見出し画像

文学フリマ京都9出店記録:後編(伊勢ねこ)

前編はこちらをご覧ください。

というわけで、前日製本でふらふらになりながら、無事に文学フリマ京都9の会場「みやこめっせ」に到着しました。
自分の中では、「あとは楽しむだけ」の状態です。
よくオリンピック選手やアスリートの方たちが、「やることはやったので、あとは楽しむだけです」と笑顔でインタビューに答えていますが、まさにそんな気分でした。ただですね。実感しました。「楽しむ」には、余力が必要なのだと。
自分もめいっぱい楽しみたいし、「伊勢ねこ」のブースに来てくれる方にも楽しんでほしい。せっかくなら「楽しかった~! 来てよかった~!」という気持ちになっていただきたい。
ですが、理想と現実の間には大きな隔たりがありました。
「みやこめっせ」に到着するまでに体力、気力ともに使い果たしたわたしは、とんでもないポンコツに成り果てていたのです。
(教訓:普段から筋トレしておこう)


感謝しかない! 文フリ京都出店の舞台裏(当日)

1.出店者入場! よたよたとブースへ…

文学フリマ東京では設営時間が1時間30分ありましたが、京都は1時間。30分短い上に今回は一人設営なので、やっぱり気が焦ります。
文フリ京都も東京と同じく、開場予定時刻より少し早く入場できたのではないかと思うのですが、記憶は定かではありません。

出店者の列に並び、スタッフさんの誘導に従い、よたよたと会場の受付に向かいましたが、あまりにも歩みが遅いので、後から来た方たちにどんどん追い抜かされていきました。

・出店者パスをもらう

受付で出店者入場証と引き換えに、出店者パス(サテンシール)をもらい、胸にペタリ。写真を撮り忘れましたが、「出店者」と書かれたシールです。

文学フリマ東京ではリストバンドでしたが、文学フリマ京都ではシール方式。そのシールなんですが、わたしのポンコツ具合をあらわすかのように、その後、何度も剥がれ落ちました。
原因はふたつ。
①シールが当日のわたしの服装(ニット)と非常に相性が悪かったこと。
②貴重品を入れたポシェットの紐のせいで、シールが擦れ、剥がれやすい状態になってしまったこと。
(このポシェット問題については後ほどあらためて語ります……)

あ-47のブース

2.設営開始

「よいしょ、よいしょ」と、両手に荷物を持ち、ペンギンのようなシルエットでなんとか「伊勢ねこ」のブースに到着。重い荷物をおろした瞬間、やっと解放され、元気が回復しました。事前に会場に送った箱を取りにいきましたが、かなり遅れていったので、楽に自分の荷物を発見できました。A4箱(伊勢ねこの本)とB5箱(委託本)なので、ブースまでの持ち運びも楽勝。そして持参したカッターで開封!(文フリ東京39ではカッターを忘れて手間取ったのですが、その教訓が活かされました!)
順調な滑り出しでしたが、設営にはかなり手間取りました。

・現地に行ってみなければわからないブースのスペースと動線

今回のブース(あ-47)は、宅急便受付が近いことに歓喜していたのですが(東京のときは遠くて、腰痛持ちの私は死にました)、実際に設営を始めると、意外な問題が発覚。「長机が隙間なく並んでいて、移動しにくい!」のです。

「伊勢ねこ」はあ-47

「伊勢ねこ」のブース(あ-47)から外に出るには、右隣の46、45、44、43の後ろを通り、「すみませーん」と声をかけながら進まなければなりません。そして、戻るときも「すみませーん、後ろ通りますー!」と声がけをして戻る動線になります。こういうとき、2人以上いれば、1人がブース内で、もう1人がブース外(通路側)で作業できるのでスムーズなのですが、今回はワンオペ。机の下にポスターを貼り終え、ブースに戻った瞬間、「ポスター、貼り間違えた……」 と気づきましたが、ほかにやることは山積み。潔く?諦めました。

ポスター左右貼り間違えたけど、直す暇なかったよ、ママン…


・敷布のかわりに

サークル布(敷布)は今回欠席の秋杜先生担当だったので、用意する時間がなかったのですが、井上のきあ先生が作ってくださった特製ブックカバー(A3、ネットプリント100円)があることを思いだし、急遽敷きました。サイズ的にもぴったり。大感謝です!

