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ヒトラーの「全権委任法」(緊急事態条項)と「国鉄三大謀略事件」
「ドイツ国会放火事件」と全権委任法
1933年、ヒトラーは国会を解散。選挙中に「ドイツ共産党員による国会議事堂放火事件」という自作自演の「大惨事」をでっち上げるという「ショックドクトリン」(文字通りの「火事場泥棒資本主義」)によって多数の国会議員を含むドイツ共産党員を一斉に逮捕・拘禁。これは明らかに謀略による政治的クーデター。
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選挙後、ヒトラーは、ドイツ共産党の議員資格を議席ごと抹殺するなどの汚い手を使って議会の3分の2を掌握。反対派の急先鋒だった共産党議員(81名)を一掃した国会で、「合法的」に「全権委任法」を成立させた。
「全権委任法」は一応4年間の時限立法だったが、ヒトラーは延長を繰り返し、結局ドイツ敗戦まで独裁権を握り続けた。
麻生などが「ヒトラーを見習え。」などと嘯いていたくらいだから、自民党が「緊急事態条項」を手にしたら最後、ヒトラーと同じことをやる事は火を見るよりも明らかだ。
ヒトラー独裁の危機に直面したドイツ共産党は社会民主党に統一戦線結成を呼びかけたが、それまで両党は激しく対立してきた経緯もあり、社民党は共闘を拒否。
ヒトラーは最大の政敵ドイツ共産党を非合法化した上で、私兵である暴力テロ組織突撃隊や親衛隊などを動員して全国の共産党員全員を一斉に逮捕投獄して壊滅させた。次いで同じ手口で社会民主党を弾圧。最後は自由主義者などの「異分子」と共に強制収容所送りにし、国内をナチス一色に染め上げた。
「全権委任法」という絶対的独裁権力を手にしたヒトラーは「ヴァイマル憲法」を事実上停止して共和国を崩壊させ、ドイツを急速にファシズム国家「ナチス第三帝国」に作り変えて行った。その後、ヒトラーがユダヤ人大虐殺、第二次世界大戦など、人類史上未曽有の大災厄を引き起こした歴史は、皆様よくご存じの通り。
GHQと「国鉄三大謀略事件」
実は戦後、日本を軍政下に置いていたGHQもこれとよく似た「ショックドクトリン」を用いて革新勢力に大打撃を与える「冤罪謀略事件」(でっち上げ事件)を起こしている。それが、1949年の7~8月にかけて集中的に発生した「下山事件」「三鷹事件」「松川事件」の所謂「国鉄三大謀略事件」。
映画やドラマで何度も取り上げられた下山事件は、一向に進まない人員整理に苦慮していた国鉄総裁下山定則が出勤途中に失踪、翌7月6日未明に線路上の轢死体となって発見された事件。自殺説と他殺説の両面から捜査が進められたが、結局一人の逮捕者も出すことなくうやむやの内に捜査は終了。
「シリーズ アメリカ情報部隊第一回 作られた謎・下山事件」①
「シリーズ アメリカ情報部隊第一回 作られた謎・下山事件」②
三鷹事件は、1949年7月15日、国鉄三鷹駅構内で起きた列車暴走事故で、 死者6名、負傷者20名を出す大惨事になり、10名の日本共産党員と党員ではない運転士一人が逮捕された事件。起訴された共産党員は最高裁で全員無罪判決、非党員である運転士竹内景助の単独犯として死刑が確定。
NHK「ETV特集」シリーズ1949 夏 第二回 三鷹事件 1999.7
松川事件は、同年8月17日に東北本線松川駅近くの鉄道線路が何者かに破壊されていた事によって起きた列車妨害転覆事故。この事故で列車機関士3名が死亡した。
日本共産党系国労組合員ら20名が逮捕・起訴され、下級審では大半が有罪なったものの、最高裁で全員の無罪が確定。
皮肉な話だが、連合国占領下の最高裁の方が現在の最高裁より遥かにまともだった。
NHK 「ETV特集」シリーズ1949 夏 第二回 松川事件 1999.7
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事件の背景 1949年、中国では中国共産党が国共内戦に勝利。国府軍を台湾へ駆逐して実権を握り、朝鮮半島では南北朝鮮の緊張が高まり一触即発状態になっていた。
東西冷戦が激化する国際情勢の中で日本のこれ以上の民主化をストップし反共国家化を計るGHQは、日本共産党の勢力拡大や労働運動の高揚を危険視していた。
1949年1月の総選挙で日本共産党が大躍進、それまでの4名から一気に35名に議席を増やし、マッカーサーと吉田首相は衝撃を受けた。
