小さな旅・思い立つ旅|野生的で理性的 巨匠F.L.ライトの建築旅[帝国ホテル、山邑邸、自由学園明日館]
野生的な部分と理性的な部分
そのふたつが感性を通して一貫しており
嫌味のない品のよさ
米津玄師がKing Gnuの常田大希に対して言ったことなんだけど、すごくいい表現だなぁと。テレビでさらっと流れたときに、慌てて書き留めて、メモとして残していた言葉。
野生的と理性的、相反する意味を感性という表現で束ねて、最後に品で包み込む。コトバのチョイスも、テキスト化したときの語呂もよく、常田の魅力を一瞬で伝えながら、米津のコトバのセンスまで一瞬で伝わる凄さ。
フランク・ロイド・ライトは常田大希
米津のコトバを聞いた時に、建築家で言えばF.L.ライトかなぁ、とふと思う。国籍も年齢も全然違うんだけど、野生的で理性的、ふたつが感性を通して一貫し、品の良さが滲み出ている建築。
ということで、20世紀を代表する建築家、フランク・ロイド・ライトの建築でもどうでしょう、という話。100年も前にできた建築なんだけど、日本国内でも体感できるので、ぜひ。
様式と自然素材と装飾と
20世紀を代表するアメリカの建築家、フランク・ロイド・ライト。ル・コルビュジエ、ミース・ファン・デル・ローエとともに『近代建築の三大巨匠』と呼ばれる。
アメリカを中心に数多くの建築作品を世に残し、そのうち8つが世界遺産にも登録されている。そして、現存する建築はアメリカとカナダ以外では唯一日本だけ。
様式と自然素材と装飾の魅力が詰まるライト建築
産業革命以降、建築は様式と自然素材と装飾を捨ててきた。ギリシャ神殿のような列柱もゴシック建築のような時代を表す建築スタイルも使わない。鉄やガラスやコンクリートといった工業化された材料を使い、機能性や合理性を重視した建築が追い求められてきた。
それに対して、ライトの建築は様式と素材と装飾の魅力に溢れている。水平に伸びやかな庇が特徴的なプレーリースタイル、大谷石とレンガによる柔らかく温かい風合い、自然のカタチを抽象化した幾何学模様の装飾。有機的建築。近代以降の建築が捨ててきたものが、すべてある。
2036年に完成が予定される帝国ホテル。その設計を手がける田根さんの言葉は、ライトの魅力を簡潔に言い表している。
マヤ文明を思わせる野生的な装飾に、ローカルな素材と自然環境の活用に100年前から取り組む理性的な部分。そのふたつが感性を通して一貫しており、嫌味のない品の良さを醸し出す。
21世紀のこれからの時代
F.L.ライトが建築の道標になる?
帝国ホテル|愛知
マヤ文明を思わせる装飾、大谷石の幾何学模様
日本のライト建築で一番有名かも。完成したのは1923年。奇しくも関東大震災当日のこと。震災には耐えたものの、それ以降の老朽化には抗えず、1967年に解体。残念ながら現在残っているのは一部のみ。
2036年に完成予定の田根さんによる新本館は、さてどうなるか?
山邑邸|兵庫
自然と一体化した建築
芦屋の自然豊かな丘の上にある。建築当初の姿をほぼ完全に残しているライトの住宅建築は、日本ではここだけ。後に淀川製鋼所が購入し、今はヨドコウ迎賓館と呼ばれる。
世界遺産の追加登録候補に挙げられている名建築
自由学園明日館|東京
プレーリースタイル(草原様式)を代表する建築
西池袋にある自由学園明日館は、1921年に建てられる。現在は国の重要文化財。校舎として使われたのは10年ちょっと。その後も大切に守られ、現在は結婚式やイベントなどに広く用いられている。
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