https://x.com/yue9/status/1879875282309624010

そこまではまずまず順調でした。

・本棚の組み立てに大苦戦

さあ、「見本誌」を置く本棚の組み立てだ! と、組み立て式本棚キットを取り出したときに、気づきました。なんと両手の握力が完全になくなっていたのです。ブースにたどり着くまで、重いスポーツバッグと紙袋を両手に握りしめていたからです。わたしの体力も筋力も脳力もいつしか限りなく0に近い数値に……。

この本棚は文フリ東京39では、秋杜先生の担当で組み立ててもらいました。わたし自身、ぶっつけ本番で組み立てるのはこわかったので、前夜、一度(ざっと)練習していたのですが、いざ本番となると指先に力が入らず、厚紙を折ることすらできないのです。
また連日のPC作業がたたって目がかすみ、老眼ではないのに、視界がぼやけ、マニュアルが読めません……(目薬を忘れた…!)。日本語がタイ語がヘブライ語に見えました。
疲労で注意力が低下しているせいか、少し動くたびに、ニットの袖にひかっかって、長机の上に置いたクリップや輪ゴムが「わーい!」と、楽しそうに転がって落ちていきます。
(それをまわりのブースの人たちに拾っていただく始末。皆さん、笑いながら「大丈夫?」と心配してくださいました。お忙しいときに迷惑かけまくりで申し訳ありませんでした。ありがとうございます!)

それでもなんとか本棚の下半分を組み立てたときです。
「こんな感じかな」と立ち上がって、本棚をのぞきこんだときに事件は起こりました。わたしが肩からかけていたポシェットが……予想だにしていなかった動きをしたのです。

・ポシェットの反乱

これは文フリ東京に持っていったもの
京都に持っていったのはこれの色違いです


このポシェットには、筆記用具、貴重品、電卓、お釣りの小銭(700gほど)が入っていました。文学フリマ東京39で重宝したので、京都でも使うことにしたのですが、長時間肩にかけると重さで疲れるので、文フリ京都では(椅子に座ったときに膝の上に置けるように)、紐を10cmほど長くのばしました。よかれと思ってやったことなんですが、そのことが後の事件の引き金となったのです。

わたしが立ち上がり、「どれどれ」と、本棚の前でちょっと前のめりになったときです。ポシェットはわたしの動きに合わせ、振り子のように前後に揺れました。そのときのポシェット本体の高さはちょうど本棚と同じ高さ。
揺れて勢いをつけたポシェットは、城壁を破壊する鉄球のように本棚に突撃。
「ドーン!!!」と、やっとこさ組み立てた本棚(下半分)のすべてを破壊しました。本棚パーツは飛び散り、一部は長机の下を転がっていきました。その様はすべてスローモーションで見えました。

(なにが……どうなって……いるのか……)

ポシェットの暴走、いえ、反乱です。

自分の目を疑った……という表現はこういうときに使うのですね。
目の前の現実が信じられませんでした。ええ、ええ、ポシェットに大量の小銭を詰めて重量を増やしてしまったことも、ポシェットの紐の長さも……自分がやらかしたことではあるのですが、そんなことを考えている暇はありません。一般開場まであと30分。
散らばってしまったパーツを拾い集め、もう一度組み立てなおそうとしましたが、寝不足と疲労のせいでIQが普段の半分以下になっています。それほど難しくない組み立ての棚なのに、なぜかまったく組み立てられないのです。

標高が高く、酸素濃度が低い場所に行くと、脳の機能が低下し、簡単な計算ができなくなるといった症状が出るそうですが、まさにそれと同じ症状に陥っていました。(熱気がすごかったので、酸素が少なくなっていた?)

いずれにせよ、棚がないことには本が置けません。「いっそのこと平積みにしてしまおう」とも思ったのですが、平積みにするにはスペースが少なすぎます。お隣のブースの方もわたしのポンコツぶりを見て「大丈夫?」としきりに声をかけてくださいました。「大丈夫です」と虚勢を張って答えたものの、時間は刻一刻と過ぎていきます。「どうしよう……」と溜息をついたそのとき、まさに神(女性なので女神?)があらわれたのです。

・女神降臨!

