瑠璃という名の少女 第16話


食事を終えて一息ついたところで時計を確認した俺はそろそろ出勤しなければならない時間だということに気付いて立ち上がった。それを見た瑠璃は慌てて立ち上がると引き止めるような仕草を見せてきたが、申し訳ないと思いつつも断った上で玄関へと向かった。靴を履いているときに後ろから声をかけられたので振り返ると、そこには今にも泣き出しそうな顔をした瑠璃が立っていた。それを見て心配になった俺は声をかけようとしたがその前に彼女が抱きついてきたので身動きが取れなくなってしまった。どうしたものかと悩んでいたら、不意に耳元で囁かれたのでドキッとしたが何とか平静を装って返事をした。
「……どうしたんだ?」
すると、彼女は顔を上げてから潤んだ瞳で見つめてきたかと思うと、次の瞬間には唇を重ねられていた。突然のことに驚いていると、しばらくしてからゆっくりと離れていった彼女の顔は真っ赤に染まっていたが、やがて意を決したように口を開いた。
「いっ、いってらっしゃい……!」
それだけ言うと俯いてしまったので、俺は微笑みながら頭を撫でながら言った。
「いってきます!」
寂しそうな瑠璃から離れていくと会社に向かって歩き始めたのだが、途中で振り返ってみると彼女はまだその場に立っていたので手を振ってみたら振り返してくれた。その姿を見た俺は幸せな気持ちで満たされていくのを感じたのだった。

仕事を終えた俺が帰宅してみると家の中から良い匂いが漂ってきたので期待しながら扉を開けるとエプロン姿の瑠璃が出迎えてくれた。
「お帰りなさい♪」
「ただいま」
そう返すと彼女は笑顔を浮かべたあとでご飯にしますか? それとも先にお風呂に入りますかと聞いてきたので少し考えた後で答えた。
「そうだな……まずは飯にしようかな」
「分かりました♪ すぐに準備しますね♪」
そう言ってパタパタとスリッパの音を立てながらリビングへ向かっていく彼女を見送った後で部屋着に着替えてからソファに腰掛けた俺はテレビを見ながら時間を潰していた。それから暫くしてテーブルの上に料理が並べられたあと、二人で向かい合って座り手を合わせていただきますと言ってから食べ始めた。今日のメニューはオムライスだったのでスプーンを使って一口食べた瞬間、あまりの美味しさに感動してしまった。こんなに美味しい料理を作れるなんて本当に凄いと思った。そして、あっという間に平らげてしまったあとは風呂に入ることにした。

シャワーを浴び終えてからリビングに戻ると瑠璃はソファで本を読んでいた。その隣に座った俺は何気なく話しかけた。
「何を読んでいるんだ?」
すると、彼女は本の表紙を見せてきながら答えてくれた。
「これですか? これはですね……『恋する乙女』というタイトルの小説ですよ」
それを聞いて納得した。なぜなら、表紙のイラストが少女漫画っぽい感じだったからだ。いわゆる女性向けのライトノベルというやつか。しかし、なぜそんなものを読んでいるのか気になった俺は質問してみた。
「なんで小説なんか読んでるんだ?」
すると、彼女は苦笑しながら答えた。
「実は……私も読んだことがなかったので、どんな内容なのか気になっていたんです」
どうやら、興味があって購入したものの内容が分からないため不安だったらしい。そこで試しに読んでみようと思い立ち読みをしていたところ面白かったらしく一気に最後まで読んでしまったのだという。
「なるほど……面白かったかい?」その問いに彼女は満面の笑みを浮かべながら頷いた。
「はい! とても面白かったです!」
その返事を聞いて安心した俺は更に尋ねた。
「ちなみに、どの辺が気に入ったのかな?」
すると、彼女は考え込んだあとで恥ずかしそうにしながら教えてくれた。
「……そうですね……主人公の女の子がある男の子と出会ったことで少しずつ変わっていく物語なんですけど、最後には結ばれるところが良かったと思います」
それを聞いて俺も同じ意見だった。確かにハッピーエンドで終わるというのは素晴らしいことだと思う。だからこそ、この話は聞いていて好きだと感じた。とはいえ、それはあくまでも、そういう女性向けのものを読んでいない俺の主観でしかないわけで、読者によって受け取り方は違うと思うので、あまり参考にはならないだろうと思っていた。だから、これ以上は何も言わずに黙っておくことにした。まあ、でも、今度こっそり読んでみようかな……『恋する乙女』という女性向けライトノベルを。

夕食を食べ終えた俺たちは後片付けを終えると一緒に入浴することになった。脱衣所で服を脱いでいるときにふと気付いたことがあったので聞いてみることにした。
「なあ……どうして、急に一緒に入りたいなんて言ったんだ?」
すると、瑠璃は照れながら言ってきた。
「だって、玻璃さんと一緒に居られる時間が少なくなったじゃないですか……!」
それが寂しかったのだと告げる彼女に胸が熱くなるのを感じながら優しく抱きしめるとそのままキスをした。最初は驚いていたようだが、すぐに受け入れてくれて舌を絡め合う濃厚なディープキスを交わした後で唇を離した。そして、お互いに見つめ合ったあとにもう一度軽くキスをしてから離れると瑠璃は言った。
「早く入りましょう!」
その言葉に頷くと浴室に入ったのだが、その際に背後から抱きつかれてしまい身動きが取れなくなってしまった。そのことに戸惑っていると彼女は俺の背中に胸を押し当てるようにして密着してきた。それにより柔らかな感触が伝わってくると興奮してしまいそうになるが何とか我慢して離れようとしたのだが、それを拒むように腕を絡めてきたので動けなくなってしまった。そのため、仕方なくされるがままになっていると、今度は前に手を伸ばしてきて股間に触れてきた。その瞬間、ビクッと体を震わせた俺を見た彼女はクスリと笑うと指先で撫で回し始めた。それに反応するように硬くなっていくのを自覚していると、不意に耳元で囁かれた。
「もう大きくなってきましたね……」
その一言を聞いて恥ずかしさを覚えた俺は顔を背けようとしたが顎を掴まれて固定されてしまった上に正面を向くように動かされたせいで目が合ってしまった。そのときに見えた瑠璃の表情は蕩けきっていて完全に発情している様子だった。それを見ているうちに我慢出来なくなった俺は彼女のことを押し倒していた。すると、彼女も抵抗する素振りすら見せずに自分から足を開いていく。そこから先は、俺の脳内フォルダに保存することにした。

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