アート鑑賞のお作法

普段、アートや文化とは程遠い生活をしている。正直、絵を見ても、どう見て、どう解釈して、どう楽しめば良いのか分からない。

けど、分かるようになりたい、というコンプレックスに似た思いはある。笑

うちの会社(資生堂)では、初代社長の福原信三が写真家でもあり、アートや芸術、そこからくる美意識を経営に取り入れたいと考えた先進的な方で。

会社に意匠部(いまのクリエイティブ組織)や研究施設を作って、アート&サイエンスという会社の(今も続く)文化を創った。

そして会社の中にギャラリースペースを作り、若い芸術家たちの作品の発表スペースとして貸し出し、芸術支援を行った。

そのギャラリーが、今も創業の地である銀座に残っていて。(資生堂パーラーのあるビルの地下一階)

今も若手アーティストを応援し続けている。

そのスペースで、我が社の歴史を管理する企業文化部(そんな組織普通の会社無いよね)主催で、いま展示を行っている「林田真季さん(電通所属)」のアートを、資生堂有志の社員と電通有志の社員で一緒に見て、感想を言い合い、そして林田さんからも製作意図等の説明を頂ける、という贅沢な企画があり。なんとなく、フラッと参加してきた。

今回の林田さんのアートテーマは、「意図せざる結果」というもので、イギリスのゴミ埋立地と、日本のゴミ処理場、そしてそこで処理されるゴミについて、アート化したもの。

ゴミ問題について、ダイレクトに考えるのではなく、アートというフィルターを通して、そのメッセージ性を読み解くことで、ゴミについて学ぶよりも、むしろ自然にゴミについて考えざるを得ない。でもアートとしては美しい。そんな不思議で、かつ魅力的な展示だった。(林田さんの展示は3/3までやってます)

またアートを一人で見るのではなく、会社の仲間(知り合いではない)と、そして電通さんの社員と一緒に6〜7名でチームになって、アートのキャプションを読み、アートを見て、その感想やそこから引き出される個人のエピソード等をやり取りするのが。思った以上に面白くて。

あーアート鑑賞って結構面白いじゃん。
これ妻と一緒に行っても出来るなー。
でも妻じゃないからこそ、なんか、色んな人がどうその絵を見てるのかがスッと入ってきて面白いのかなー、とか。

ちょっとアート鑑賞に関するハードルが下がった日でもあった。

林田さんが、アート鑑賞のお作法について語っていたのも印象的で。
1.まずはそのアートが何を表しているのかを観察する。キャプションがあればそれを見る。
2.次に分析する。
3.最後に批評する。

アートなので、個人が何を感じようが自由だし、そこには、アーティストが考えもしなかった意図を鑑賞者側が、意図せず受け取ることもあり。それがアートの面白さでもあるのだが。

やっぱりアーティストとしても、何か意図があってそのアートを作っている訳なので。まずは作者の意図を汲み取り、そしてそれを観察・分析・批評するというのが。特にまだアーティスト自身が生きていて、その製作意図が分かりやすい場合は、重要らしい。

今回は、写真のような技術は使っているが、写真ではない。写真は真実や事実を伝えているのではなく、撮り手の意図がそこにはあり、写真技術をデジタルやプロジェクションマッピングと掛け合わせて、写真というには、大きいアートで、かつ絵のようにも見えて、そこにプロジェクションマッピングが組み合わさることで、絵に時間軸をいれることもできて。

見た目は完全にアートなのだが、そこには、ゴミ問題に関する問いかけがちゃんと含まれていて。

人間の織りなす生活によって、意図せざる結果(ゴミや生態系への影響)を生み出しているのだ、ということを、とてもキレイに、アーティスティックに表現した良いアート展示だった。

芸術って面白いんだなー。
でもきっと一人で見たら、全然つまらなかったろうなーとも思い。

会社で今回の企画を(初の試みとして)やってくれたメンバーに感謝だし、一緒にアートを見て、素直に感想を言い合っ手楽しませてくれた資生堂と電通のメンバーにも感謝。

贅沢な時間だった。
芸術語れるようになりたい。笑
次はどこのアート展示にいこう。

以上




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