心やさしい方たちの美しい装丁の御本
絶賛おすすめします
わたしが石油王ならブースの在庫すべて買い占めたと思います

気がつくと、目の前に、向かいのブースの方が「気になって……」と、ヘルプに来て下さっていました。
その女神さまは、わたしが使っているのと同じ組み立て式本棚を使って設営されたそうで、「はめこむところにA→A、B→Bと印をつけておくといいですよ」とアドバイスまでいただきました。
(確かそういうの、どこかのサイトに書いてあった気がするなあ……と思ったりもしたのですが、前日が前日だったので失念していました)
そしてあっという間に本棚を組み立ててくださり、おかげで無事に設営できました。本当にありがとうございます! このご恩は決して忘れません!

右隣の「但馬文学会」の同人誌
軽トラで3時間かけて会場入りされたとか


まわりの人たちが全員、神様に見えました。「ちゃんと設営できてよかったなあ」「今日は楽しもな~」そんな言葉を近くのブースの方にかけていただきました。皆さん、ありがとう! ありがとう! ありがとう!(涙)
皆様、本当にやさしかったです。いつもまわりに助けられてばっかりで……感謝感謝です。困っている人がいたら、まっさきに助けられる人間になります。

やさしい皆様のおかげで無事、設営が完成しました。

ありがとうございます! 皆様のおかげです

文学フリマ東京では値札を印刷したのですが、今回は時間がなかったので、手書き。力がなくて、いろいろへろへろになりました。どのくらい握力がなかったかというと、きれいな○がどうしても書けませんでした。

へろへろの0… 紙もよれよれ
マステでくっつけたのですが、粘着力が弱く、何度も落ちました
のんきにニャーとかいっている場合ではなかった

・試し読みコーナーに見本誌を置く

でもなんとか設営までこぎつけられただけでも、万々歳です。
そして開場直前に、試し読みコーナーに見本誌を置きにいきました。

右の新刊の見本誌ラベルは、3秒で書いたので文字がへろへろでした

ずっとワンオペだったので、一般開場以降、試し読みコーナーには行けなかったのですが、まわりの方たちから聞くところによると、試し読みコーナーは、かなりカオスなことになっていたとか。「伊勢ねこ」のブースを訪れた親切な出店者さんたちに、「見本誌、ほかの本に埋もれている可能性が高いから、定期的に様子見に行って、ちゃんと並べたほうがいいよ。見本誌を手にとってもらえるかどうかで集客は違うからね」と教えていただきましたが、ワンオペだったので結局、どうすることもできず……最後までそのままでした。その教えは次回に活かします。ありがとうございます。

・電波状況が…

もうひとつの困ったことが、開場直後からスマホのアンテナが立たなくなり、現地情報を発信できなくなったことです。

スマホのアンテナはずっとこの状態

初出店した12月の文学フリマ東京39では、設営情報や本の宣伝・在庫情報をほとんど呟けなかった反省から、文フリ京都9ではマメに呟こうと、新幹線で京都に向かっている間、「設営完了!」「開場しました!」などというテンプレを(ハッシュタグ付で)作っていました。テンプレをコピペすれば、すぐに呟けるようにしていたのに、この電波状況……。建物の外にいたときに「みやこめっせに無事に到着しました!」のメッセージを井上のきあ先生に送ってから、その後の返信がまったく送信できず、設営に手間取っている中、電波のあるところまで移動して発信する余裕もなく、宣伝することもできず、どうしようと思っていたら、かわりに状況を発信してくださいました。ありがとうございます!

https://x.com/yue9/status/1880795625719291915

本当に皆々様に助けられました。感謝感謝です。

3.一般来場者入場!(12:00)

おしながき(正月のおめでたい気分でデザインしました)

井上のきあ先生が、SNSで「ゆっくりお越し下さい」と呟いてくださったおかげで、開場と同時に人がブースに押し寄せることはなく、ゆっくりと準備ができました。またのきあ先生は委託本の中に、差し入れのお菓子を潜ませてくださっていました。京都駅で飲み物は入手していたのですが、これ以上重量を増やしたくなかったので軽食は買えず(買わず)、のど飴とゼリー飲料しかなかったので、ありがたく、ほんっとうに心強かったです。

