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冬のノルウェイの森で、心が揺れて

やっと、会えた娘が目の前にいる

手を伸ばせば触れられる距離に、娘の身体は確かにある

だけど。。。永遠に届かない距離のような
わたしの腕がそこまで伸びなのかな・・・
触れる気がしない

そんなことをぼんやりと考えながら、わたしは自転車を押し
娘は、隣を歩いていた

・・・昔読んだ『ノルウェイの森』ってこんな森だったのかな・・・
と、思いながら木々の下をゆっくり二人で歩いた

光と影が複雑に絡み合い、時がゆっくりと流れる
まだ、3時前だというのに 日差しは無く辺りは薄暗い
鳥のさえずりが物悲しく響き渡る
静寂の中に生命の息吹が感じられ、どこか懐かしく、そしてどこか切ない
幻想的というよりもそれは、失われた過去を彷彿とさせ、同時に未来への希望も孕んでいるような、少し怖いようなそんな木々の道だ

別れる娘への寂しさと、過去の自分への未練を捕まえきれないでいた

・・・この子は、どこまで一緒に歩いていくつもりなのだろう?
今は、誰なのだろう?
朱里ではなさそうだ。。。誰だ?
いつ、わたしは再び傷つけられるのだろう・・・

そんなことを感じながら気づけば改札までたどり着いた

・・・一つ先の地元の駅までくるのだろうか?
来るわけないさ。。。
連れて行っちゃえ!!
拒否されて、傷つきたくないよ。。。。
ここで、別れようか・・・


再会からわずか数十分でわたしは、すっかり娘を持て余していた

そんなわたしとは裏腹に、娘は電車で先に行っていつものスーパーで待つという

木枯らしの中、わたしは一人で20分ほど自転車をこぎ続けた


もはや、
額に当たる寒風により起きる頭痛も
止まらない鼻水も
鼻水で濡れた手袋も

わたしの意識から消えていた。。。


・・・スーパーに着いたら、何を話そう・・・



この四カ月のことが、蘇った

初夏の始まり。。玄武さんから、3つもの案件で訴えられ
裁判所に何度も行く羽目になった

「あれだけ尽くしたのに。。。」という受け入れがたい感情におぼれそうに何度もなった

同居の時も
失踪後も
けっして、楽では無かった育児だった


思い起こすと、玄武さんの奇行が目立ち始めてからは
子ども達よりも玄武さんの行動に振り回された

布団にいるのか?
居たらいたで、呼吸はしているか?

仕事に行けるか?
行ったらいったで、無事に帰って来れるのか?

休職になったら、通院や薬の管理。。。やることは、どんどん増えいった

折しも、時はコロナ禍だった
子どもは可愛いが
しあわせだけの子育てでもなかった

だからなのか?
それとも、ただのわたしの性分なのかもしれないな?

経済も、家事もメンタルも、独り家族を4年以上も支えてきたわたしを
訴える????

という、やり場のない悲しみが湧いた


わたしだって何もかも逃げ出して
家を出たいと思わなかったわけでは無い
復職で来た玄武さんが、家に戻って家事と二人の育児をすればイイだけだ・・・
やれるもんなら、やってみろ!
わたしの、苦しみを思い知れ!!!


そんな
怒りとも 悲しみともわからない 祈りはあった



それでも、わたしはその道を選ばなかった

「いつか、再び4人でこの家で12年前のように
笑い声の絶えない家庭が戻ってくる」という未来を選んだからだ

恨みは、、、
憎しみは・・・・・
復讐は。。。。。。。

そりゃ~。あるよッ!!

ってか。それ以外ないよ

それでも、必死に4人の未来を考えたんだ


しあわせを呼ぶ思考を砂漠の砂の中から必死に
探し続けたんだ




しかし現実は厳しかった

それでも、望む未来のために『酒』や『オトコ』に逃げるわけにもいかなかった

すべての条件を満たすカッコウの行動が『テニス習得』だった


いい年をして、炎天下のテニスはお肌に悪い。。。

腰痛もちの、内側靱帯がない身体には、そりゃ~悪いさ・・・



それでも、1時間半のワンレッスンを多い日は3レッスン入れた
最低でも1レッスン毎日入れた

ある日、レッスン中に玄武さんのことを考えていた
手首に流れ球があたり、鉛筆さえ持てないほどの痛みとアザ10日程残った
ボールに集中しないと、痛い目にあう・・・
こんなに、アリガタイ『矯正プログラム』は無いと思った

もはや、何の苦行なのかすらわからないが
がむしゃらに、身体を動かした

それでも、わたしの苦しみは薄れることは無かった



そんなまだ、暑さの残るあるナイターレッスンを終えて帰ると・・・



娘は、居なかった




・・・・まさか。。。。


ウソだろう・・・・・・・


あり得ない・・・・・・


娘は
わたしの理解者だ
わたしの味方だ
わたしの支えだ。。。。

わたしを、置いて行くわけがない・・・


これは、現実ではない。。。夢だ




明日になれば、娘は家にいて「ふっ。ふ~~ん」と得意げに笑っている


いまは、夢なんだ・・・・





夢は、なかなか覚めなかった
あの日から始まった、苦しみをわたしは
もう一度 耐えることができるのだろうか。。。。




わたしは、何を信じているのだろう?
わたしは、何をよりどころに生きているのだろう???

もはや、自分のこころは 見事にバラバラにほどけていた

まるで、くみ上げる前のジグソーパズルのピースのようだ
1ピースをみても、どんな絵柄になるのか皆目見当もつかない
どれと、どこが隣り合ってハマるのかすらわからない・・・





わたし・・・

独りで、やるの?


できるの??


やりたいの????




地元に帰りたくないのかも??????






否 待てヨ
スーパーに居ないかも・・・

やっぱりと、アパートに帰っていそうなそんな気がしていた




もはや
手を伸ばせば触れられる距離に、娘の身体はない


それが、もがき続けた4カ月で
少しだけ受け入れた現実だから。。。



スーパーに着いたときには
わたしは
ほぼ ほぼの可能性で、娘は居ないだろうと思っていた

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