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文学フリマ京都9出店記録:前編(伊勢ねこ)
文学フリマ京都9(1/19)から早11日。早く皆様への御礼とレポートを書かねば……と思いつつ、仕事でバタバタしてしまい、遅くなってしまいました。楽しみにしてくださっていた方、申し訳ありません。
初出店した文学フリマ東京(12/1)に続き、2回目の出店。京都は完全アウェイだったのと、前日、前々日といろんなことがあり、正直どうなることかと思いましたが、まわりの人たちに助けていただき、無事出店することができました。当日、伊勢ねこ(あ-47:郷土小説)のブースまで足を運んでくださった皆様、本当にありがとうございました。
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おかげさまで新刊『同人誌経験0の作家が文学フリマ東京に初出店した話』(A5/44P/500円)は完売しました!
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完売後、ありがたくも通販のお問い合わせをいただいたのですが、今の段階では未定です。なにか決まりましたら、改めてお知らせいたします。
また委託販売していた井上のきあ先生の『BOOK BINDING at HOME』『令和乙女便箋』もあっという間に完売しました。この2つのセットはアリスブックさんで通販していますので、買い逃した方、よかったらご利用ください。
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「BOOKBINDING at HOME」と「令和乙女便箋」 - EUCARYA | 同人誌通販のアリスブックス (Doujin Online Shop)
文フリ終了後、「無事に終わってよかった! 完売した! 楽しかった! 皆さんありがとう!!!」と喜んでいたのですが、余韻がさめ、冷静になって、はたと気づきました。………赤字です。東京開催の文フリと違い、京都だと往復費用、宿泊費もかかるので、赤字は最初から覚悟していました。そもそも「楽しむ」ための出店で、あまり利益は求めていなかったのですが、予想を上回る赤字……。
とはいえ、今回は無事に出店できただけで万々歳だったので、赤字のことは考えず、「よくやった自分」と褒める方向でいきたいと思います。
出店の舞台裏、そして当日のレポートを前後編に分けてお伝えします。長文になりますが、興味のある方、よかったら読んでやってください。
今後出店される皆様の赤字、トラブルを避けるための教訓?となれば、幸いです。
赤字確定…!文フリ京都9出店の舞台裏
1.伊勢での製本合宿が白紙に…&ひとり売り子確定
今にして思えば、なんと無謀な予定を立てたものだとある意味感心するのですが、当初の予定では文フリの前日(1/18)に秋杜先生の住む伊勢に行って1泊2日で新刊の製本合宿をし(秋杜先生のご自宅の業務用プリンタで印刷&製本)、当日(1/19)できあがった本を秋杜先生の車に積んで、文フリ京都の会場「みやこめっせ」に行くことになっていました。
新刊をコピー本にしたのは、表紙に「伊勢和紙」を使いたかったからです。
このへんの経緯は話すと長くなるので省略させていただきますが、ざっくり言うと、本当にいろいろありまして(わたしの体調不良、出張業務も関係しています)、伊勢製本合宿は急遽キャンセル。一緒に売り子をする予定だった秋杜先生は当日欠席(「伊勢ねこ」の「伊勢」要素が消滅……)。
……ということで、文フリ京都当日、始発の新幹線で京都に向かい、ひとり出店&売り子をしないといけない状況になりました。
それが確定したのが、文フリ京都9の2日前、1月17日夜です。
2.必要なものはすべて伊勢……
その時点で当然、新刊のコピー本はありません。伊勢和紙(秋杜先生が一応、買ってくださいました)もわたしの手元にはありません。
新刊のデータ(PDF)は完成し、PCに保存されていましたが、翌18日から伊勢で製本する予定だったので、わたしの荷物――製本に必要な道具(中綴じホチキス、カッティングマット)、紙(クリームキンマリ、フォトマット紙、上質紙、ラミネート用紙)、文房具類はすべて伊勢に送ってしまったあとでした。わたしが用意した設営に必要な什器、道具、値札(印刷済)、無配ペーパーもすべて伊勢……。
我が家にあるのは、新刊のデータとインクの切れかけたレーザープリンタと、年季の入ったカラープリンタ(ジェットインク)のみ。製本に必要なものはすべて伊勢。伊勢和紙が手に入らなかったときのことを考えて、万が一のためにと買っておいた表紙用のフォトマット紙まで、わたしは伊勢に送ってしまっていました。
伊勢に送った荷物を送り返してもらっても、18日中には100%届きません。道具を貸してくれそうな人も、近くにはいません。近所に文房具類を売っているお店もありません。伊勢和紙は当然、売っていません。
このなにもない状態から、1日で本をつくる………?