井上のきあ先生からの差し入れ THE 糖分! 
ほんっとうになにからなにまで気遣いのできる方です
手を合わせておきます🙏


お客さんはゆるやかにやってきました。有名作家さん、人気作家さんのところは大行列ができて盛り上がっていて、「おーすごいー!」「さすが!」と感心しつつ、「伊勢ねこ」はゆったりまったり。
座っているだけなのに、なぜか胸のところに貼り付けた出店者シールが何度も剥がれるので、最終的には「えいやっ」と、粘着力の高いテープで強化して貼りつけたり……先着プレゼントのブックカバーをくるくる巻いたり……そんなことをしながらお客さまのお越しを待ちました。
お隣のブースの方がゆったりしていたおかげで、わたしものんびり。
東京のときのように「お祭りだー!」「わーい!」というような心境ではなく、猫を撫でながら、縁側でお茶をすするような気持ちでくつろいでいました。

・井上のきあ先生の製本の本は即完売!

まっさきに完売になったのが、委託販売した井上のきあ先生の製本の本です。文学フリマ京都9では、井上のきあ先生の製本の本「BOOKBINDING at HOME」、令和乙女便箋、diablogue.の3つを委託販売していたのですが、実用的な、製本の本はコンスタントに売れていき、あっという間に完売となりました。

製本の本は13時に在庫1でした。


井上のきあ先生の御本は通販サイトで販売されているのですが、送料がかかるのがネックらしく、この機会にと求められる方が多かったです。完売した後も「製本の本ありますか?」というお客さんが10人以上はいらっしゃいました。「完売しました!」とXで呟きたかったのですが、電波が良好ではなかったので、できず。無駄足を運ばせることになってしまって、本当に申し訳なかったです。製本の本と令和乙女便箋は現在、アリスブックさんでセット販売していますので、よかったらご利用ください。

「BOOKBINDING at HOME」と「令和乙女便箋」 - EUCARYA | 同人誌通販のアリスブックス (Doujin Online Shop)

・新刊もなんだかんだで無事完売!(ありがとうございます!)

新刊おしながき
(このデザインを見るにつけ、いろいろと頭が大変なことになっていたんだなと)
当日はスペースがなかったので展示しませんでした


新刊『同人誌経験0の作家が文学フリマ東京に初出店した話』。内容はタイトルそのまんまです。『伊勢ねこ』結成の経緯、文学フリマ東京39で頒布した初同人誌『伊勢まほろば』のメイキング、『伊勢まほろば』を携えて初出店した文学フリマ東京39の裏話です。分冊版(p24)でも楽しめますが、完全版(p44)は秋杜先生の設営ボランティアとふたりの対談が入っています。

この新刊に関しては、前日まで(本として)完成していなかったこともあり、ほとんどSNSで宣伝できず(会場入りした後も宣伝できなかった…)、できたてほやほやをがんばって会場に運んだものの、1冊も売れないのではないかという不安もあったのですが、「試し読みで読んだらめちゃくちゃおもしろかったので」とか「表紙のデザインが可愛かったので」という方が何人もブースにいらっしゃって、完全版は15時前に完売。見本までお買い上げいただけました。購入してくださった皆様、本当にありがとうございます。

持ち込んだ本の部数が少なかったこともあり、無事完売しました
(しかし字が汚いぞ)

その後は分冊版もゆるゆると売れていき、気がついたら完売していました。完売した後で、「もっと作っておけばよかったかも」と欲が出てきましたが、いやいや、自分にとってはあれがベストでした。購入してくださった皆様、本当にありがとうございます。ご笑納いただけたらうれしいです。

・ミニフォトブックも完売!

文庫サイズのミニフォトブックです

文フリ東京39で、わたしの商業誌を買ってくださった方のおまけとしてつくったものですが、フォトブックだけほしいという声もいただき、文フリ京都9でためしに数冊販売してみました。裏メニューだったので、表に並べるつもりはなかったのですが、新刊が完売したことでスペースができたので、置いてみたところ、無事完売しました。どうか楽しんでいただけますように!