当時、「ドッジライン」による行政・民間企業の100万人規模の大量人員整理(実質的なレッドパージ)が進められており、その中でも最大の首切り数を予定していた国鉄における人員整理の成否が鍵を握っていた。
国鉄が発表した14万人の人員整理計画に対して共産党系の国労などを中心に労働組合が強力な首切り反対闘争を展開し、人員整理が難航していた。
こうした騒然とした社会状況の中で、国鉄三大事件は発生した。松川事件の発生翌日には、早くも増田官房長官が日本共産党の犯行を臭わせる談話を何の根拠もなく発表。三事件も発生直後から、 政府や捜査当局 の発表をそのまま報道するマスコミの大キャンペーンによって、「事件は国鉄の人員整理に反対する日本共産党の仕業」との第一印象が国民の間に刷り込まれた。
政府の一連の「印象操作」は大成功。日本共産党や国労は関与を疑う国民からの大バッシングにさらされ、「首切り反対闘争」は急激に力を失って失速。その結果、国鉄をはじめとする行政、企業での大量首切りがスムースに進められるようになった。
また、党員が多数逮捕された日本共産党も翌年の総選挙で壊滅し、戦後初めて全ての議席を失うなど大打撃を受けた。その後、政府GHQによって非合法化されたのは、戦前のドイツ共産党の場合と全く同じ。
政府の目論見通り、日本の労働運動や社会政治運動は一気に衰退。「国鉄三大謀略事件」は、革新勢力に打撃を与える「ショック・ドクトリン」としての役割を見事に果たし、レッド・パージは何の障害もなくスムースに実行された。
前述の通り、三鷹事件 、松川事件とも、その後の最高裁で日本共産党員は全員無罪となり事件と日本共産党は関りがない事が証明されたが、判決確定が余りにも遅すぎて最早後の祭り。
共産党員の全員無罪が確定するまでの12~14年の間に「共産党は怖い。」「何をするか分からない危険な暴力革命政党。」という反共イメージが国民の間に刷り込まれて定着。日本共産党が 1969年に国政選挙で二桁の議席(衆院14議席)を回復するまでに20年の歳月を要した。
山本薩夫監督 映画『松川事件』編集版
松本清張が「日本の黒い霧」で書いているように、「国鉄三大謀略事件」は状況証拠からGHQ、特に謀略担当のCICが関与した可能性が濃厚である。
確率論から言っても、故意でもない限り僅かひと月半足らずの間にあのような大事故が立て続けに3度も起きる事はあり得ないし、現に政府・GHQが目的を達成した後、同様の事件は発生していない。
東西冷戦の中で、米国は気に入らない国の政府や政治家、政党などを転覆・失脚・壊滅させるための大規模で巧妙な政治的謀略活動(ショックドクトリン)を世界中で展開しており、 「国鉄三大謀略事件」もその一環であった事は間違いない。
今でも「政党別好感度調査」を実施すると、公明党を押さえて日本共産党が嫌いな政党第1位をキープし続けているのは、戦前戦後を通じで時の政府が執拗に振りまいてきた「戦争や天皇制に反対するアカは、非国民。」「アカは怖い。」「共産党は、危険な暴力革命政党。」という反共キャンペーンの「成果」に他ならない。
政府自民党がヒトラーと同じように日本共産党を執拗に攻撃する理由は、日本共産党が最も強力な憲法改正反対勢力であり、国家を私物化して悪政の限りを尽くしている自民党や財界、日本の本当の支配者米国と一切妥協する事なく真っ向から対決し、その「悪」を追究し続けて来たからに他ならない。
ある意味、日本共産党は自民党の「天敵」なのだ。
また、戦争を起こして大儲けしたい勢力にとって、戦前から一貫して戦争に反対し続けてきた日本共産党が邪魔で仕方がない。ヒトラーと同様に、選挙の前や彼らが何か悪事を始めようとする時は、その前に必ず目障りな日本共産党を反共攻撃で潰しにかかるのがセオリー。
政府が、日本共産党を激しく攻撃し始めたら、悪法の制定や戦争などのよからぬ事を企んでいる兆候だと思った方がよい。日本共産党を弾圧した後は、立憲民主党などのリベラル派にその矛先が向けられるのは、戦前日本の歴史やヒトラーのやり口を顧みれば容易に予測できる事だ。
マルティン・ニーメラーのファシズムへの警句
ナチスが最初共産主義者を攻撃したとき、私は声をあげなかった 私は共産主義者ではなかったから
社会民主主義者が牢獄に入れられたとき、私は声をあげなかった 私は社会民主主義者ではなかったから
彼らが労働組合員たちを攻撃したとき、私は声をあげなかった 私は労働組合員ではなかったから
そして、彼らが私を攻撃したとき 私のために声をあげる者は、 誰一人残っていなかった
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