一瞬、目の前が真っ暗になりました。
3.すべて買い直し
すべての決定がなされたのが、文フリの前々日の17日であったことが幸いしました。すでに夜でしたが、17日中にamaz○nで必要なものをポチれば、18日中に我が家に届くのです……!
そこで製本に必要なもの、設営に使うものをすべて買い直しました。
(amaz○nで伊勢和紙も売っていたのですが、最短で19日の到着だったので泣く泣く諦めました)
新刊を出さない、という選択をしたほうが、傷は浅かったかもしれません。ですが12月、1月と、正月休日返上で、仕事の合間にコツコツとインデザでDTPしてきたわけです。その本が1月19日に出ないとなると、過去の全わたしが泣きます。
というわけで、賢明な皆様はお気づきでしょうが、製本のための道具、インク、紙、設営什器、小道具、雑貨をまるっと買い直した時点で、赤字が決定しました。新刊のデータは1週間前には99%完成していたので、その時点で印刷所に持ち込んでいたほうが安くすんだのではないかということが、何度も脳裏をよぎりました。ですが、結局ページを差し替えないといけないことになったので、自分で製本するのがベストだったのだと、自分に言い聞かせました。なにごとも経験です……。
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(同じものはその後、伊勢を旅して戻ってきました)
少し自分語りをします。
わたしのnoteの過去記事を読まれている方はご存知かと思いますが、わたしは究極のナマケモノです。一気に仕事量を増やすと脳がオーバーヒートし、数日体調を崩して寝込むので、まわりに迷惑をかけないよう、猫たちの生活に支障を来さないよう(こういう一夜漬けをしないように)、ゆるーくゆるーく生きています。なのになんでこんなことになってしまったのか……などと、人生をふりかえって考えている暇はありませんでした。使える時間は18日の1日だけ。時間との戦いがはじまりました。
4.前日の製本作業……そして完成へ!
18日の朝。amaz○nで手に入らなかったものをリストアップし、amaz○nで注文した荷物が届く前に、DAISO、セリア……と100均のお店をまわって入手しました。ついでに試し刷り用のコピー用紙も入手しました。amaz○nの荷物は夕方あたりに届くかと思っていたのですが、奇跡的に正午に届き(ありがとう!amaz○n!ありがとう!配達員の方!)、ただちに製本にとりかかることにしました。
猫立ち入り禁止の納戸にプリンタもろもろを持ち込み、猫の毛がついていない服に着替え、猫の毛がついている可能性の高いプリンタを掃除。そして作業する場所のアルコール除菌。指紋がつかないようにゴム手袋を装着。作業環境をととのえました。
・データ差し替え
新刊の完成データはありましたが、伊勢製本合宿についてふれている文章、ページがあったので、差し替え、データを作り直しました。
・表紙はネットプリント
表紙は自宅のプリンタではきれいな印刷ができなかったので、最終的にセブンイレブンのネットプリントを利用しました。表紙に厚手の紙を使いたかったですが、仕方ない……。
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製本作業はいたって簡単。本文40ページのデータをプリンタで出力し、表紙とあわせて、中綴じホチキスで留める。それを20~30部つくって袋詰めするだけのことです。たぶん平常時であれば、2時間もあれば完了する内容です。ですが、ギリギリになってやると……いろいろ起こります。
・プチトラブルと猫たちの大合唱
焦るといろいろトラブルが起こるので、自分を鼓舞しながら、つとめて平静にしていたつもりでしたが、それでもプチトラブルは発生しました。
プリンタが謎の不具合で動かなくなる。印刷した紙がなぜか汚れている。プリンタ内部のクリーニングをした直後の謎の紙詰まり……。
ドアの外では、めったに鳴かない我が家の猫たちによる「どうしたの?」「入れて!」「大丈夫?」の大合唱……。もしかすると「がんばれー」の声援だったのかもしれません。
その猫たちの声をBGMに作業は続きます。
「どうか無事に新刊が完成しますように!」「この本を読んだ方に楽しんでいただけますように!」 その一心でした。
・1冊目が完成したときの感動!
