そして、ようやく自宅(瑠璃の家)に到着したところで玄関を開けて中に入ると、そこにはエプロン姿の瑠璃が立っていた。そんな彼女の姿を見ていると不思議と心が安らいでいくのを感じたが、それと同時に空腹感を覚えたことで腹が鳴ったので思わず赤面してしまった。だが、幸いにも彼女に聞かれることはなかったようなので安心したのだが、そこであることに気がついた。それは、テーブルの上に料理が並んでいるということだ。しかも、明らかに二人分あることから察するに、彼女も一緒に食べるつもりなのだろうと思った俺は尋ねた。
「もしかして、待っててくれたのか?」
「だって、一人で食べるより二人で食べた方が美味しいですから」
「そっか、ありがとな」
「いえいえ、どういたしまして」
笑顔で応える彼女に対して愛おしさを感じた俺は無意識に抱きしめてしまった。すると、彼女は一瞬驚いた様子だったがすぐに受け入れてくれて背中に手を回してくれた。それからしばらくの間抱き合っていたのだが、やがてどちらからともなく離れることになった。そこでふと時計を見ると既に夜の七時を回っていたので夕食を食べることにした俺はテーブルの前に座った。その直後、向かい側に座っている瑠璃が言った。
「それでは食べましょうか♪」
「そうだな」
その言葉を合図にして食べ始めたのだが、これがまた美味しくてあっという間に平らげてしまった。その後も他愛のない会話をしながら過ごした後、入浴を済ませてから寝室に向かった後で横になっていると突然後ろから抱きしめられたので驚いて振り返ると、そこには瑠璃の姿があった。どうしたのかと思って尋ねると、彼女は恥ずかしそうに顔を赤らめながら言った。
「えっと……その……今夜は一緒に寝たいなぁと思って……」
その言葉にドキッとした俺だったが、それを悟られないように平静を装って答えた。
「別に構わないぞ」
俺がそう答えると嬉しそうに微笑んだあとで抱きついてきた彼女をそっと抱きしめ返すと、そのまま眠りについたのだった。

翌朝、目が覚めると目の前には瑠璃の顔があった。どうやら昨夜のことは夢ではなかったようだ。その証拠に俺の胸に顔を埋めるようにして眠っている彼女の顔はとても幸せそうに見えた。そんなかわいい寝顔を眺めているうちになんだか幸せな気分になってきた俺は無意識のうちに頭を撫でていたらしく、それに気付いたらしい彼女が目を覚ました。そして、寝ぼけ眼で俺の顔を見つめながら言った。
「……おはようございます」
そんな彼女に向かって俺も挨拶を返すことにした。
「おはよう」
それだけ言うと再び目を閉じたので今度はこちらからキスしてみたところ、彼女は驚いたように目を見開いたあと頬を赤らめながらこちらを見つめてきた。その様子があまりにもかわいかったのでつい悪戯したくなった俺はもう一度キスをしてみた。すると、彼女は恥ずかしそうな表情を浮かべていたが抵抗する気はないようだったのでそのまま続けていると次第に目がトロンとしてきたので一旦中断することにした。それから呼吸を整えるために深呼吸している彼女を眺めていたのだが、少し落ち着いたところで話しかけられたので返事をした。
「あの……いきなりどうしたんですか?」
その質問に対してどう答えようか迷ったものの正直に話すことにした。
「なんか瑠璃の顔を見てたらしたくなっちゃったんだよ」
そう言うと、瑠璃は顔を真っ赤に染め上げてしまったのだが、その姿もまたかわいらしかったので見ているだけでも満足できそうだった。そんなことを思っていると不意に「玻璃さん」と呼ばれたので顔を上げるとキスをされた。突然のことに驚いた俺だったが、それ以上に嬉しさの方が勝っていたために喜んで受け入れることにした。それからしばらくの間、互いの唇を貪るように何度も繰り返しているとそれだけで頭がクラクラしてきて何も考えられなくなった俺は本能のままに行動することに決めたのだった。

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