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2024/9/5 名前を呼んではいけないあの種族

先日、ゴキブリが出てしまった。10年振り2度目の遭遇である。

さあ風呂に入らん、ついでに洗濯をせん、と洗面所でごそごそTシャツを脱いでふと目をやった壁にしっとり貼り付いていた。つやつやと赤茶色で健康そうなやつだった。

毎日風呂に入ろうとするとぎゃおぎゃお鳴きながらぬるぬる足にまとわりついてきて、出るまでドアの前で待っているはずの猫3がなぜかおらず、丸腰。

Tシャツ半脱ぎの変な格好でゴキジェット的なやつ(猫がいるので、薬剤じゃなくて凍らせるやつ)を取りに行く。取りに行くついでに対処してもらうつもりで夫を引っ張り込んだ。すまんな、あなたより確実に私の方が恐怖している。10分間の死闘の末、仕留めてもらった。

殺生はいかがなものか、とへっぴり腰で訴える(自分は捕まえられないくせに)長男(虫全般全くダメな次男は自室に引き篭もった)に、害虫だから!増えるから!齧るから!と言い返しながら死骸(仮)(凍らせるということはコールドスリープということで、もしかしたら溶けたら目覚めるかも。SFみたいに)をビニール袋に入れてガムテープでぐるぐる巻きにした。万が一起き上がりとなってもこれなら出てこれまい。

なぜこの虫にそんなに恐怖を感じるのか、ただ佇んでいるだけの生き物を問答無用に殺してしまうことの是非については、また別の機会に考えさせて欲しい。

うんと子どもの頃に住んでいた足立区のボロアパートにはよくゴキが出た。実母と寝ている布団の上をのんびり通過されることもしょっちゅうだった。次に越した団地にも定期的に出没し、初めて一人暮らしした築古のアパートにもそれなりに出ていたと思う。でもこの家に住んで14年、今回を合わせて2度しか見ていない。免疫ががたがたなのである。

私は子どもの頃から「ゴキブリ電波」というものを信じている。簡単に言うと、彼らのことを考える時彼らはその思考に引き寄せられるかのように出没するという、どこかの深淵のような働きのことである。

だからあんまり考えてはいけないのだ。引き寄せられてしまうから。でもあの時の彼は本当につやつやとしていて、記憶の中でどんどんサイズが大きくなって、本当はほんの5センチに満たないような体長だったのかもしれないのに、もう手のひらサイズだ。赤く、蛍光灯の光を受けて、それはもうつやんつやんに輝いている。

そんなふうにこの2、3日、彼らのことが頭にあるものだから、電波を警戒して必要以上に室内をきょろきょろしながら移動している。ざまあないとはこのことである。しばらくは、ざまあないまま暮らすことになるだろう。

ところで、iPhoneで「ゴキブリ」と打つと、真っ先に割と精巧な作りのゴキブリの絵文字が出てくるの、やめてほしい。

本やなにかしらのコンテンツに変わって私の脳が潤います。