あついひ
-------------------------------------------------------------------------------
ある女の子の死から5年。久しぶりにあった男女の会話
登場人物
しゅう:男性
みつき:女性
--------------------------------------------------------------------------------
しゅう:あついなぁ。まったく溶けちゃいそう。
みつき:そうね。
しゅう:なぁ、大丈夫か。お前。
みつき:なにがよ。
しゅう:まぁ、泣いてないなら大丈夫か。
みつき:そうよ、私は大丈夫だから。声をかけてあげるなら他の女の子にしなさい。それにあれから5年も経ってるのよ。涙も枯れたわ。
しゅう:俺はそこまでちゃらいつもりなんか無いけどなぁ、こんなことに便乗して口説きにいったりしないって。
みつき:どうかしらね。
しゅう:ひっでぇ。・・・俺だって悲しいよ、あいつが居なくなってさ。あんまり絡んでなかったし、関わりは薄かったかもしれねぇけど、元はといえばクラスメイトだったなら友達だろ。
みつき:そうね、彼女がどういう人間か知らなくても人が死ぬというのは悲しいものだわ。
しゅう:だから、お前に声を掛けてんだよ。あいつと一番仲良かったのお前だろ。俺は少しでも関わったやつがよくわからないまま記憶も居なくなってしまうのは嫌だよ。
みつき:あなたは私のことですらしっかり知らないくせに。なにを言ってるのかしらね。
しゅう:そうだな。でもいいじゃねえか。これからでも知っていけばさ。俺だっていろいろ得て失って。そしてたくさんの事を学んでこれからも知りたいんだよ。
みつき:もっともらしい事を言うようになったのね。
しゅう:うっさい。
みつき:さよならだけが人生だ。
しゅう:突然何を言い出すんだ。
みつき:彼女がよく言っていたのよ。さよならだけが人生だ。って失うだけがすべてならみんななんで生きてるんだろうねって。
しゅう:それは・・・
みつき:こうも言っていたわ。失うことが分かっているなら、得ることも馬鹿らしいし、すべて失った方が良い。ただ、今持っているものを失うのも怖いって。
しゅう:でもさ、それじゃあ楽しくないだろ。
みつき:私もそう思うわ。私は新しいもの好きよ。でも彼女は違った。どこまでも悲観的で臆病だったのよ。
しゅう:ごめん
みつき:謝るな。私だって本当に嫌なら話してないわ。まぁ彼女はそういう女の子よ。
しゅう:じゃあ、ありがとうか。話してくれて。
みつき:感謝されることもしてないけれど。それじゃあ私ももうそろそろいくわね。この後仕事なのよ。
しゅう:ああ、引き留めて悪かった。それじゃあ。また、次があったら。
みつき:そうね。また次があったら。