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小さな旅・思い立つ旅|おいしい発酵ツーリズム[ワイナリー・ブリュワリー・ディスティラリー]篇
やっぱり「小さな旅」がしたい。
昔からそこに在る自然に接して、その土地の食材でつくられたものを食べ、地元の作家の手の温もりが感じられるものに触れる。
観光地として整備された非日常空間のおもてなしではなく、日常の暮らしの中にスッとお邪魔させてもらう感じ。
行き先や宿泊先を決めて、長時間行動する旅行ではなく、いつもの日常の延長線上にある、「小さな旅」。
それが、最高の贅沢。
日本発酵紀行
「発酵デザイナー」という肩書きで活動している小倉ヒラクさんの著書のタイトルにもなっているいい言葉。
微生物の視点から、風土に根ざした暮らしを見つめる『発酵の旅』
東西南北津々浦々で受け継がれてきた発酵文化を通して、日本の食文化、郷土文化の多様性を体感する。
海、山、川に離島。
人口わずか数千人の小さな村に世界にも類例のないような特殊な発酵文化が継承されていることもあるそうで。
仕込みに使う清水
腐敗を防ぐ淀みのない空気
微生物の棲みつく古い建物
微生物にいい環境は、人間にもいい環境。
そんなあたりまえのことに気づきを与えてくれる発酵の旅。
おいしい発酵ツーリズム[ワイナリー・ブリュワリー・ディスティラリー]篇
発酵といっても、幅はとても広い。
味噌、醤油、酢、納豆、ぬか漬け、パン、ヨーグルト、くさや、なれずし、鰹節、紅茶、などなど数え上げればキリがない。
と、いうことで今回は日本酒、ワイン、ビール、ウイスキーといったお酒にしぼったおいしい発酵ツーリズム。
岡山のWinery /ワイナリー、奈良と兵庫のBrewery /ブリュワリー、大阪のDistillery/ディスティラリー。
domaine tetta 岡山/ワイン
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標高400メートルの小高い山の頂上に広がるぶどう畑とワイナリーレストラン。
ぶどう畑の中にポツンとある建物の設計はWonderwallの片山正通さん。醸造所内にはダグラス・ゴードンとジョナサン・モンクによるネオン管の作品「PARIS BAR」が飾られる。
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東京ドーム2つ分の耕作放棄地をワイナリーに再生したストーリも、レストランから眺められる一面のぶどう畑も、そして誠実なワインつくりも、すべてが最高の場所。
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天然酵母による自然な発酵と重力を用いたグラビティフローシステムで醸造されたワインはもちろんのこと、そこで売っているぶどうもとてもおいしい。
何度でも行きたい、最高の場所。
グッドウルフ麦酒 奈良/ビール
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吉野の山の中。
こんなところに本当にブルワリーがあるの?と心配にあるほど山深い場所。最後は車ですら近づけず、車を停めてヤギのいる田んぼの畦道を歩いてたどり着く。
ニホンオオカミが日本で最後に東吉野で確認されたとされることにあやかり、「グットウルフ」と命名したとのこと。
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吉野杉の爽やかな香りや、地元のゆずを使用したビールはもちろんいいとして、なにより最高なのはこの山間の風景そのもの。
夕方になると、周りの民家から薪の煙が立ち登る。
聞くと、この集落はお風呂を薪で炊く文化が残っているとのこと。集落一体から薪のいい匂いが立ち込める夕方の光景は、もう「日本昔話の世界」そのもの。
ten 兵庫/日本酒
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土地の個性を活かす「一圃一酒(いちぼいっしゅ)」
ひとつの田圃からできた酒米で、ひとつの日本酒をつくる。
普通、酒米農家は自分が作ったお米が、どの蔵のどの酒に使われているのかを知ることはない。なので、日本酒のラベルをみても、酒米の生産者名が記載されていることはない。
ワインではあたりまえにある、畑とワインの一対一の関係を、日本酒でも実現させたのがこの「SEN」。
SENのコンセプトショップ「ten」もとてもいい。設計はやぐゆぐ道具店
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外観は普通のスレートの工場のような佇まいで、中に入ると、大きま窓から絵画のように切り取られた田園風景を見ることができる。
酒屋にあるような冷蔵ケースも見せない。
什器もスピーカーも素地のまま。
土地の風景、土地の素材、土地の品が際立つ凛とした佇まいの店舗。
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サントリー山﨑蒸溜所 大阪/ウイスキー
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日本初のモルトウイスキー蒸留所。
説明するまでもなく有名なところ。
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近くには、安藤忠雄の大山崎山荘美術館に、千利休の妙喜庵待庵に、藤井藤井厚二の聴竹居もあるので、ハイキングがてらまとめて巡るにはちょうどいい場所。