・無配ポストカードと無配ペーパー(ロシア語絵本)

『伊勢まほろば』のスピンオフ、書き下ろしポストカードです

無配ポストカードは100枚つくりました。文フリ東京39ではブースの前を通る方たちに手渡ししていたのですが、文フリ京都9では手渡ししなくても、「これ、もらいますね」「もらっていきまーす」と、さくさくと持っていっていただけるので、自分から「よかったらどうぞー」と呼びかけることはしませんでした。14時には残り5枚になっていたので、100くらいがちょうどいい数だったのかもしれません。楽しんでいただけるといいなあと思っています。

文学フリマ東京39であっという間になくなったロシア語絵本2種類(無配)は、裏メニューだったこともあり、2部残りました。(が、その後ブースにやってきた友人にプレゼントしたので、最終的に全部なくなりました)
荷物が軽くなるのは本当にありがたいです。
(全部売れても赤字なんですが、そんなこと関係なくうれしい!)

・わたしを知る人が…

京都は完全アウェイでしたし、ブースに商業誌は一冊も表に出していなかったので(ご挨拶で配るために数冊持って行きましたが)、完全素人と化してブースに座っていました(実際、出店2回目なので立派な素人)。なのにわたしが「一原みう」名義で商業活動をしていたことを知って、わざわざ「伊勢ねこ」ブースに来て下さった方が何名かいらっしゃり、すごくびっくりしました。完全無名作家だと思っていたので、「皇女アナスタシア読んで泣きました!」とか「がんばってください」と応援して下さり感激しました。
へろへろで上手に対応できなかったかもしれません。申し訳ないです。勇気をふりしぼって来て下さって、本当にありがとうございます。

・文フリ東京との違いなど

東京の文フリが初出店、今回の京都で2回目の出店。なので、東京と京都の違いを語れるほどの経験値はありませんが、大きく異なると感じたのは(わたしの肌感覚です)、接客時間の長さ と お客さんとの交流の仕方です。
東京では、SNSの宣伝やおしながきを見て「これください」と、すでに心を決めた状態でブースにやってくる方が多く、購入後はそのまま次のお目当てのブースへ颯爽と去っていく――そんな流れが一般的でした。
一方、京都では井上のきあ先生のファンの方をのぞき、下調べはせず、ふらっと立ち寄る方が多い印象でした。「伊勢ねこ」ブースの「何か」が目にとまり、「これ、なんですか?」「どんな本ですか?」と声をかけてくださる方が多く、一通りお喋りをしてから購入する人もいれば、買わずに立ち去る人もいて……(もちろん、買わなくても全然OKです!)。お喋りが楽しかったので、それはそれでよかったです。
当初、立ち読みしている方には極力話しかけないように、そっと気配を消していたのですが(話しかけられたら落ち着かないでしょうし)、京都ではむしろ話しかけられても全然OKという雰囲気の人が多かったように感じました。呼び込みはほとんどしなかったのですが、ブースを訪れた方と、なにかの弾みで共通の話題で盛り上がり、「ねえちゃん、おもろいから、ひとつ記念に買うてくわ」「おすすめ一冊ちょうだい」と、ノリで買ってくださる方がいらっしゃいました。そういうところは東京と全然違うなと。

ただ中の熱気は、東京も京都も変わらなかったと思います。京都は「寒い」と聞かされていたので、厚着で行ったのですが、みやこめっせの中は、むしろ「あつい」と感じるほどでした。

・ざっくり感想

記憶に残っていることを、備忘録として、書き残しておきます。
今回、秋杜先生が欠席で伊勢要素がまるっと欠けた「伊勢ねこ」で、伊勢出身の方がいらっしゃったときに、十分なお話ができず、申し訳なかったのですが、なんとか最後までがんばることができました。本当に皆様のおかげです。
電波状況は閉場直前にやっとよくなりました。それだけ来場者が多かったのですね。

事務局の発表によると、今回の来場者数は5,541人(出店者1313人、一般来場者 4228人)だったそうです。

今回一人で売り子をしていたので、ほかのブースを見てまわる時間がありませんでした。お目当ての本を買いに行こうとしたときには、本が売り切れていたり、すでに撤収されていて、ブースがからっぽだったり……。
望月麻衣先生がわざわざ「伊勢ねこ」ブースまでいらっしゃって、新刊を買ってくださったのに、こちらはブースに行けずじまいで本当に申し訳ないことをしました。(友人がかわりに買いに走ってくれたときには完売していたのです…涙)

