面白い本・好きな本|津々浦々を転々と[旅・観光・ホテル]篇
“津々浦々”って海岸線のことなのか
“津々浦々”って、全国各地のいたるところ、という意味で使っていたのに、まさか津も浦も海辺のことだったなんて。。でも、自然豊かな海に囲まれる日本っぽくていい言葉だなぁと。
昔からまったく変わらない暮らしを続ける小さな漁村や入江の集落に、ふと出会う心地よさ。ついつい足を伸ばして海岸線をドライブしてしまう。
ただ淡々と暮らす美しさ
そんな暮らしに憧れながらも、都会暮らしはやめられない。隣の芝は青いだけなのかもしれない。ないものねだりかもしれない。でも、自分にはない生活スタイルを求めて旅に出る。暮らせなくても、ひとときを過ごすことはいつでもできる。
ということで、夏休みも近づいてきたので、
旅やホテルの本でもどうでしょう、という話。
気候、風土、文化、食
一般的に観光資源と言えば、「気候、風土、文化、食」を言う。そのいずれにおいても日本は高い潜在力を持っている。
気候・風土
海に浮かぶ島国で、大半は山。山から海へと無数の川が流れ出て、ひとつとして同じ海岸はない。そそり立つ崖、波が打ち寄せる砂浜、静かな入江、サンゴの岩礁に、無数の小さな島々。
文化
建国2600年の歴史の深度は驚異的で、天皇家が世界で最古の王家としてギネス世界記録にも認定されている。2位のデンマークが約900年なので、もう断トツ。
食
季節ごとにその地で産する旬のものを食す。「うまみ」という独特の味覚世界で、西洋のガストロノミーに対峙する。
衣、食、住、旅
「衣・食・住」に次ぐ4番目の要素は「旅」?
そもそも人類はアフリカで生まれ、数十万年かけて世界各地に拡散したので「ホモ・モビリタス|移動するヒト」とも呼ばれる。まだ見ぬ世界を知りたい、という欲求は人間の本能なのでしょう。
ホテル=土地の魅力を顕在化させる装置
ホテルがなかったら、その土地の風土や文化の価値に気づかない。自然のままでなく、人為を介入させる。その地に潜在する魅力を可視化すべく周到に構想された、美意識と知恵の結晶が「ホテル」だと原研哉は言う。
ということで、津々浦々を転々と、旅したくなる本を3冊ご紹介。
低空飛行|原研哉
日本の未来資源は風土である。
独創的な自然と、それを畏怖する感受性、そして数千年ひとつの国であり続けた圧倒的な文化の蓄積。日本にラグジュアリーがあるなら、それは度の超えた贅沢ではなく、自然の神秘を尊重する姿勢ではないかと。
生花、盆栽、枯山水、日本建築を通して、ミニマリズム、エンプティネスが重要だと説く。ともすると退屈で貧しいだけに見えてしまう。そこで重要なのが「縁」となる。
畳縁、襖の縁、障子の桟、床柱が織りなす独特の線のリズムと肌理。そして、縁側、簾、庇によってトリミングされた風景が、自然と空間に連続した奥行きを与える。
簡素なのに複雑な味わい。アール・ヌーボーやガウディのような三次曲面ではなく、「縁」の複雑な重なりとリズムが生み出す日本のラグジュアリー。
旅はゲストルーム|浦一也
インテリアデザイナーによるゲストルームのスケッチ。
アメリカ、イタリア、イギリスから果てはブータンまで。設計者の目でとらえた世界のホテル69室。実測した平面図が新しい旅の一面を教えてくれる本。
写真を撮ればいいじゃないか、と思ってしまうかもしれない。だけど、スケッチするからわかることもある。設計者の意図や、その国の伝統や文化から、おもてなしの気持ちまで。
無味乾燥な写真より、泥臭く想いのこもったスケッチは、見ていてとても気持ちがいい。
リッツ・カールトンの究極のホスピタリティ|四方啓暉
究極のホスピタリティとはなにか。
日本初進出のリッツの開業責任者でもある著者による、リッツの哲学が学べる本。
中世ヨーロッパの教会が設立した宿泊所「ホスピス」から、おもてなし・客人の保護という意味の「ホスピタリティ」となり、それから派生し「ホテル」が生まれる。
そして、現代のホテル事業の生みの親はセザール・リッツ。あのリッツ・カールトンのリッツ。
全客室にトイレとバスタブを史上初めて完備させ、ホテル内のレストランの質向上を図り、国際的に展開する。現代の高級ホテルの礎。
そんなリッツのホスピタリティの源泉を知るのもいいのでは?
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