小さな旅・思い立つ旅|五感を魅了する、奥深いワイナリーで昼食を[SAYS FARM、domaine tetta、奥出雲葡萄園]
恋に焦がれて鳴く蝉よりも
鳴かぬ蛍が身を焦がす
蝉と蛍。とにも成虫になってから、7日程度しか生きることができない儚い生命。恋に焦がれて懸命に鳴く蝉と、静かな灯火で生を謳歌する蛍。
声に出さずとも、想いは深い
大声で相手を振り向かせるのではなく、自分自身の努力で、相手の心を掴む。北風と太陽。そんな深層心理を、蝉と蛍で描写する。室町から広く愛唱される、とても風情のあるいい歌。
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ということで、ワインにありがち、蝉のようなウンチク語りはもういらない。蛍のような静かな灯火で人々を魅了する、奥深いワイナリーでもどうでしょう、という話。
土地の空気感を肌で感じ、ワインと共に食事もできるところ。五感を魅了する、ローカルワイナリーで昼食を。
SAYS FARM|富山氷見
富山湾と立山連峰をうっすら望むワイナリー
氷見の海を眺めながら、丘へ登る細い道を進んでいくと突如現れるブドウ畑と小さな建物。100%自社栽培・醸造にこだわり、約7haに18,000本の欧州種系の葡萄が広がる。さらに、敷地内には野菜畑や鶏やヤギの小屋に、レストランに宿もある。
豊かな海や山は“富山の天然の冷蔵庫”
レストランで使うのは、基本的にファーム内の食材に、富山湾の魚。そして富山県産の肉類。目の前にあるものでつくられた料理と、そこでつくられたワイン。そして、富山湾の先には、うっすらと立山連峰が見える。
1組限定のゲストハウス、暮らしの道具や農場産の加工食品などを販売するショップもあり、最高のドメーヌ。
domaine tetta|岡山新見
日本で極めて稀な石灰岩土壌が育む極上ワイン
ぶどう畑の中にポツンとある建物の設計はWonderwallの片山正通さん。醸造所内にはダグラス・ゴードンとジョナサン・モンクによるネオン管の作品「PARIS BAR」が飾られる。
東京ドーム2つ分の耕作放棄地をワイナリーに再生したストーリも、レストランから眺められる一面のぶどう畑も、そして誠実なワインつくりも、すべてが最高の場所。
天然酵母による自然な発酵と、重力を用いたグラビティフローシステムで醸造されたワインはもちろんのこと、そこで売っているぶどうも、最高においしい。
フランスの銘醸地に似た石灰岩土壌の畑はおよろ8ha。1万8000本のぶどう畑には、生食用のぶどうもある。ワインに合う味わい深いランチとともに、新鮮なぶどうも添えられ、もう最高。
奥出雲葡萄園|島根雲南
出雲神話と共に歩んできた土地の葡萄づくり
島根県の山奥、広島との県境に位置するワイナリー。日本に古来から存在する山ブドウの可能性を信じて、その土地に合うぶどうを栽培し、ワインをつくる。
造りたいワインありきで、そこから逆算して栽培を行うのではなく、その土地に最も合うブドウ品種を見つけ、おおらかな気持ちで素直に育てる。
山間にあるため、葡萄の芽が凍ってしまうこともあるという。そんなときは、夜中に火を焚いて、葡萄の木を温めてる手間のかけよう。
葡萄畑を見下ろせるガーデンカフェでは、木次乳業のチーズ、地元で取れる小麦を使用したピッツアを堪能する。
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