設営のときから、バタバタだったのですが、本当にまわりの人たちに助けられました。皆さん、信じられないほどやさしかったです。
特に右隣の「但馬文学会」の方が本当に良い方たちばかりで、お客さんがいないときは、自己紹介を含め、ゆるーくお喋りしていました。今回が初出店で、但馬から軽トラで3時間かけて会場にいらっしゃったとか。「但馬文学会」の女性の方が猫を多頭飼いされていて、その話で盛り上がり、猫の写真を見せてもらったり、フォトブックの話をしたり……。
500円玉のお釣りが切れかけたときは「お釣りあるよ!」、ずっと店番をしていると、「ごはん食べた?」「店番してあげるから休んできたら?」と声をかけてくださり……お言葉に甘えて、一度10分ほど店番をお願いし、休憩をとらせていただきました。
この人たちは実は神様で、神様が人間の姿になって文フリに出店したのではないかというくらい、やさしくおだやかで、素敵な人たちでした。
そういうご縁もありがたかったです。

文学フリ東京39でも、14時や15時に撤収する人を見かけましたが、文フリ京都9の出店者の方たちも撤収も早かったです(「あ」と「い」列のブースの話です)。14時をまわると、あちこちで撤収準備がはじまり、14時半にはどんどん人がいなくなり……。15時過ぎには、隣のブースの方たちも撤収。遠方から来た方が多かったのでしょうか。気がついたら、左右のブースは誰もおらず、ぽつんとひとりで座っていました。


4.閉場30分前にペテルブルグ時代の友人が!

新刊がありがたく完売したおかげで、荷物はかなり軽くなりました。設営道具を入れてもA4箱にすべてがおさまりそうな感じ。熱気にやられ、意識朦朧としながら、「さて、提出した見本誌(既刊)の回収に行かねば」と思っていたとき、もうひとりの神があらわれました。

関西在住の友人Aです。
大学時代の友人で、わたしがペテルブルグで仕事をしていたときに、ペテルブルグの大学に留学していました。当時、わたしは複数の仕事を掛け持ちして多忙を極めていたので、Aと頻繁に会えたわけではないのですが、あの国に「知っている人がいる!」ということがお互いのメンタルの支えになっていました(Aは留学中、ふらっと5000メートル級のコーカサス山脈に登山に行って帰ってきたというものすごい逸話があるので、いつかどこかでお話ししたいです)。Aが帰国したあとは、Aの実家が関西だったこともあり、20年?ほど会えていませんでしたが、大学でロシア語を教えているということは噂で知っていました。そのAが右隣のサークルの人たちが引きあげるときに、入れ違いのように来てくれたのです。

「!!!」

文学フリマ東京39でも、ペテルブルグ時代の友人が駆けつけてくれましたが、京都でも!

ほぼ20年ぶりに会うのに、お互い全然変わっていなくて、すぐに20年前に戻ることができました。最後、ふらふらになっていたのですが、Aが手伝ってくれたおかげで(宅急便受付に箱を持っていってくれました。ありがとう!)、スムーズに撤収作業が完了。大感謝です!

余談ですが、Aはロシア文化関連の翻訳本を出しています。その本を5月の文学フリマ東京40で委託販売したいと思っています。文学フリマ東京40に出店することばあれば、「伊勢ねこ」ではなく(秋杜先生はお忙しいようなので…)、違う名前で出店すると思います。なにかわかりましたら、またお知らせします。

5.余談:がんばったご褒美?