印刷されたページの上下をととのえて、慎重に中綴じホチキスでポチリ。
売り物となる1冊が完成したときには、正直、感動で手が震えました。
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「これで……文フリに行ける………!」
昨日までまったくなにもなかった状態から、1冊が生まれたのです。
ようやく希望が見えてきました!
・同時に設営の練習と袋詰め
プリンタががんばってくれている間に、買い直したものを開封し、設営の練習をしました。文学フリマ東京39では秋杜先生がつくってくださった素敵な紺色の敷布があったのですが、今回布はなし。かわりに、井上のきあ先生デザインのブックカバーを敷くことにしました。
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プリンタは「どうしたの? なんでこんなに働かされているの? いつ終わるの?」と目を白黒させながら、紙を吐き出し続けてくれました。プリンタからすると、休みの多いホワイト職場だと思っていたら、突然ブラックに変わったわけなので、さぞかし驚いたことでしょう。ごめんね。ありがとう!
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お手軽な1冊として楽しめます
・そういえば紙は……重かった…
やってみないとわからないことって多々あると思いますが、作業途中に気づきました。紙は……結構重いのです(皆、知っているよ…)。
本ができて嬉しいと同時に、ちょっとした不安がわきあがってきました。
わたしは立派な腰痛持ち、かつものすごい非力です。長年、散歩好きなペテルブルグ人に囲まれて生活してきたおかげで、今でも2~3時間休まずに歩ける体力があり、よく誤解されるのですが、わたしが長時間歩けるのは「荷物を持っていない」とき限定です。
完成したコピー本を目の前に、わたしはぼんやりと思いました。
(コピー本と設営道具を……はたして無事に……会場に運べるのだろうか……)
またまた自分語りをします。
わたしは職業柄(お察しください)、普通の人よりもかなり旅慣れているので、京都への出張はまったく問題ありません。これまで数え切れないほどの出張業務をこなしてきましたし、「明日○○に出張してください」「かしこまりました!」で、その足ですぐに動けます。ただわたしの過去の旅というのは(重複しますが)、常に「極力荷物を持たない」、バッグひとつの身軽なものでした。当日最高のパフォーマンスを発揮するためには、前日や移動中、心身に負担をかけないことが重要になります。
実際、その経験を活かし、今回の文フリ京都9で販売予定の既刊、委託本はすべて事前に会場に送っていました。
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文フリ東京39では持ち込んだ荷物が多すぎて、足下のスペースがまったくなく、宅急便受付まで重い荷物を持っていくのに苦労したので、文フリ京都9では最小限にしました。(※ここのところは新刊に詳しく書きましたので、興味がある方はぜひお求めください)
文フリ京都9の荷物は会場に発送済み、自分の荷物は伊勢の秋杜先生のところに発送済み、残りはすべて秋杜先生の車で会場に運ぶ段取りになっており、「なんと腰にやさしいルート!」と、安心しきっていたところに、コレですよ。
「紙がないよ」「もう働きたくないよ」「紙がないから働かなくてもいいよね」「インクもないよ」「そろそろ休みたいよ」「もとの部屋に帰してよ」と、ランプを点滅して訴えるプリンタの口を引き出し、そこに紙をねじこもうと(非道…)、コピー用紙500枚(2.1kg)を持ったときに痛感しました。
そうです。紙は……重いのです……。(大事なことなので2回言いました)
新刊は44ページですが、数が増えれば重くなります。そしてかさばります。
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かさばる紙の束(=本)を一体、どうやって運べばいいのか……。
キャリーがあれば、また違ったでしょうが、あいにく我が家にキャリーはありません。猫の物が増えていったため、人間のものは最低限しかなくなり、スーツケースが必要なときはレンタルを利用するようになりました。
今回は幸い、身内のスポーツバッグを借りられることになったので、それに完成した本(傷まないよう紙箱に入れて)を詰め込みました。新刊はたかだか30部なのですが、バッグを持ち上げるとずしりときました。あとは気合いで運ぶしかありません。(※普通の人なら余裕で運べる重さです)
・前日はほぼ徹夜…
新刊の製本が終わっても、まだやることは残っていました。伊勢に送ってしまった無配ペーパーの印刷です。プリンタは「もうだめです。休みたいです」としきりに訴えていましたが、「あともう少し!」「あと1枚!」と、がんばってもらいました。
文フリの準備だけなら、まだ時間の余裕があったのですが、文フリの後に控える出張業務で準備しておかないといけないものもあり、18日はほぼ徹夜。
(こんなハードな生活は、絶対にしない……!涙)
人間に塩対応の猫たちがめずらしく、「寝ようよ~」「そろそろ寝たら~?」と誘ってきてくれたのですが、涙ながら「ごめんね~」と謝りました。
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5.いざ京都! 文フリ京都9会場入り
・早朝出発! 京都は実は近い!