そんなわけで、まわりの方たちに最後まで助けられた文学フリマ京都9でした。最初から最後までポンコツで、迷惑かけっぱなしでほんっとうに申し訳ありませんでした。
最終的に赤字ではあったのですが、お金の問題じゃないなと。もちろん利益があるほうが良いのですが、利益以上のものを今回、皆様からあたえていただきました。皆様の「やさしさ」のおかげで、無事にやり遂げられたこと、それで胸がいっぱいです。

(ここから先は、文学フリマのレポではないので、文学フリマの話だけが読みたい方は、ここで終えても大丈夫です。長文読むの大変でしたよね。本当にありがとうございます)

この先は、わたし個人の話です。

文フリ終了後、Aと素敵カフェでお茶をし、ペテルブルグ時代の話で盛り上がったのですが、そこでなにげなくAがこんな話をしてくれました。
Aがその昔、とある講座に通っていたときに、作家志望の人が来ており、Aが「ペテルブルグに住んだことがある」というようなことを言ったら、「ロシアを舞台にした作品を書いている作家がいる」という話になり、わたしの名前をあげ、過去の作品を褒めてくださったのだそうです。
「○(わたしの本名)、読者の人がいるのに、どうして(ロシアものを)書かないの?」と聞かれました。
正直、わたし自身、「なんでだろうなあ」と思いました。
執筆以外の仕事が忙しくなってきたのと、今の情勢がつらすぎて(自分のメンタル的にも情勢的にも)、ライフワークにしたかった帝政ロシアものを書けなくなっていたので、今後もしばらく商業活動はお休みで……みたいな気持ちでいました。自分の読者も正直いないと思っていたので、Aの話はものすごくうれしくはあったのですが、お世辞で言ってくれたのではないかとも思ってしまいました。(褒められ慣れていないので、どうしても疑り深くなってしまうのです)

そんなわたしに、Aは真顔で言いました。

「○(わたしの本名)の作品を読みたいと思っている人は、絶対にいるよ。ずっと待っていると思うよ。ねえ、書いてみたら?」

この瞬間のことを、わたしはたぶん生涯忘れないと思います。
言われた瞬間、自分の中からものすごい風がふいて、ぶわわわわわわわわわっと、頭の中に書きたかったものが溢れてきました。ずっとわたしの頭の中にあり、外に出たがっていたのに、蓋をして、見て見ぬふりをしていた物語たちです。
そうでした。ずっと怠けていたので日本語の文章力は落ちてしまいましたが、あれもこれも、あれもこれも、書きたかったのです。

Aの言葉が、本当にご神託のように聞こえました。
……昨日今日とものすごくがんばったから、神様がご褒美で、そんなうれしい言葉を聞かせてくれているのかなと。

ひとりでも自分の作品を待ってくれる読者がいてくれるのなら、書いてもいいのかなあ……と、ぼんやり思い、Aと別れました。
「ありがとう!」「またねー!」と、20年前のように、手をふって。

***

そこで終われば良い話~で終わるのですが、京都にいたからでしょうか。ちゃんとオチがつきます。

Aとお別れし、ほっこりした気持ちでホテルにチェックインし、コートを脱いだところで、わたしの目にあるものが飛び込んできました。
「!!!」
そうです。胸元に燦然と輝く「出店者」シールです。
ポシェットの紐が擦れては剥がれ、貼っては剥がれ、貼るたびに粘着力が弱まったので、最終的にテープで貼り付けたシールです。
そのシールは、剥がれていいときに剥がれてくれず……撤収後、ずっと服に貼りついていてくれたのでした。
そういえば、素敵カフェのウェイターさんたちが、何度もちらちらこちらを見ていたような気がしました(たぶん「文フリ出店者か~」と思われました)。わたしはなにも知らず、このシールを大々的に見せびらかしながら、素敵ごはんを食べ、素敵コーヒーを飲み、そして出店者シールをチラ見せしながら、素敵ホテルにチェックインしたのです……。
(どうして教えてくれなかったんだ、A……)

……まあ、誰も気にしていなかったと思いますけどね。

10代20代の頃なら、一晩中悶絶したかと思いますが、ある意味、いい感じで年を重ねてよかったなと思います。


気がついたら12000文字。
長文、おつきあいありがとうございました。
「文学フリマ京都9」に一人で出店したことが、友人Aとの20年?ぶりの再会、そして翌日の、奇跡のような時間、出会いへとつながることになるのですが、その話はまたあらためて。

(ざざっと書き流したので、誤字があるかもしれません。なにかあったらコメントで教えてやってください)


いいなと思ったら応援しよう!

MIU
ありがとうございます。いただいたサポートは活動費と猫たちの幸せのために使わせていただきます。♥、コメントいただけると励みになります🐱

この記事が参加している募集