そしていつしか日付がかわり、19日となりました。文学フリマ京都9当日。
文学フリマ東京39が終わったときには、まだ1カ月半あると思っていましたが、本当にあっという間でした。
早朝、わたしはできたてほやほやの新刊の入ったバッグと紙袋を両手に握りしめ、東京駅に向かいました。よたよたと歩いていたため、始発の新幹線には間に合いませんでしたが、9時には京都に到着しました。
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東京から京都は新幹線で2時間強なので実は近いです。千葉県内を端から端まで移動するほうが時間がかかるのではないでしょうか。(ちなみに東京寄りの浦安から館山まで電車利用で2時間半です)
・京都に着いた時点で腕が限界…
京都駅からバスか地下鉄か迷ったのですが、京都出身の友人たちが「京都のバスは渋滞するし、いつも混雑しているので初心者にはおすすめしない!」と言っていたので、その言葉を信用し、バスは使いませんでした。
(大きなイベントのときにバスがものすごく混むのは、東京ビッグサイト開催のデザフェスに行ったときに経験済みです)
地下鉄で行くことを考え、路線図をチェックしてはいたのですが、京都駅の改札を出たときに、わたしの両腕、両手、腰はすでに限界でした。
(新幹線で休めたのに非力なわたし……)
・お金とは重いものである…
紙の本以外に地味に重かったのがお釣りとして用意した小銭です。最近、電子マネーしか使っていなかったので、現金(硬貨)の重さを忘れていました。
家にあった小銭をかき集め(文フリ東京でもらったお釣り)、100円を100枚、500円を40枚持っていたのですが、
100円=4.8gなので、100枚で480g。
500円=7.1gなので、40枚で284g。
ほかにもじゃらじゃら持っていたので、1キロ近くあったと思います。
1キロにも満たないんだから、たいしたことないと思われるでしょう。それがですね……ちりも積もれば山となる……じゃないですけど、このくらいなら持てるでしょ、の荷物が増えると、いつしか自分が持てる限界をこえていたりするのです。あとは疲れていたからでしょうか。いつもの倍以上に重く感じました。
(※文フリ会場ではほとんどの方がお釣りが出ない状態で払ってくださるので、小銭の用意は最低限で大丈夫かもしれません)
・タクシー!
ええ、赤字が拡大しようが、なんだろうが、会場に行くまでに疲れ切ってしまったら意味はありません。ふらふら歩いて、まわりの人に迷惑をかけてもいけません。「タクシーで行く!」そう決めて、まっすぐ京都駅のタクシー乗り場に向かいました。
・無事にみやこめっせ到着!
多少の渋滞はありましたが、タクシーは本当に楽で、運転手さんも親切で、なにもかもスムーズでした。タクシー料金は、事前の見積もりでは3000円~3500円だったのですが、実際は2000円ほどですんだのも助かりました。
到着時刻は9時45分。出店者の入場時刻が10時で、待機列ができていましたが、なんとか間に合いました。両手の荷物は重いけれど、あと少し……。ペンギンのように両腕を広げ、よちよち、よたよた歩いたわたしが列の最後尾に並んだときに、ちょうど入場開始となりました。
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無事に文学フリマ京都9の会場「みやこめっせ」に到着したところで、筆が力尽きました。「伊勢」要素がなくなった「伊勢ねこ」ひとり出店の続きは後編でお届けします。
最後までお読みいただき、ありがとうございます。
引き続き、どうかお楽しみに!
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